夏祭り 23
繋いでいた手を振り払い、イズマが手を伸ばすよりも先に扉とイズマの間に体を滑り込ませてとおせんぼする。
「あたしが戻ったら消滅とか、絶対嫌に決まってるじゃん。そんなの聞いて笑顔でさよなら出来るわけないでしょ!」
「聞いたのはサヨじゃないか。」
「それは……でも元はと言えば、不穏な空気出してたイズマのせいだから!」
「え、ボク?ボクか。ごめん。」
やっぱり謝った。
最終的には、イズマが折れてしまう。
理不尽に怒ったあたしの方が悪いとはわかってはいる。わかってても止まらない。
「あっちで好きになった人、みんなイズマと何かしら共通点あるんですけど。」
そうなんだ、へー……じゃないから。何だそのうっすい反応。
「それってつまり、あたしの根っこの部分はイズマを求めてたってことだから。それなのに、あっちに戻ることが幸せって決めつけないで!あたしの幸せはあたしがよくわかってるし、あたしが決める!」
わかってるのはあたしだけらしい。イズマは困ったような顔をしていた。
「確かに、ボクが決めることじゃないね。」
いや、そこじゃないんだわ。他にけっこう重要なこと言ってるんだわ、そこ突っ込んで欲しかった。
「わかってもらえて何よりなんだけど、他に注目して!」
「他って……」
わかるだろ、わかって!
全部言葉にできない複雑な乙女心をわかって!
「今まで好きになった人がボクに似ていて、戻ることがサヨの幸せとは限らないんだろう?」
それそれ、とばかりに力強く頷く。
視線を彷徨わせながら、言葉を探すように一言一言口に出すのをじっと見る。
「だって、それって、サヨは……」
イズマの言葉が途絶える。
そして、彷徨っていた視線が合った。
「サヨは、ボクのことが好きで、ボクとここで一緒にいたいって、そう聞こえる。」
「正解!」
まだ信じられないみたいで、イズマは嘘だ、とか信じられないとかぶつぶつ言っている。
その狼狽えた様子がおかしくて、少し笑ってしまった。
「ほんとだって。こんな大事なこと、冗談で言わないし、嘘ついたりしないよ。あたしの言葉、信用できない?」
「……いや、キミを疑ったりはしない。」
ゆるゆると首を振る。
「本当にここにいてくれるの?」
「いる。」
あちらの世界の大切な人たちと別れて、何度も繰り返すこの夏祭りの世界に留まるとしても、イズマさえいればそれでいい。
彼だけが、あたしにとって唯一無二の存在で、とにかく大切。
「ずっと想っていてくれてありがとう。イズマが大好きだよ。」
手を伸ばして、イズマに抱きつく。




