3番
あの後腰が抜けた私を抱き抱えて立たせてくれた明さんの感触に思わずさらに抱きついてしまい、しかもその姿を誰かに見られるという事件がありましたが私達は教室に戻ってきました。
「……その、ふへへ…いい感触でした……」
「感想!?もう!抱きつくのはダメだよ!」
ぺしぺしと私を叩き抗議してくる明さんを見ていると昔お母様に見せてもらったペットの犬を思い出して思わずまた抱きしめたくなる。
「…すいません、なるべく我慢、します。」
「我慢できなくなるレベルで抱きつきたいの!?」
「…友達は…そうすると、聞きましたから。」
「光威ちゃん……?誰にそんなことを教わったの……?」
お母様です。
なんて思っていたらガラッと教室のドアが空いき、先程までと違いはち切れんばかりの筋肉を隠さず見せつける服を着た先生が現れました。
「はいっちゅーもーく!皆いるかなー?次は戦闘訓練場に移動するからほら並んで並んでー!」
「おっ先生も来たみたいだしまた後でお話しよっか!じゃねー!」
「…また。」
明さんと離れるのは残念ですが列に並び待機します。
私は38番明さんは1番ですから流石に話に行けない距離ですし大人しく待つことにし、そういえば、と周りを見渡しました。
…!友達になれそうな人はいるでしょうか!
確かに明さんと仲良くなれたのはとても嬉しいですし、もしかしたらもしかすると親友、というやつにもなれるかもしれないと思います。
ですが友達は100人作れるものだとお母様は言っていましたからなんとか他にも友達が欲しいです。
そう思っているのですが…
「〜〜〜でさー!〜〜なんだって!」
「へー!〜〜も〜〜」
その、私を挟んで男子生徒が話と筋トレをしていて…私の前後は男子生徒でしたか。
流石にここに混ざるのは申し訳ないので出席番号が近い人と仲良くなるのは一旦諦めましょう…
そうして先生に連れられ辿り着いた訓練場は校舎よりも横に広く、入口から端まで走るのは私でも少し厳しいかもしれないほどの大きさでした。
「よしっ!皆ー、ここが第一から第四訓練場だよ!ここでは刀剣主体の子から遠距離、打撃に徒手空拳まで何でも集まってるからもし何処に行くのか決まっているならしっかり見ておくといいよー?」
よくよく耳を済ませてみると奥から金属がぶつかり合う音、何かが地面に叩きつけられたような音、気合を入れる声など家でよく聞く音が聞こえてきます。
その音を聞いていると家での生活を思い出し少し安心感が生まれほっとしてしまいます。
恐らく第一訓練場から一番聞きなれた音がするのであそこが刀剣主体の人だろうか…なんてぼーっと考えていた。
はっとすると周りの生徒達は仲間内で集まったり恐らく刀剣主体の人が我先にと訓練場に入っていきます。
私も向かおうかと思うと、
「光威ちゃん!私と一緒に回らない?」
「…!勿論です、友達は共に行動すると聞きましたから。」
「あはは…間違っては無いけど…」
明さんが私に話しかけてくれ共に行動することが決まりました。
これは友達の一歩先に行くのも時間の問題かも知れません、私のパーフェクトコミュニケーションはやはり使えるようで安心しました。
あ、そういえば…
「…その、明さんは、どの訓練場に?」
「え?私?」
「…はい、私は刀を使うので第一訓練場に行くと、思います。」
「何処が何処か分かるの?えーっとね!私は暗器専門だから多分いろんな訓練場を転々とすると思うんだよねー…大変だー!」
成程、暗器ですか、確かに可愛らしく体が小さい明さんにはぴったりと言えます。
それに暗器には刀剣も有りますから私と訓練する事もあるでしょう。
「…一緒に、訓練する時は、よろしくお願いします。」
「うん!よろしくね!じゃあ中入ってみようか!」
「…はい。」
一緒に訓練することを考えてワクワクしながら訓練場に入っていく、やはり第一訓練場ら刀剣が多いようで様々な生徒が木刀や特殊な素材の剣を振り、他にも教師に指示を受けている人などがいる。
やはり最新鋭の学園という事もあり綺麗な場所だった。ここで訓練することを考えると少し楽しみにもなる。
「ふわぁ…!凄いね!私こんな綺麗な所で訓練できるの!?」
「…ええ、凄いです。」
「へへへっ私の家って貧乏だからねーこんな綺麗な場所初めてだよ」
「…そうだったんですか。」
話を聞くと明さんの家は兄弟が多く両親は共働きという私には余り想像が出来ない家族のようです。
「…何か、私に出来ることがあれば言ってください、何でも、なんでも出来ますから。」
「えぇっ!?いやいや貧乏って言ってもお父さんまぁまぁ強いからそんなに困窮する程じゃないよ、ただ下の子たちが皆食べ盛りだからねー」
「…なら食材でも…」
「大丈夫だって!ほらほらあそこで先生が説明してるっぽいよ、行こう!」
…断られてしまいました。
ですがいつか何らかの形で……
とりあえず今は明さんについて行き説明を聞くことにしました。
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話を聞き終わったあと、お互いに違う武器の訓練場に行くので時間に余裕も無く別行動をとることにしました。
刀の訓練室は畳が敷かれそこだけ別の場所のようになっており中央には和装をした先生がいました。
お名前は錦宍 有重先生。
変な場所に迷い込んだかと思いましたが先生自体はとても良い人で私の質問に快く答えてくれ他にも訓練用の刀を振らせてくれるなど何ともいい先生でした。
しかしお話を聞いていると途中気になる言葉が聞こえました。
「うむ!光威殿はいい腕をしているな!やはりお家の筋トレの賜物であろう。これなら訓練別ランキング戦でもかなりいい所までいけるだろう!」
「…ランキング戦……?」
「む!?知らずにこの学園に来たのか!?」
ランキング戦。
初耳です、というか実は私はこの学園には成り行きで来てしまいあまり詳しく知らないのです。
しかし今では友達も出来ましたし謎の手紙に従ってみるのもたまには悪くないのですね。
「…その、申し訳ありません。」
「ん!気にするでない、そういう生徒もいるだろう。となればまずはこの学園のシステムについて知るべきだな…」
その後詳しく教えて下さり、分かったことが幾つかあった。
この学園において私達をこの日ノ本国を支えるべき力を持ち、そして正しき心を持つ為の人材にし、排出する。
ここまでは私も知っている事だ、しかしその為にこの学園にはある制度が組み込まれていた。
それは才協結締紡力制度。わかりやすく言うなら誰がこの学園で一番強いかを決める精度である。(教師を除く)
そしてランキングで自分より下の生徒に対して絶対の権利をもつことが出来るのである。
流石に無茶な命令や法律に触れるものは当然行えないが雑用などをやらされる小間使いとなるわけだ。
つまり強さは直接学園においてのヒエラルキーになるという世界の縮図をそのまま詰めたような制度だった。
その制度の一貫として武器ごとのランキング戦が行われるらしい、そこで勝たねばこの訓練場において人権はないようなものだとか、何とも今時と言った感じだ。
先生いわく
「うむ、流石にこの学園に入っているだけあり我々教師の見える範囲での露骨な差別は無いが基本雑用も何でも押し付けられるからな。我々も命令には関与するし…それに勉強が苦手なヤツも腕っ節があれば上を目指せる。強くなるに越したことはないな!」
つまり一定の強さを示せばある程度の成績も保証される…という事ですね。
諸事情からこの制度は大変助かります。
「…ご指導ありがとうございます。」
「うむ!気にするな!これから共に研鑽するわけだしな、刀使いは減っていて今年は不安だったが光威殿のような有望な物が来てくれてありがたい!これからよろしく頼むぞ!」
「…はい」
こうして話も終えそろそろ時間になると思い移動し集合場所に着いたが明さんの姿が見えない。
話に夢中になっているのだろうか、と思い1人で待っているが一向に帰ってくる気配がない。
もしかしたら何かが起きたのだろうか。
不安になってきて探しに行こうとした時である、
「あのっだから光威ちゃんは友達で……!」
「ちょっと!そこの貴方!いいかしら!」
背後から明さんと別の声が聞こえてきた。
一体なんだろう?
残念ながらランキング戦はノリで考えてしまったので途中に矛盾が生じるかもです。
でも全部筋肉が解決してくれるので問題ないです、あったとしても気にしないでください。気になるなら筋トレをしてください。