グアム篇〜美のビーチで天国と地獄〜
海外旅行大好き一家に生まれた作者の実体験を綴った旅行記です。海外に行った気分になる!といったことはないかと思いますが、ゆるっと読んで、ちょっと笑って頂けたらと思います。
私の人生最初の海外旅行は5歳の時に訪れたグアムだった。
海と砂浜のコントラストが美しいこの島は、日本、フィリピン、パプアニューギニアに囲まれて、海の真ん中にポツンとある。どれくらい飛行機に乗っていたのか全く覚えていないが、空港からの直行便で約4時間ほどで到着する。邦人観光客も多く、日本にとっては比較的親しみのあるリゾート地ではないだろうか。
そんなグアムに、我々一家は参上した。
グアムでの行動は、専ら海だ。
我が地域の得体の知れない肥溜めとはまるで違う、遠目で見れば水色に、近くで見ると透明な、まさに完璧なまでの美しさだった。
美しい海をはじめて間近で見た私と弟は、水着に着替えて海ではしゃぐことにした。私たちは勢いよく海へ走り出したが、ぴたりと足を止めた。砂浜に、謎めいた物体がゴロゴロ転がっていた。
「コレ何?」
好奇心旺盛な子ども2人は、さっきより少し顔の死んだ親に問いかける。
「なまこ」
触ってもいい事が分かると、私と弟は持ち上げたり、突いたりして生態を調べ始めた。元々フニャフニャした軟体が好きな私は「なまこ」という聞き慣れずとも、なんか可愛い名前と、ツルツルでフニャフニャのナイスバディに惹かれ、すっかり恋に落ちた。どうやら、可愛いものが好きな弟も同じだったようだ。我々は黒光りのなまこたちを抱えて、母の元に向かった。
本能が危機を察知したのか、母は我々を見るなり少し腰を引き、本格的に戦闘態勢に入った。
そして、イタズラ大好きなガキ2人がナマコを抱えて母に近づいた。
「それ以上、近寄るんじゃない」
母はまっすぐな瞳で忠告した。
しかし、不運にも子どもたちはまだ幼かった。
グアムの砂浜に、海外からやってきた迷惑な観光客の騒ぎ声がいつまでも響き渡っていた。
あの日から、私は随分と長い間、あの黒ナマコに会っていない。いつか我が家族に迎えることを夢見ながら、今日も少し色褪せた写真を眺めている。
「海外に行きたい」
コロナになり、旅行に行けなくなった約半年後に呟いた言葉です。
それまで「家は天国。外に行くのは疲れるし、海外なんてもっと疲れる!(ご飯も賭けだし)」
と引きこもり体勢だった私ですが、この2年、あまりにも外に出なかったので、人が変わったように海外旅行に憧れるようになりました。
このエッセイを読んで頂いた方が、クスッと笑って、海外行こうかなと思って頂けると幸いです。
お読み頂きありがとうございました!