オーストラリア完結編 〜そしてプラスチック伝説は始まった〜
その夏、一生の思い出になった…
外国で日本食を食うべからず
このことを教えてくれたのがオーストラリアのコンビニだった。
「米が食べたい」
ジビエとハンバーガーで4日間を過ごした私はボソリと呟いた。夜も更けて、レストランが閉店してしまったので、我々は仕方なく付近のコンビニで食糧を調達することにした。
ゴールドコーストのコンビニには、派手な色のお菓子や緑色のジュース、サンドイッチなどが置いてあった。その中で一つ、白く輝くものを発見した。
「おにぎりや!!」
約一週間ぶりにお目にかかる日本食に、私は感涙寸前になった。そして迷うことなく梅と塩のおにぎりを購入した。これが悲劇の始まりであるとも知らずに。
ホテルに戻り、私は興奮と喜びに湧きながら、おにぎりの袋を開けた。そして一口バクッと頬張った。
「…これは、プラスチックだ」
私は真剣に考えた。あり得ない話ではない。
こんな硬い、口に入れた瞬間にボロボロ崩れる味のないコレがおにぎりである訳がない。だが、見た目はちゃんとしている。
もしかしたら、マヌケ面のチビがのこのこやってきて、ここオーストラリアであろうことか梅のおにぎりを購入している無礼に怒り、店長がコレでも食ってろとプラスチックを渡した可能性もある…
疑惑の目を向けながら、さらに二口目を頬張ると、中に赤い梅干しが入っていた。
私は僅かな希望を持って、梅干しを口に入れた。
「んー…」
梅干しのような味はした。酸っぱくて、シソの香りも少しある。だが硬い。とてもじゃないが噛めない。
「そうか、ここはオーストラリアか…」
目の前にゴールドコーストの煌びやかな夜景とバンジージャンプの歓声が遠くに聴こえ、少し欠けた三角のプラスチックを手に、私はしばらくの間、遠い目をして黄昏れた。
きっとオーストラリアのおにぎり職人も、現地の食材を使って一所懸命ライスボールを握ったのかも知れない。結果それが食感プラスチックに育ったとしても。
そう思うと何だか、このおにぎりが愛おしくなった。このプラスチックおにぎり伝説は、海外の中の日本を見つけたスバラシイ思い出として、今もなお我が家で語り継がれている。
コンビニのプラスチックおにぎりは、今でも忘れられない良い思い出です。
当時がそうだったのか、コンビニのハズレを引いたのか分かりませんが、あんなにも食べ物感のないおにぎりは初めてでした。
梅干しと塩のおにぎりの他にも、現地のカップラーメを食べましたが、おにぎりの方がマシでした。
海外に行った時は、現地のレストランでちゃんと食べた方が良さそうです。