夏祭り 15
屋台のある石畳が終わり、目の前にはあちらの世界とおんなじ緩い登り坂が見える。
ここに提灯はなく、等間隔で置かれた灯籠が灯っているだけで、さっきとは打って変わって薄暗い。
あたしたち以外に、こちらにいる人は誰もいない。なんかホラー映画の導入篇みたい。って、何で自分で自分の首絞めるようなこと考えちゃうかな。忘れろ忘れろ、戻ってこい平常心。
「さて行こうか。」
「はい!」
そんな感じで勢いよく返事した少し前の自分よ、バイトがっつり頑張った後に自転車を漕ぎまくり、階段を必死に登ったあの疲れが今になって足に来てるよ。
初詣の時はこうじゃなかった。確かに疲れはするけど、とまらずに登り切れたのだ。
「ねえイズマ。」
「ん?」
「足疲れちゃってさ、休憩してもいい?」
「そうだね、あそこの椅子に座ろうか。」
指差したのは、坂道の途中に唯一あるベンチだった。
ここで休みたくなるおじいさんおばあさん、その気持ち分かりますよ、きっついですよね。身をもって分かりました。
イズマの許可を得て、ベンチに深く座り込む。
背もたれもあって最高。
ぐったりするあたしをイズマは笑って見てた。
「待って待って、いつもはこうじゃないんだよ。でも今日バイトめっちゃ頑張ったし、自転車もすっごい漕いだし、あの階段も急いで登ってきたから足に負荷がかかりまくりだったんだよ。」
「ボク何も言ってないけど。」
「いや視線が言ってた。気がする。」
「そっかぁ。ごめんごめん。」
両手が合わせられないから、左手だけでごめんというその仕草があざと可愛い。
いいんだよ、あざとくても、可愛いなら。もう一瞬で許したわ。
少し体力が回復してきたので、ぐったりと背もたれに預けていた背中を少し伸ばして座る。でも若干ぺたっとくっつけるぐらいで。
「ねーねーイズマー」
「なんだい?」
「イズマって記憶力良い方?」
「藪から棒だね。」
脈絡なくてごめんね。
イズマは少し考えてから口を開いた。
「普通のヒトよりかは良い方じゃないかなぁ。」
「おーさすが管理者様。」
「それで何が聞きたいの?」
「今までで、すっごく印象的だった人間ってどんな人?」
沢山の人と出会ってきたというし、あたしが思いつかないようなすっごい人とかいたんじゃないかな。
あ、もしかしたら好きになっちゃった人がいたとかも?
さつまでは恋愛の話で申し訳なくなったけど、アドレナリン大放出してだいぶハイになっているのかも。
ま、そもそも花の女子高生なんでね。前のめりで聞いちゃうくらいには人の恋バナとか大好物です。
「すっごく泣き虫な子かなぁ。」
「へーそれでそれで?」
「あれも怖いこれも怖いで泣き虫だったんだよ。でもたくさん並ぶ風車をしたときとか、わたあめ作るところを見たり、くじ引きして景品もらったときとかすごくキラキラした目で見ててね。その起伏が可愛かったなぁ。」
庇護欲そそられる人が好きなのかな。