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第12話 ~新入兵士と令嬢のその後~

かくして、ターハル領とグオルグ領を騒がせた騒動は終わりを告げた。

平穏が戻った中、ホークとウンディーヌはどういった道を歩むのだろうか。

 今は亡きターハル伯爵とグオルグ伯爵の張り巡らせた企てと争い。その全ては失敗に終わった。

 ターハル伯爵の娘であるウンディーヌの報告により、強欲な貴族同士による争いは彼等の主であるアストラル王国に伝えられた。

 その結果、ターハル領とグオルグ領は取り潰しとなり、アストラル王国が直接統治することになった。それと同時に双方の領地に所属していた将兵は王国へと所属が変わった。

 さらに取り潰しとなった領地の統治であるが、王国から派遣された役人が現地の役人からの補佐を受けて統治することとなった。少なくとも、貴族の個人的な野心がまかり通ることはなくなるであろう。

 そしてまた、今回の事件を受けて、アストラル王国は国内の貴族に対する監視を強めることにした。それに伴い、貴族達の権限・権威は弱体化していき、逆に国王の方に権力が集中するようになる。そう、国内の中央集権化が進むのであった。


 旧ターハル領西部、山林と田園風景が印象的な片田舎である。この片田舎の集会所に今、大勢の村人達が集まっていた。

 村人達が集まっている理由、それはこれから新しく就任する里長を出迎えるためであった。ターハル領の頃は伯爵の配下が就任していたが、王国の統治下となったため、新しく里長が派遣されることになったのだ。

 大勢の村人達が注目する中、この場に1人の男が現れる。短めの茶髪が印象的な王国の制服に身を包んだ若い男。それは一介の兵士として、ターハル領に仕えていたホークであった。

 ターハル領が解体された後、王国の命で里長に任命されたホーク。より円滑な統治を進めるためというのもあるが、今回の一連の騒動で活躍した彼への褒美でもあった。


「本日より里長に就任したホークである。至らない面もあると思うが、どうかよろしく頼む」


 村人達に向かって就任の挨拶を行うホーク。堂々とした語り口調はまさに里長と呼べるものであった。


「あいつも立派になったもんだな」

「そうだな」


 ホークの挨拶を聞きながら言葉を漏らしている年上の村人達。まさか、村を出た若造がより上の立場になって戻ってくるとは思ってもみなかったからだ。


 すると、今度は1人の女性が村人達の前に現れる。雪のように白い肌、絹織物のような長い黒髪が印象的な美しい女性、それは元ターハル伯爵の娘、ウンディーヌであった。


「この度、里長に就任したホークの妻、ウンディーヌです。私も未熟者ですが、精一杯、夫のことを支えていくつもりです」


 自らのことをホークの妻を称した上、村人達に今後の抱負を語るウンディーヌ。令嬢の時の尊大な口調ではなく、淑やかな口調で喋っている。

 ターハル領を廃止した際、ウンディーヌもまた、アストラル王国に貴族の身分を返上する運びとなった。このまま一介の平民として過ごすか、あるいは修道院で生涯を終えるかの予定であった。

 その時、ホークがウンディーヌを妻に娶りたいとアストラル王国に希望したのである。かたや平民であり、かたや貴族の令嬢、彼の希望など本来は不可能ごとであった。

 ところが、ホークの要望はアストラル王国に受け入れられることになった。理由としてはウンディーヌが実質的に平民となること、そして、今回の事件での彼の功績が認められたからである。

 迷うウンディーヌを説得した上、自らも戦闘になって戦い続けたホーク。彼がいなければ、今回の謀略は暴かれることはなかったであろう。

 言わば、ウンディーヌとの婚姻はアストラル王国からの褒美である。また、この他にもホークにはブジンの鎧の正式な所有者として認められた。一介の兵士としては破格の扱いである。


「田舎での暮らしで不便をかけるけど大丈夫か?」

「ええ。これまで貴方は私のことを懸命に支えてくれた。今度は私が貴方のことを支えたいの」


 ホークからの問いにニッコリとした表情で答えてみせるウンディーヌ。その表情には一点の曇りもない。

 ホークから求婚された際、ウンディーヌはすぐにそれを受け入れた。最早、彼女にとって彼は何者にも代え難い存在となっていたのである。


「ホークさん、良かったですね」

「ウンディーヌ様、私は嬉しく思います」


 ホークとウンディーヌの後方で喜んでいるナオとサーファ。彼等はホーク達の従者として生きる道を選んだのである。


「あの子、良いお嫁さんを貰って」


 ホークとウンディーヌの姿を目の当たりにして、感激の涙を流しているマリア。まさか、息子がこんなにも美人の嫁を連れて帰ってくるなど思いもしなかった。


「里長様、挨拶はこれぐらいにして、俺達についてきてくれ。あんた達のために歓迎会を用意しているんだ!」

「奥様もどうぞいらしてください。できれば、お2人の馴れ初めも聞かせてくださいね」


 就任の挨拶が終わった後、ホークとウンディーヌに向かって口々に言う村人達。やがて、彼等はすぐ近くに準備した歓迎会場へと向かい始める。


「行こうか」

「ええ、行きましょう」


 お互いに顔を見合わせて話した後、一緒に歓迎会場へと向かい始めるホークとウンディーヌ。歩き出した2人の手は固く結ばれていた。

 立身出世のため、母親孝行のため、自分自身の正義のため、兵士となったホーク。新入兵士は見事に出世を果たし、ウンディーヌと言う清浄なる令嬢を嫁に迎え、無事に故郷へ錦を飾ることができたのであった。


FIN

皆さん、お疲れ様です。疾風のナイトです。

今回で本作もいよいよ完結を迎えることになりました。

去年から連載を始めて1年以上もの月日が経過しました。一時はリアルの事情等が重なって1年以上もの中断もありました。

しかし、見てくださっている方のためにも、「このままではいけない!」、「何とか完結だけはさせておきたい!」と思い、創作を再開することにしました。

今は無事に完結させることができてホッとしています。


次回作も用意してあります。今後とも皆さんに楽しんでいただける作品が提供できればと思っています。

最後になりますが、これまで「新入兵士が令嬢に一目惚れしたようです」を読んでいただき、誠にありがとうございました。

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