夏祭り 6
イズマと手を握り、肩を並べて歩く。
道の両側には沢山の屋台が出ていた。かき氷や焼きそば、くじ引きや射的。金魚すくいだってある。こんな状況じゃなければとても心躍るラインナップ。
どの屋台も老若男女の様々なお客さんで溢れている。こんなにたくさん溢れているのに。
「このひとたちって、みんな人間じゃないんだよね。」
「迷い込んだヒトの皮被ったよくない存在だ。」
わかってはいたけど、改めて言われると恐怖心に襲われる。
ようは敵に囲まれている状態だ。
イズマに気持ち近づき、握る手にも力が入った。
そんなあたしを見下ろして、イズマは小さく笑った。
「こうしてボクといれば、ヤツらはキミをヒトと認識できない。だから襲ってこないよ。その証拠にこうやって話してても何もしかけてこないでしょ?」
そう言えばそうだ。
さっきからこの世界のあれやこれやと、こちらの世界ではないヒトだからこそ分からないことがを説明してもらってるのに、何にも襲われない。
ということは、話していることも聞こえないということか。
「声聞こえてないの?そもそもあたしの姿が見えないの?」
「見えてるし、聞こえてるだろうけど、何を話してるかはわからない。ぼやけて聞こえてるし、それを不思議に思うこともないんだ。」
イズマと手を繋ぐのって大事なんだな、と再確認した。もう絶対離さない、恋愛的な甘い意味じゃなくて。冷や汗のせいで手汗が気になるけど、そんなのかまってられない。恥も何も生きてこそだ。
ここでちょっと整理。
まず階段から鳥居までは黒いあいつらがいる。そして人の体を得ると、鳥居を潜ってこの中に入れる。で、新たな人間を見つけてしまうと、その体を乗っ取ると。
あれ、新しい体を乗っ取ったら元の体ってどうなるんだろう。それにその魂は?
そんな疑問をぶつけると、全部燃えて提灯になる、とのことだった。
元はヒトだった提灯。柔らかな緋い光は、まさしく命の灯火だった。
よく見てみると、来ている服も時代を感じたり、今の季節に合わないものを感じる。
夏祭りのときだけではなく、今まで老若男女関わらず、沢山の人がここに迷い込み、そして魂を取られたということだ。
「あれ、でもさ、戻るまであちらの世界の時が止まるって言ってたけど、ここでその……死んだら止まったままじゃない?」
「いや、その瞬間からあちらの時が動き出す。そして迷い込んだヒトの存在は初めからなかったことになる。」
「なるほどね。じゃああたしの近くにもそういう存在がなくなった人がいるかもしれないってことね。」
「そういうことになるね。」
けっこうヘビーな話だけど、イズマは事も無さそうに言う。
あたしたち人間と価値観の違いなのか、そんなもんだとでも思ってるのか。アイツらから確実に身を守ることができるという自信ゆえなのか。
なんだかイズマを相手にしてると、自分が必要以上に怯えているように思えてきた。
こんな状況だし、精神力は高くないとやっていけない。
モチベーションを上げるには、これぐらいの相手がいいのかもしれない。
そう考えるとイズマの存在はありがたい。
「ねえイズマ。」
「んー?」
「イズマがいてくれてほんっと助かった。頼りにしてるよ。」
「それは良かったよ。」
少し照れたような表情で笑ったイズマはとても綺麗だった。




