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夏祭り  作者: 髙橋あきら
10/24

夏祭り 10

「あ、水風船だ。」


 そう言ってイズマが立ちどまる。そして指差したのは、紙の先に針がついててそれで水風船をすくうあの屋台だった。

 金魚すくいの金魚が入ってるような大きな四角い箱が地べたにおかれ、そこに水風船が入っているようだった。


「ちょうど誰もいないし、行ってみようか。」


 イズマが誘うと言うことは、必要なことなのだと理解できた。

 もちろん断るという選択肢はないので、水風船屋さんに行くことにした。


 箱を覗くと、鮮やかな原色カラーの沢山の水風船がぷかぷかと水に浮いていた。

 水風船の先端にはもちろん釣り穴件指にはめる用の輪ゴムが付いている。


「1人分いいかな?」


 イズマがそう言うと、お店の人がにこやかにど定番で先っぽに針がついた紙のこよりみたいなのを渡してきた。

 片手はあたしの手、片手はりんご飴で塞がっているイズマがこちらをにこにこと見ているので、あたしが受け取っていいのだと解釈して、店の人から受け取る。

 2人で並んでしゃがみ込み、水風船を物色する。


「サヨのお目当ては?」

「もちろん、ぱんっぱんに大きい水風船でしょ!」

「あはっ。大物狙いだねぇ。」

「ちっちゃいのよりかは長く遊んでられるからね。」


 いずれ萎んでしまうのなら、できるだけ大きくて萎むまでの時間が長いものが良い。

 そうは言っても、大きさはそんなに変わらなく感じる。

 うんうんと唸りつつ、これだ、というものに狙いを定めて、そっと先端の針を輪ゴムにすくい入れる。もちろんその際には隣の水風船に触れて紙が水で濡れないように気をつける。そうして持ち上げ、無事その水風船はあたしの手の中に着地した。


「やった!」

「おー!サヨはやるねぇ!」


 あたしの手の中にある水風船をまじまじと見てくる。


「サヨは緑が好きなの?」


 今回手に入れたのは、緑色の水風船だった。

 好きというか、とても印象に残っている色なのだ。

 このイズマのイメージカラーはあたしの中では緑だ。明るい緑の瞳、とても深い緑の着物。髪の毛が白いから、余計に緑が際立つ。

 だからつい緑色の水風船を選んだというのもある。


 あとは単純にこれが大きそうだったから。


「嫌いじゃないよ。」

「……そっか。」

「そういうイズマはやっぱ緑色好きなの?」

「うん。好きだよ。」


 迷いなくそう答えた。

 まあ緑の服着るぐらいだし、好きだよね。そんな気はしてた。


 何はともあれ、無事水風船をゲットできたし()()()()

 立ち上がり、お店の人にお礼を言うと水風船屋さんを後にする。


 ほんの数歩歩いた時だった。


「あ!」


 後ろから小さな子の声がする。


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