19番
「てめぇら……やり方が陰湿過ぎんだろ…!」
混沌を極めた会議室で何とか収集をつけたもののとても怒ってる坊主先輩は私達を凄い睨んでますね。
でももう大丈夫です。なぜなら完全に本性を表した志星さんがこっちにはいますもの!
「所詮力のない頭だけのサポーターですからやり方が陰湿でも仕方ありませんねロリコン先輩。」
「容赦ないわね志星…」
「そうですよ、ロリコンだから志星さんにちょっかい出てたんですか坊主先輩」
「ひかり、少し黙ってなさい……」
「?」
更に顔を真っ赤にして坊主先輩は明らかにキレてますね。しかし自業自得因果応報焼肉定食です。志星さんに手を出したらこうなるんです!
「…なんでこんどは嬉しそうにしてるのよ…?」
「?」
「てめぇらマジで死にてぇ見てぇだな…今すぐ決闘でも何でもしてやるよ…!」
「嫌ですよ私1年ですから受けなくていいですしそもそも立ち会いが居ないでしょう」
「え、私斬ってもあ、はい、ごめんなさい静かにしてます。」
「はぁ…ひかり、あっちで面白そうな委員長が落ちてるからあれで遊んできなさい。」
「はーい」
わーい、壊れた委員長です。微妙に汗臭い。
「てめぇ…!?昨日は大人しくしてたってか…?力じゃ勝てねぇからか…?」
「時間が勿体なかったからですよ先輩。その時間があればひかりちゃんのために使う方が万倍ましです。」
「てめぇまじで殴られてぇか…?」
「殴ればどうですか先輩。今は空間もないし先生もすぐそこにいますけど私のようなサポーター志望の生徒に殴りかかって見たらどうですか?」
「てめぇ!!」
「鳴き声じゃないんですからそれ以外も喋ってくださいよ?」
「ぐっ…くそがあああ…」
「分かったら二度と私に話しかけないでください。せ・ん・ぱ・い?」
「てめぇら…覚えとけや…!!」
わあ…顔が真っ赤通り越して真っ青ですよ…
キレながら会議室から出ていきドスドスと音を立てながら消えていきました…
「よくあんなにペラペラと怒らせられるわ……」
「志星さんと口喧嘩は私にマッサージ勝負を挑むようなものですよ」
「積みゲーじゃない……」
「ただいま戻りましたー…あ、ひかりちゃんさっきはありがとうですー!」
「ふふん?よく分かりませんが私は活躍しましたか!」
「ええそれはもちろん!」
「……活躍…?まあいいわ、で?少しはスッとした?」
「……まあ、多少は」
「そうですよ、志星さん本当は昨日のことかなり気にしてたでしょう。もっと言ってきても良かったんですよ?」
「いえいえ、満足ですしこれ以上やったら殴られそうですし…それにもう彼は網にかかりましたから」
「?よく分かりませんが絶対に殴られそうでも助けるので大丈夫です!」
「……能天気って羨ましいわ…」
ふふん!私は完璧ウーマンですよ!スーパーウーマン!志星さんのひとりや2人守るのなんてちょちょいのちょいです!
「……あの顎とかいう先輩。絶対何かしてくるわよ、分かってるの志星?」
「でしょうねー…まあ仕方ないです。その時はこっちもどうにかしてやりますよ。」
「ま、あてがあるならいいわ…ひかり、もうここは大丈夫でしょ、お昼行きましょ」
「あ、はい。志星さん大丈夫です?」
「ええ!後は委員長が何とかしてくれますよ!ひかりちゃんもちゃんと食べてきてくださいねー」
「はい、では後ほど」
私たちは部屋をはなれ別れました。
そのあとも特に何も怒ることも無く、午後の訓練も平和に終わり…問題が起きたのは、次の朝でした。
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《1年覇組 明志星は同性愛者!?同クラス光威 光を狙って問題行為も……?》
「……明ってあの覇組の……」
「……やけに仲良いのって……」
(ザワザワ……)
朝一、目に入ったのは人だかりと珍しく使われている校内連絡板でした。
真ん中には紙が貼られ、集まってきた人はヒソヒソと会話をして…
その紙をばらまいている坊主がいました。
「みんな見たか?しかもこいつサポーターの癖に俺ら筋繊維候補に盾つこうとしてやがんだぜ!?」
「ごうがーい!ごうがーい!」
そして……人だかりの真ん中には志星さんが呆然と立ち尽くしていました。
ただ、何もせずぼーっとその紙を見ながら……震えながら。
「……殺す」
「あ?おいおいおい!皆見ろよ!噂の光威さんだぜ!?ほら何やって……うおっ!?」
「おい、避けるな動くな今すぐ死ね。」
「てめぇいきなり切りかかるたぁいい度胸してんなぁ?うおっ危ねぇ!」
もうダメだ。
こいつは絶対にやってはいけないことまでした。
私をバカにすることも他人をバカにするのもまだいい、見下そうと何をしようと勝手だ。
でもそれを笑いものにするのだけは許さない、許せない、こいつは……超えてはいけない一線を超えた。
好きなものを人を何かを否定することも笑うことも許さない。決して。
「はっ!?こっちからも斬りかかっていいのかぁ!?おらっ!くらいやがれぇっ!」
「効くか、死ね。光威流猫火鉢……銅壷!」
刀を振りかぶり袈裟斬りにしようとすると坊主はどこからか突然鉄塊を降り出し叩きつけてくる。
金砕棒!明らかに重量と力でのゴリ押し…そう分かっていても激情していた私は同じく力押しの技を使い無理やり斬り掛かる。
こいつに何ひとつとして負けたくないと感じだから。
「てめぇの体格で力推しが効くわけねぇだろ!……!?てめぇどんな膂力……!」
「……許さない、絶対に、生半可な斬り方はしない……!」
「ぐぅっ!?」
思い切り力を込め金砕棒を弾き飛ばし坊主の下に回り込む。
体格差は圧倒的に不利、だったらそれすらも利用して殺す。習ったように。覚えているように。
「くっそが!おらぁくらいやがれ!」
当然下に潜り込み足を狙う私を叩き潰すように下に金砕棒を振り下ろしてくる。
足は一旦諦めそのまま股下をくぐり抜け踵を返し、スッと上を見る、背中、がら空き!
チャンス……殺せる!
「……藍丈流……」
「ひかり、だめよ。止まりなさい。」
殺す。
そう決めた私は絶対に使わないと決めていた技を使おうとしていた。
後悔はない、躊躇いもなかった。今は私なんてどうでもいい、二の次なんだ!
そう思い睨みつける。
「……邪魔しないでくださいソフィアちゃん…あいつだけは……!」
いつの間にか来ていたソフィアちゃんは私の後ろに回って万力のような力で私を捕まえていた。
納得いかない!なんで!あいつを斬っても……!使いたくない技を使ったとしても!今傷つくのは私だけで済むのに!
そう思う私を後ろから引き止めるソフィアちゃんはぎゅっと抱きしめてくれた。
…………なんで……
「っ……ソフィアちゃんお願いします…止めないでください、ダメです。今回だけはダメです。」
「だめよ、あなたをわざわざこんなクズ野郎のせいで傷つけたくないもの。」
「っ……」
落ち着いたと判断したのか私を離してくれます。
ソフィアちゃんはじっと坊主を睨みつけ明らかに激怒している様子でした。
「それに、安心しなさい、今はやめなさいって言ってるのよ。」
「あ?何だ…2人がかりか?はっ…所詮一年坊だな?怖ぇのか?あぁ!?かかってこいや!」
「黙りなさいクソ野郎、ひかりあの紙全部斬って。」
「……もう斬ってます」
「あ?何言って……」
「!?が、顎さん!全部やられてます!斬られてないのも濡らされたり……」
「あぁ!?てめぇら何やってんだぁ!?くそっ……まぁいい、分かったか?先輩に逆らったらどうなるのか、ましてやサポーター如きがよぉ?」
「……ええ、分かったわ。あんたみたいのが居るのも放置されてるのも、ね。」
「はっ!何言ってんだ?あばよぉ!せいぜい配っちまった方も頑張って回収すんだな!ははははははははは!」
そう言って坊主は去っていきます。
…っ今はあいつなんてどうでもいいんです!それよりも!
「志星さん!志星さん!しっかりしてください!」
「…………あ、ひかりちゃん。どうしたんですか?そんなに慌てて」
私たちが騒ぎを起こしている間もずっと立ち尽くし、ぼーっとしていて、現に騒ぎにも気づいていない様子。大丈夫なはずがないです…!
「どうしたって…どうしたもこうしたもあるわけないでしょう!あの紙全部回収します!大丈夫です!私に任せてくださ……」
「ひかりちゃん大袈裟ですよー、そんなに心配しなくても大丈夫です。私は平気ですから……平気、です……から…………私寮に、忘れ物、しちゃったので、その、取ってきます。」
「志星さん!あっ……」
私を振り切り寮に走って言ってしまいます。
……志星さんは忘れ物なんてしたことありません、今までに1度だって。
……………許さない
「………ソフィアちゃん」
「えぇ………ひかり言ってたわよね?体鍛祭でボコボコにするって」
「…はい」
「……やるわよ。友達を泣かせて傷つけて挙句にさらし者ですって?」
「……骨も残さないです。」
「「全校生徒の前で殴り倒してや(るわ)(ります)」」
…………こうして、志星さんのいない。体鍛祭が始まりました。
ただ、1つ。
あの顎貂亥を殴り倒すために。
志星さんに……謝らせるために。
今更ですけど光威 光は話す事に慣れてきていて…を多用しなくなりました。
決してめんどくさいとかじゃないです。
成長です。