表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/479

10話 4組戦後

「リンウェルお疲れ様」


試合が終わるとアーバスはリンウェルの真横に上空から着地するとリンウェルを労う。


「びっくりしたぁ。本当に透明化の魔法使えるんかいな」


「そりゃ使えないと大将を襲撃できないからな」


リンウェルは本当に透明化の魔法を使えると思っていなかったのか驚いた声をあげる。奇襲を仕掛けるには透明化で襲撃するのが1番楽だからな。透明化の魔法には2つあり、違いは魔力を出すか出さないかである。魔力を出す方は風魔法を使った透明化で、光の屈折を使って透明化するもので、周りの空気を操る必要があり魔力探知を使えば簡単に見つかってしまう。もう一つは無属性透明化で、自身の身体を魔力で透明化をするのだが、こちらは体内の魔力を使うので魔力を隠すことができ、魔力探知などの索敵魔法に引っかからなくなる。それこそ見破るには高度な索敵魔法を使用しないと見つけるのは非常に難しくなってる。


「それにしてもナイスタイミング。完璧だったぜ」


「うちは突撃の指示を出しただけやけどな。あんなに上手く決まるとは思わなかったわ」


作戦の指示の内容は障壁が破壊されたタイミングでの前衛の突撃とその際に通信妨害があることの情報である。その為、リンウェルは障壁が割れたタイミングで通信魔法ではなく拡声の魔法で指示を出していたのである。4組は障壁が割られた上に通信妨害をされるとは思ってなかった上に指揮官がいきなり退場したせいで全員が動揺したまま満足に抵抗できずに押し切られた形となったのだ。しかも1組はサーラのバフに加えて後衛のバフも加わったので前衛メンバーはいつも以上の力を出せたのか5分で決着がついたのである。もし最初から後衛のバフを使用していたら1組側が優勢の形となっていたので相手は総力戦に切り替えただろう。そうなってれば通信妨害はそこまで価値は高くなかっただろうな。  


「それにして凄いバフやな。あれスペシャルアップやろ」


リンウェルはバフをみただけでスペシャルアップとわかったらしい。最上級の魔法は中級のバフを何回かけようが届かないくらいには別次元だ。今回だと4組が中級や上級のバフを15人で掛けてようやくスペシャルアップとギリギリ互角の状態だったのである。これでも質がある程度落ちている状態なので、サーラが前線に居たらそのまま押しきれたであろうバフの強さであった。


「あれサーラだぞ。俺は遠距離攻撃しただけでバフは掛けてないぞ」


「あれサーラなん。サーラを大将にしてアミールを前衛に出してもいいんちゃう?」


「サーラの実力次第かな。バフは凄くても1人として弱かったら意味がないしな」


バフは一流だが、それを使うと障壁を張れないのが弱点だな。障壁が張れたら大将でも問題なかったんだが、障壁は大将を護る為に大切なものだ。しかもサーラは後衛なので前衛の護衛を複数人配置する必要があるので必然と障壁を張れる人員が少なくなり、その結果障壁が弱くなるので障壁まで張れるようになるまでは大将は他のメンバーに任せるつもりである。

 

「アーバスは慎重なんやな。普通なら任せても問題ない実力やで」


リンウェルの言うことはわからんでもないが、他の組の実力がわからない以上弱点のある奴を大将にするのは良くないと思うんだよなぁ。今は透明化を使えて実力があるとそれだけで大将討ち取れるくらいにはみんな障壁が甘いからな。今は他の組やクラスにはいなさそうだが、今後の対戦でアーバスみたいなスタイルの人物が現れるかもしれないしそうなった場合にサーラだけに大将を任せると不安になる。事前に見抜けたらいいが、見抜けなかった場合は敗北の可能性だってある。 


「お疲れ様でした。今回は作戦勝ちみたいですね」 


「ありがとう。これもサーラのお陰だ」


アミールとサーラと合流すると、サーラが勝ったことに喜んでいた。昨日は不慮の事故とはいえ作戦負けしたから今日は作戦でも勝てて良かった。ただ、サーラが後衛として凄いのは予想外だったな。まさかスペシャルアップとオートキュアを使えるとは思わなかった。明日の試合の予定は変わらないが今後は大将を初めとした運用方法が変わるかもしれないな。


「いえいえ。私はいつも通りに戦っただけですよ」


「それでもサーラだけで前衛が相手と互角に戦えるなんて初めて見たわ。凄すぎるやろ」


リンウェルは興奮しながらそう言う。スペシャルアップ持ちの魔術師なんて魔法学園でも最上級生に1人いるかどうかのレベルだからな。それを既に習得しており、更にこれから魔法学園での経験値を考えると相当強くなるだろう。


「私なんて前衛のお手伝いをしているだけですよ。頑張っているのは前衛の皆さんです」


「サーラ。それは言い過ぎだぞ。ここにいる後衛陣全員のバフとサーラのバフは同程度かサーラの方が上だぞ」


サーラが勘違いしているようなので訂正しておく。普通の人間はスペシャルアップなんて使えないんだから


「それでもアミールと比べたら私は弱すぎるので…アミールを超えるのが私の目標なんです」


前衛と後衛を比べるのもどうかと思うがな。しかも既にアミールを超えてそうだし。ただ、本人が今の実力に満足してないことはいいことだ。満足していたら実力があまり伸びなくなってしまうからな。その気持ちでこれからも頑張ってほしい。


「ともあれ後1戦あるからな。次勝って全勝しようぜ」


「そうね。次も頑張りましょう」


次勝てば全勝で序列1位は確定だな。序列は高ければ高い程依頼の優先やアイテムの割引などの特典があるらしい。Sランクの時点でダンジョンに入れたりなど、他のランクよりも良い特典もあるのに更にあるとはな。


「ところで観戦はどうするんや?参考になるかどうかわからんが」


「そうなんだよなぁ。ぶっちゃけ誰でも良いんだよなぁ」


昨日の試合を見るに3組じゃ連携も作戦も2組より劣っているしな。一方的に叩かれて負けるのがオチだろう。主力を出すかはわからんが出してもそこまでの全力を出さなくても勝てそうだしな。2組も既に1組のことしか頭にないだろう。今の試合でサーラの実力を見て頭を抱えてる可能性もあるかもしれないが


「じゃ私が行ってもいいですか?他の試合を見る機会なんてあまりないですので」


「なら私も行くわ」


サーラが見に行きたいとのことだった。初等部では他のクラスの試合を観戦することはなかったらしい。しかも試合中は本陣にずっと居てた為に前線の試合がどういうものかわからなかいらしいしな。アミールも一緒に行きたいとのことで次の試合の観戦はその2人に任せることにした。



「ロインどうするんだよあれ。総力戦でも負けるぞ」


「落ち着けルーカス。冷静さを失ったら碌な作戦会議にならないぞ」


昼休み、1組の観戦を終えたロインとルーカスはSランクが使用可能な個室で作戦会議をしていた。内容は明日の1組戦についてである。ちなみにルーカスとロイン共に指揮官を務めることができ、ロインが大将で前衛に出れないので、ルーカスが基本的には前衛で指揮をしている。


「見ただろあの試合を。何だよあのバフ、1人で戦線維持できるとか確実にバフ負けするじゃねぇか」


4組は狙撃を警戒する為に後衛を追加で何人か下げていたとはいえ1組全体を1人のバフで支えるのは異常事態だった。そのバフを掛けた本人であるサーラ嬢であるが、事前に聞いていた話しではバフや回復を使うことが出来るが使っている間は他の魔法が使えなく、更には攻撃魔法は並み以下とのことだった。ただ、試験では複数のバフや回復を同時に展開することはないので実力はSランク、対戦ではAランクかそれ以下というのがロイン達の見解だった。


「その為の作戦会議だろう。ちゃんと意見を出してくれ」


対抗戦も明日で最終日なので出し惜しみをしなくてもいいのだが、それで総力戦をしても尚、バフは力負けするだろう。しかも大将であるロインを前衛に出してもだ。サーラ嬢を退場させるのが1番だが相手の障壁や前衛を相手にしないといけないのに「じゃあどうやって?」となるのが頭が痛い。


「それと狙撃手はどうするのよ。あの子の対策を考えておかないと負けるわよ」


そういうのはこの会議に参加しているもう一人の参加者のサポーネである。彼女は観戦には行かなかったものの、このクラスの指揮官の1人である。といってもメインの作戦とかはルーカスやロインでサポーネは作戦通りに指揮をするだけの存在であるのだが戦闘中のバフや陣形の調整は彼女がしているのである。ちなみにルーカスは前衛でサポーネは後衛の指揮を担当している。1戦目はルーカスではなくサポーネが1組との試合を観戦していたりする。


「アイツも問題だよな。確かアーバスだっけ?」


「そうだね。障壁を壊す程の高出力があるに透明化で居場所がわからないのは相当厄介だね」

 

先程の試合終了のリンウェル嬢の反応を見るに味方にも見えず単独で作戦行動をしているように見えた。つまり1組はアーバスを除いた39人で作戦を組んでいるということだろう。それはつまり総力戦をすれば前線は確実に1人の人数有利を取れるのだが、アーバス単独での本陣の奇襲なんてものもあり得る。


「今日の4組との戦いを見て障壁に戦力を割きすぎるのも良くないこともわかったしな」


4組は狙撃を警戒して敢えて後衛の戦力を削って本陣の障壁の強化をしていた。ロインも1戦目を見ていたらそうしていただろう。結果は薄くなった後衛がアーバスの餌食となり先に全滅してしまった。それも通信妨害をした上で前線で指揮をしていたアロマを真っ先に退場させて相手の指揮系統を破壊したのも悪質だった。前衛は突然相手が全力で攻めてきたことにより後衛の異常事態に気づけず、更に後衛は通信妨害によって前衛と本陣に異常を報告することが出来なかったのだ。本陣も定期連絡の際に応答がないことで異常を察知したみたいだが、4組リーダーはその時点で敗北を確信したのか諦めた表情をしていたのだ。


「大将を本陣に残すのはリスクでしかないか」


ロインは4組戦を見てこう結論付ける。前線と護衛を分断する方が逆にリスクで総力戦で戦った方がまだイレギュラーに対処できると思ったのだ。


「そうね。そうなると総力戦は確実にしないと行けないわね。その上である程度のリスクを取らないと勝てる相手じゃないわ」


「なら魔法での後衛への一斉攻撃はどうだろう。1組は2戦共そこまで強度な障壁は張れていなかったしな」


実は1組は2戦共バフや回復に結構な数を回しており、障壁はあまり強度なものは張っていなかったのである。障壁はある程度にしておき、基本は回復とバフに人員を回す。これは組対抗戦では前衛の勝負となる為で3組と4組も同じようにして戦っていたのだが、弱点らしい弱点はそこしかなかった。


「ならそこに漬け込むしかなさそうね。ただ、前衛へのバフが薄くなるけど大丈夫かしら」


「そこは僕が何とかしよう。魔法攻撃をする時間くらいなら僕のバフで戦線維持は出来るだろう」  


ロインが攻撃の間のバフを駆って出る。これは大将自らが出ることで攻撃が集中することも加味しても戦線は十分維持出来ると判断したからである。


「アミールは大丈夫なのかよロイン。いくらお前でもあいつの相手はキツイだろ」


ルーカスはそういう。前衛の単騎性能だとアミールが1番強くロインであろうとも力負けすることはルーカスもわかっていた。


「アミール嬢は出てこないと思うよ。アミール嬢の代わりの大将が居ないからね」


サーラ嬢が出来なくはないとは思うが、バフを使えば障壁を張れないのだ。大将を護る障壁が弱くなるし、更には前衛メンバーからも護衛を用意する必要がある。それならまだアミール嬢を大将にするほうが戦力ダウンは少ない。アーバスの大将もないだろう。アーバスは透明化と狙撃がメインで、大将にすればアミール嬢を前衛に出すことができるが、そうなれば奇襲が出来なくなるので対戦する側としたらアーバスが大将の方がやりやすくなるからな。大将になれば位置公開されるので透明化しても場所がわかるのも大きいからな。だから最終戦も大将はアミール嬢が妥当だろうとロインは思っていた。


「アミール嬢が確実に出てこないなら確かに有効な作戦だろうな」


「そうね。任せたわよロイン」


そう言って昼休みである程度の作戦を纏める2組。ただ、これにはアーバスから狙撃されることを完全に忘れており、放課後にまた揉めるのは別の話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ