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第6話 ~盗賊捕縛作戦~

兵士としての任務を順調にこなしていくホーク。その一方でウンディーヌとの文通も続いていた。

そんな折、ホークに盗賊の盗伐任務が下る。

果たして、その結果はいかに!?

 ターハル領内にある雑木林。ここで今、モンスター討伐の任務に就いているホーク、ナオ、ライトの姿があった。彼等が対峙しているのはサイクロプスと言う1つ目の巨人である。

 怪力と手にした棍棒が武器であるサイクロプス。その戦闘能力はゴブリン等とは比べものにならない。特に敵はどういう訳か、妙に気が荒くなっている。


「全員散開!ホークは右側、ナオは左側から奴の注意を惹きつけろ!」

「了解!」

「了解です」


 愛用の大剣を構えつつ部下に指示を出すライト。ホークは長剣、ナオは長槍を握り締めながら返事をする。

 そして、素早くサイクロプスの左右に回り込むホークとナオ。これで敵は三方から包囲したことになる。かつて、リザードマンと対決した際に用いた戦法である。


「!!」

「おっと!」


 怒声を上げながらナオに向かって棍棒を振り落とす。一方、彼は寸でのところで敵の攻撃を回避する。確かに怪力は厄介であるが、その分だけ鈍重であり、動きを見切ることができた。


「そこっ!!」

「!?」


 サイクロプスがナオに攻撃をしている隙を見計らい、ホークが長剣で敵の左腕を斬りつける。彼の渾身の一撃は敵に確かな損傷を与える。

 かつて、リザードマンと戦った時には通じなかったが、いくつのもの訓練や実戦を積み重ねていった結果、ホークの剣はサイクロプスの固い表皮と筋肉を切れるようになっていた。


「よし、これで終わりだ!」


 ホークとナオがサイクロプスの注意を逸らし、的確に損傷を与えるのを見た後、ライトは最後の詰めに動く。


「ふんっ!!」

「!!???」


次の瞬間、大剣でサイクロプスの脳天に唐竹割りを叩き込むライト。次の瞬間、敵は声にならない叫び声を上げて地面に倒れ込む。

 モンスターにとっても頭部は重要な部位である。そこを斬られたサイクロプスが起き上がることは2度となかった。


「よし、これで作戦終了だ!」

「「はい」」


 ライトの終了宣言に対して返事をするホークとナオ。これで何度目かになるモンスターを討伐した後、彼等は作戦の事後処理に移るのであった。



 昼時の兵舎の食堂。ここでは今、昼食を食べている兵士達で賑わっていた。但し、朝食や夕食の時と比べて兵士達の数は少ない。

 何故ならば、兵士達の昼食は交代制となっており、食事ができる人数も限られているからであった。


 そうした最中、食堂の一角で昼食を食べているホークとナオの姿があった。今日の献立はパン、野菜スープ、何枚かにスライスしたハムとチーズであった。食事の取り過ぎによる眠気を防ぐため、食事の内容は軽めとなっている。


「最近、モンスターの様子が変ですね」

「そうだな」


 昼食を食べながら話しているナオ、相槌を打っているホーク。先の戦闘でもそうだが、彼等は相手のモンスター達に違和感を覚えていた。

 ここ最近、モンスター達の気性が妙に荒くなっているのだ。まるで何かに焚きつけられているかのようにも見える。

 無論、このことは一般の人間には分からないだろう。ターハル領の兵士として最前線の現場で戦っている2人だからこそ分かることであった。


 さらに2人が昼食を食べ進めている中、誰かがこちらの方に近づいてくる。何気なしに顔を向けていると兵舎で事務方を務めている男の姿があった。


「何の用ですか?」

「ホーク、食事が終わったら面会場に来てくれ。お客さんだ」

「はい。分かりました」


 素直に応えるホーク。回答を聞いた後、食堂から立ち去っていく事務方の男。恐らくは客に連絡を入れるのだろう。


「お客さんって誰ですかね?」

「さあ?」


 素朴な疑問をぶつけてくるナオに答えるホーク。彼自身、たった1人の可能性を除いて身に覚えがなかった。



 兵舎内に設置された面会場。指示どおり、この場所に訪れたホークを待っていたのはサーファであった。彼女の姿を見た途端、驚きが半分、予想どおりが半分というのが正直な気持であった。


「サーファさん」

「ホークさん、これが主から預かった手紙よ」

「ありがとうございます」


 早速、サーファから受け取った手紙を開くと、上質な紙触りを手に感じつつ、その場で丹念に読み込んでいるホーク。流麗な文体はいつ見ても美しい。

 手紙の内容に関しては簡潔に言えば、文通の申し出であった。理由はホークの本を選ぶセンス、文章力等である。その他にもおススメの本の紹介等も書かれていた。


「返事を書くので待っていてください」

「分かったわ」


 サーファに断りを入れた後、急いで面会場を出るホーク。早速、彼は別室で返事の手紙を書き始める。

 相手からの文通の申し出。これを受けたホークの感情は、当然に昂ぶらずにはいられない。しかし、彼は気持ちを落ち着かせつつ、堅実に文を書いていく。

 外部の人間との面会時間は限られている。短時間で返事の手紙を書き上げたホーク。すぐにサーファのいる面会場に戻る。


「こちらが返事のお手紙です」

「ありがとう。主に渡しておくわ」

「どうか、主さんも、サーファさんも、体調には気をつけてください」

「お気遣い感謝するわ」


 その後、別れの挨拶を告げて面会場を去っていくサーファ。そんな彼女の姿を見届けるとホークもまた兵士としての任務に戻るのであった。



 ターハルの街外れ。ここに1軒の民家が経っている。しかし、相当な年月が経過しているのだろうか、屋根は痛んでおり、壁もボロボロの状態となっている。

 この民家の前に立っているホーク、ナオ、ライトの三人。彼等の表情は真剣そのものである。何故なら、視線の先にある建物には、悪名高い盗賊達が潜んでいるからだ。

 ターハル領を拠点として、各地で強盗等を行っている盗賊達。連中を捕縛することこそ、ホーク、ナオ、ライトの三人に与えられた任務であった。


「ホーク、ナオ、まずは家の中に潜んでいる連中を誘い出す。そこから個々に仕留めていくんだ」

「はい」

「了解です」


 今回の作戦について大まかな概要を説明するライト、素直に返事をしているホークとナオ。さらに上官から注意点が伝えられる。


「今回の任務は盗賊の捕縛だ。決して殺すなよ」

「追い込むのは戦闘不能になるまでですね」

「手加減しないといけないんですね」


 ライトの言葉をそれぞれに咀嚼しているホークとナオ。盗賊達からは手口や盗んだ物等に関して情報を聞き出す必要がある。だからこそ、殺してはならないのだ。

 この点、ただ敵を仕留めるだけのモンスター討伐とは大きく異なる。言い換えれば、ホークとナオは今まで以上に難易度の高い任務を任されていると言えるだろう。


「いくぞ!」

「「はい!」」


 任務開始を告げるライト。手短に返事をしているホークとナオ。早速、三人は盗賊捕縛のために行動を開始する。

 まずは古びた民家との距離を慎重に詰めていくライト。そんな彼の手には手ごろな石が握られている。


「ふんっ!」


 次の瞬間、古びた民家の窓に向かって石を投げ込むライト。石は窓ガラスを破って家の中に転がり込む。さらに彼は1回だけでなく、何回か同じことを繰り返す。

 やがて、石を投げ終えた後、民家との距離を取るとライトは大剣を構える。部下であるホークとナオも既に武器を構えている。


 ほどなくして、古びた民家の扉が開いたかと思えば、人相の悪い三人の男が外に出てくる。恐らく、連中が盗賊なのだろう。

 人相の悪い三人組も男のうち、1人目はモジャモジャ髭の大男、2人目は細身のスキンヘッドの男、3人目は厳めしい顔の男であった。


「ちっ!囲まれたか!お前等、やっちまえ!」

「おお!」

「おー!」


 厳めしい男からの指示に対して、威勢よく返事をしているモジャモジャ髭の大男、細身のスキンヘッドの男。どうやら、この男が盗賊の主犯格であるらしい。


「俺がリーダーを仕留める!お前達は他の連中を頼む!!」

「「了解!」」


 厳めしい男の方に向かっていくライトからの指示に対して、ホークとナオの2人も返事と共に盗賊達と対峙する。

 そして、ライトは厳めしい男、ナオは細身のスキンヘッドの男、ホークはモジャモジャ髭の大男の相手をすることになるのであった。


 細身のスキンヘッドの男を立ち合っているナオ。相手は両手にナイフをそれぞれ握り締めている。


「へへへへっ~切り刻み甲斐がありそうだ~!」


 得物であるナイフを一舐めした後、愉快そうにしている細身のスキンヘッドの男。挙措動作を見る限り、猟奇的な性格をしているようだ。


「ひゃおおおおおおお!」

「よっと!!」


 ナイフを両手に襲い掛かろうとする細身のスキンヘッドの男。しかし、盗賊の攻撃はナオに届くことはなかった。

 細身のスキンヘッドの男が行動を起こした際、ナオは即座に長槍で足元の払ったのである。思わぬ攻撃で盗賊もその場に崩れ込んでしまう。


「くそ……まだだ!ぎゃあっ!?」


 落としたナイフを拾おうとする細身のスキンヘッドの男であるが、苦悶の表情と共に悲鳴を上げる。ナオが長槍の柄尻で敵の手を強く叩いたのである。


「もう勝ち目ないんだから降参しない?」

「くっ!わ、分かったよ!」


 最早、抵抗する手段は残っていない。ナオの降伏勧告に細身のスキンヘッドの男は素直に従う。その後、彼は持参してきたロープで敵を捕縛するのであった。


 一方、モジャモジャ髭の大男と対決しているホーク。こちらの武器が長剣なのに対して、敵の武器は大きめの斧である。


「小僧、一気に血祭りに上げてやる!」

「……」


 大斧を掲げたまま突進をしてくるモジャモジャ髭の大男。対するホークは無言のまま迫る敵を睨みつけている。


「でやああああああ……あっ!?」


 相手との距離を詰めていく中、大斧で斬りつけようとするモジャモジャ髭の大男。しかし、何かが彼にぶつかってきたため、その場で動きを止めてしまう。

 モジャモジャ髭の大男に命中したものの正体、それは剣を収納する鞘であった。そう、敵が接近してくる途中、ホークは剣の鞘を思い切り投げつけたのだ。


「小癪な!」

「遅い!」

「うぐっ!?」


 動きを止められてしまったため、何とか態勢と立て直そうとしているモジャモジャ髭の大男。だが、その間にホークが一気に接近してきた上、剣の柄尻で敵の腹部を殴りつける。当然、盗賊はその場で蹲ってしまう。


「潔く負けを認めろ」

「く、くそっ!」


 剣を突き立てながら降伏を勧告するホーク。一方、モジャモジャ髭の大男は悪態を突きながらも抵抗することはできなかった。

 その後、ホークも持参してきたロープでモジャモジャ髭の大男を縛り上げる。ナオに続いて2人目の捕縛に成功するのであった。


 ホークとナオが盗賊達の捕縛に成功している頃、ライトはリーダーである厳めしい男と対峙していた。


「どうする?まだ続けるのか?」

「ぐぬぬぬ!」


 大剣を突き立てながら相手に問い掛けるライト。対する厳めしい男は苦々しい表情を浮かべている。

 今一度、周囲を見回している厳めしい男。既に部下の2人は捕まっている。相手は3人であるのに対して、こちらはたった1人である。どう見ても、勝てる状況でもなければ、逃げられる状況でもない。


「こ、降参だ……」


 全ての状況を見て自らの敗北を認める厳めしい男。降伏宣言を聞いた後、ライトは手慣れた様子で盗賊を捕縛する。

 こうして、ホーク、ナオ、ライトの3人は盗賊を殺傷することなく、捕縛作戦を無事に終えるのであった。

皆さん、お久しぶりです。疾風のナイトです。

前回の投稿から1年以上の期間が開いてしまい、本当に申し訳ありませんでした。

今はリアルも落ち着いて小説が書ける状況になりました。

これからも細々になるかと思いますが、小説を投稿していきたいと思いますので、皆さんどうぞよろしくお願いいたします。

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