夏祭り 21
「ねえ、サヨ聞いて。」
真剣な表情なのに、声はとても優しい。
「ボクね、サヨに二目惚れしたんだ。」
ふためぼれ。
一目惚れは知ってる。ふたりぼれって?ああ、2回目で惚れちゃったってことか。
誰が誰に?イズマがあたしに?
「ちっちゃい頃はノーカンだよね。ということは、あの階段で会った時に?」
「ううん。」
違うってよ。
「キミの写真を見たときに。」
写真って、あいつが持ってく写真だよね。別に盛れてる写真じゃないから惚れられる要素がわかんない。
それに会って話したわけでもないから、どうやって好きになるんだろう。
「あの写真見たなら、ユキちゃんの方がずっと可愛いと思うんだけど。」
「ユキちゃん?」
あたしの隣にいただろう髪を巻いている女の子の説明をすると、うーんとイズマは考え込んだ。
「写真に写ってたんだろうけど、その子のこと覚えてないんだよね。」
「ええ?」
「だって一番可愛いのはサヨだよ。」
「……え?」
爆弾発言に、今度はあたしの力が抜けて、さっきまで持ち上げていた手をぼとり、と落としてしまった。
そしてきっと顔も耳も真っ赤になっているのがわかる。だってあっつい。心臓もバクバクしてる。
ただ幸いなことに、ここは薄暗いから赤くなっていることが分からないだろうし、密着してるわけじゃないから心臓の高鳴りも分からないはず。
「あいつが戻って何度か繰り返していたら、こうして本物のサヨが現れた。そしてあの時のキーホルダーを大事に持っていて、もう忘れてるだろうけどあの時の約束を守ってくれたと思って本当に嬉しくて舞上がったよ。」
あの時、そんなに舞い上がってるなんて感じなかったし、今でもそう思うんだけど、イズマがそう言うならそうなんでしょう。ポーカーフェイスなんだね。
「そういうわけで、サヨにはもっともらしいことを言って手を繋いでいるわけ。」
なるほど、そうしてこれに繋がるのね。
「手を繋いで歩いててさ、ボクの言葉で一喜一憂したり、屋台に目を輝かせたり、ボクを心配してくれたり、そんな色んなサヨを間近で見てもっと好きになったんだ。」
写真を見て好きになった発言もあったから、過去の記憶に囚われすぎて今のあたしを見れてないんじゃ……という心配もあったけど、それはいらん心配だったみたいだ。
そう言えば、と思い出す。
今まであたしが好きになった人ってどことなくイズマに似てた。
例えば中性的で綺麗めな人だったり、大きすぎない身長だったり、いつも微笑んでて落ち着いた雰囲気だったり、年上のお兄さんだったり。
ここに来たという失恋した相手もそこまで身長が高いわけではないし、落ち着いた雰囲気の人だ。
その前は穏やかーな先輩、その前は近所の綺麗な顔したお兄さんで、夏祭りの日に浴衣を着ているのを見て好きになった。
つまり心のどこかであわーい恋心を覚えていたってことか。




