マレーシア完結編 人の絆は3日で完成する
汗と団子と涙のホームステイ
ペナン島滞在中、私は一つ上の先輩と共に3日間のホームステイを経験した。ホストファミリーは、シングルマザーと娘さん、娘さんの従姉妹と犬3匹の6人家族だ。ペナン島の家は、アメリカっぽい一戸建ての木製平屋で、玄関にはでっかい提灯が4つぶら下がっていた。
お母さんの車に乗って16時頃に家に到着し、部屋に案内された。部屋には扇風機とドラえもんとトイストーリーのバズが描かれた布団が2枚敷いてあった。犬が苦手な私は、元気に飛び跳ねるトイプードルにビビりまくり、「犬がいるなら最初に言っといてよ…」と肩を落としていた。あろうことか犬たちは私にやたらと近寄り、立って逃げようとするとピョンピョン飛び跳ねて私をさらにビビらせていた。
ホストファミリーは英語を話さなかった。
我々もマレー語は分からないので、言葉でのコミュニケーションはほとんど取れず、互いに手探りで過ごしていた。ちなみに私はホストマザーの名前を知らない。それでも、お母さんたちは異国の地からやってきた子ども2人に優しく接してくれた。
ホストマザーの手料理で最も思い出深いのは三色団子のスープだ。日本でもお馴染みの三色団子を温かくて甘い生姜のスープに入れたもので、初めての味ではあるが、甘くて優しい味わいである。
ある日、我々は日本マレーシア国際交流会と題したパーティーに参加した。今回の研修の大目玉である。私と先輩は事前に持ってきた自前の浴衣を着て参上し、ホストファミリーたちは大いに喜んでくれた。交流会では日本とマレーシアの伝統芸能や料理が振る舞われ、人々は未知の異文化を楽しんだ。ホストファミリーの娘さんは伝統衣装に身を包み、舞台で伝統的なダンスを披露してくれた。黄色いドレスと優雅な動きが美しく、私は異国の文化への興味をさらに強めた。
しかし帰りに事件が起きた。
お母さんの車に乗り込んだは良いが、横向きに停められた車が邪魔で出られなくなったのだ。夜22時半頃。お母さんは持ち主に知らせる為、クラクションを鳴らしまくった。お母さんのイライラがコチラにも伝わり、私はどうすることもできず、鳩のように黙ってキョロキョロしていた。やっとのことで持ち主が参上し、あと15分で日付が変わろうという時間。ようやく我々は家路についた。
そして迎えた最終日の朝。
私と先輩は荷物をまとめ、ホストファミリーと共に空港に向かった。いよいよホストファミリーともお別れである。一緒にいた時間は3日にも満たないが、何だかもっと長くいたような気がしていた。
お別れの時、お母さんが私をハグして背中をさすってくれた。自身でも全く思いがけず、目から溢れ出た水がお母さんのTシャツを少し濡らした。ホストファミリーからもらった大量のお土産を抱えて飛行機に乗り込み、私は周りにバレないように顔を埋めて寝てるフリをした。いつの間にか、ペナン島は小さくなって、目の前には美しい海が滲んでいた。
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余談だが、クラブでは友好の証として、マレーシアへ救急車を贈ることになった。この救急車、その名も「命の風(wind of life)」というのだが、名付け親は私である。「命の風」が今日も誰かの命を救っていることを願っている。
マレーシアのホームステイは、私の人生において大きな経験となりました。僅か3日でなぜあんなにも大号泣したのか覚えていませんが、ホストファミリーの温かさを全身に感じ、沢山の思い出を作ってもらったからだと思います。
これからも素敵な出会いがあることを信じて。