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夏祭り  作者: 髙橋あきら
12/24

夏祭り 12

 風に吹かれた風車のようにくるくると回る世界。


「ここの夏祭りが終わってまた始まるときって最初の状態に戻るって言ってたよね。」

「うん。まあ、全部が全部そうってわけじゃないけど。」


 例外でだと迷い人の魂や体は元に戻らないし、体を乗っ取ったものは乗っ取った状態でいる。

 元に戻るのは夏祭り中に消費されたり壊れたりと変化があった場合に限る。

 あとは記憶も消えるとのこと。ただ迷い人がいい獲物だというのは本能レベルでわかっているから、そのことについて忘れることはないそう。


 と、イズマが説明してくれた。

 まあね、それすらも忘れるならここで迷い人が襲われるってことはないよね。


「あれ?でもイズマは忘れてないよね。」

「うん。何度繰り返したのかはさすがに数えてられないから答えられないけど、それでも今まで迷ってきたヒトのことは覚えている。」


 何度も何度も同じことを繰り返すのを体験するって気が狂いそうだ。

 しかも途中で帰れずにここで餌食となった人間も見ているわけで。

 それをたった1人で。1人?


「あのさ、イズマに仲間っていないの?一緒にいる仲間とか、同じく記憶を持ち続ける仲間とかさ。」

「これができるのは管理者だけで、この世界の管理者はそもそもボクしかいない。だからサヨのいう仲間っていうのはいないんだ。」


 本当に1人きりだった。管理者ってそんな辛い存在なのか。


「同情とかはいらないよ。そんなもんなんだって思ってくれればいいよ。」

「そう……。わかった。」


 この世界から消えようとしているあたしがどうこう言えるわけがない。

 ただ頷くことしかできなかった。


「こんな話題すると微妙な空気になっちゃうよね。いやあ、今更だけど正直に答えてごめん?」


 正直に答えて謝るひとなんて初めて見て、つい笑ってしまった。

 あたしに気を遣って言ってくれたのか、それとも真実そう思っているのかはわからないけど、この場の雰囲気は一掃された。


「そんなこと言って謝る人初めてなんだけど。イズマうける。」

「笑うことかなぁ?悪いなって思ったんだけども。」

「もとはと言えば、あたしが聞いちゃったからだよ。あたしこそごめん。」

「キミが悪いことは無いんだよ。」


 どうあってもイズマが悪者になる。なのでこの話題はもうこれ以上しない方がいいと考え、「もう終わり!」と強制終了にした。

 イズマはあたしがそういうなら、と言っていた。どこまであたしを尊重してくれるのか。こんなに良くしてくれるなんて、逆に申し訳ないわ。


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