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憧れのスカート  作者: 赤坂秀一
最終章 それぞれの道へ
51/52

51 卒業と温泉旅行

お待たせしました51話を更新しました!


受験も終わり、私立大学の合格ももらい、ちょっと余裕が出てきた三人は温泉地に卒業旅行に行きます。


 私立(しりつ)橋本大学(はしもとだいがく)から合格を頂き、母が一番喜んでいました。

「本当に良かったわね!」

「もう、橋本大学に決めたら、そしたら毎朝一緒に車で通学出来るのに……」

 姉はそう言うけど本命は北山大学(きたやまだいがく)だし、それに一緒に通学は一年だけだしね!

「でも、私は北山大学にこだわりたいの! 入学拒否されたら諦めるけどね」

 でも母は、この際北山大学だろうと橋本大学でもどっちでも良い様でした。

飛鳥(あすか)が医者になるために選んだ大学だからどっちでもいいわ! でも、一生懸命に頑張りなさい。あなたはまだ医者になるための通過点にいるだけなんだから……」

 母はそう言ってキッチンへ行ってしまいました。


 三月一日、卒業式です。とうと、城南高校(じょうなんこうこう)を卒業します。

「卒業証書、今村飛鳥(いまむらあすか)

「はい」

 そう返事をした後校長先生から卒業証書を受け取ります。私が壇上から降りて来た時…… 母は笑顔で私の事を見守ってくれています。

「卒業証書、如月玲華(きさらぎれいか)

「はい」

 玲華も卒業証書を受け取り壇上を降りて私の側に戻って来ました。その後五組の生徒が卒業証書をもらった後、六組の生徒が壇上に上がります。

「卒業証書、斎藤瑞稀(さいとうみずき)

「はい」

 瑞稀も無事卒業出来ました。卒業式というのは感慨深いものですね。

 卒業式が終わり教室では担任の先生から最後のホームルームがあり最後の有難い言葉の代わりに私達から花束を送り一緒に写真を撮ったりして最後の時間を過ごしました。

 その後、私達は化学部へ行きます。化学室では顧問の古澤(ふるさわ)先生と後輩達が恒例の送別会をするため準備をしていました。

「飛鳥先輩と玲華先輩はこっちにお願いします」

 悠香(ゆうか)副部長が仕切ります。

史華(ふみか)さんと徳永(とくなが)先輩はこっちですよ」

 黒鉄(くろがね)部長は史華を自分の席の隣に連れて行きます。史華も黒鉄部長もちょっと照れてるかな……

「ねえ、私はどこ?」

 瑞稀がどこに座って良いのか尋ねます。

「あっ、瑞稀先輩は玲華先輩の隣にお願いします」

 これから送別会が始まります。今回の送別会は三年生だけではなく恵美子ちゃんも含まれています。

「あの、飛鳥先輩!」

 雛乃(ひなの)ちゃんです。

「どうしたの? 雛乃ちゃん」

「えっと、あの……」

「雛乃ちゃん、さっさと言わないと私が言っちゃうよ」

 恵美子(えみこ)ちゃんは何を言おうとしているのか?

「あっ、飛鳥先輩、胸の校章貰えますか?」

「えっ、これ!」

 うちの学校は左の胸ポケットの上に学年別に色が違うバッチ式の校章を付けるのですが、雛乃ちゃんはそれが欲しいみたいです。

「あっ、これ、良いよ」

 私は胸の校章をはずして雛乃ちゃんに渡しました。

「有難うございます! 私の思い出にします」

 雛乃ちゃんは喜んでくれました。

「えっ、恵美子ちゃんが貰わなくて良かったの?」

 瑞稀! もう、そういう事は言わないの。

「だって、雛乃ちゃんに先越されたから…… 仕方ないですよ」

 いやいや、恵美子ちゃん自分で譲っていたじゃない。笑顔でそんなこと言わないの! それに、私と恵美子ちゃんには他にも思い出になる物があるでしょう…… 雛乃ちゃんの行動を見て他の後輩達はちょっと騒いでいます。そういえば史華の校章は、ここに来た時には付いてなかった様な、たぶん黒鉄君が貰ったのかも知れないですね。


 部活の送別会も終わり私達は一緒に帰ります。

「飛鳥、試験も終わった事だし温泉でも行かない?」

 玲華がいきなり温泉に誘います。良いけど私は……

「玲華、私は入れないよ!」

「それは大丈夫! ちゃんと貸切温泉を予約するから」

 えっ、貸切?

「瑞稀も行くでしょう?」

「うん、行く行く! いつ行くの?」

「明後日の木曜日と金曜日の一泊なんだけどね」

「結構急だね、どこに行くの?」

 私が訊くと……

清川温泉(きよかわおんせん)! 湧水庵(ゆうすいあん)に泊まるんだけどね」

「玲華、よく予約が取れたね」

 瑞稀が言うのも無理ありません。清川温泉は半年先まで予約で埋まっている人気の温泉です。しかも湧水庵という人気の宿なのにどうして……

「実は、お母さんから予約をして貰ったの! お母さんはよく会合とかで使っているからね! まあ、それでも平日しか取れなかったんだけど」

 なるほど、まあいろいろあるようだけどお母さんとも上手くやってるみたいね!

「飛鳥と瑞稀と一緒に行くって言ったら張り切っちゃってさ! それで貸切温泉を予約すればってことになってね」

 玲華のお母さんは私の事知ってるんだっけ?

「飛鳥と瑞稀をまた家に連れて来なさいなんていってるんだよね」

「いいなぁ…… 私も温泉行きたい!」

 一緒に帰っている恵美子ちゃんがそう言いますけど……

「平日だから無理でしょう! 学校があるんだから」

「もう期末試験も終わってるし二日くらい休んでも……」

 こらこら、そんな事は駄目だって!

「ちゃんと学校へ行きなさい」

「えーっ!」

 恵美子ちゃんは頬を膨らませご機嫌斜めです。まあ、期末試験も終わって、転校する訳だから休んでも問題は無いんだろうけど、流石に容認する訳には……

「それじゃ、恵美子ちゃんは日曜日に私達とお花見でもしようか!」

「玲華、いくらなんでも桜はまだ咲いてないよ」

 瑞稀、ナイスツッコミ!

「お花見は桜だけじゃないわよ、梅もいい感じに咲いているし、桃の花だっていい感じだしね」

 瑞稀撃沈! そういう事で橋本市にある梅園にお弁当を持って行く事になりました。まあ、春の暖かい日にピクニックみたいで良いかな! その帰り道、私はさりげなく恵美子ちゃんと手を繋ぎました。その手には小さな紙包があります。恵美子ちゃんも気付いて受け取ってくれました……


 翌朝!

「飛鳥、玲華さんと瑞稀さんが来たわよ」

「はい?」

 えっ、八時集合じゃなかったの? いえ、もう起きていましたよ! 今日から清川温泉へ卒業旅行です。

「おはよう飛鳥」

「おはよう、まだ七時を回ったところだよ」

「うん、そうだけど早く目が覚めちゃってね」

 そう言いながら食パンを頬張る玲華です。

「飛鳥は今日もスカートなんだね!」

 私はスカイブールーのロングスカートです。

「最近のお気に入りなの」

「飛鳥おはよう」

 えっ、瑞稀もうちで朝食食べてるの?

「飛鳥の家のマーガリンパン美味しいね」

「あら、そう! スクランブルエッグとソーセージを炒めたものもあるから遠慮しないで食べてってね」

 母も嬉しそうにそう言います。

「飛鳥の家の食パンって特別なの?」

 玲華も瑞稀もどうしたのかな?

「ううん、普通の特売のパンだよ、そうだよね、お母さん」

「ええ…… そうよ……」

 ちょっと恥ずかしそうな母です。

「なんだかちょっと違うんだよね、トースターが良いのかな」

 いや、普通のトースターだよ。メーカーは知らないところのだけど…… アラなんとかって言ってなかったかな……

「なにこのトースター、スイッチを入れたらすぐにヒーターが真っ赤になっているじゃない」

 瑞稀がそう言ってますけど……

「それって凄いの?」

「凄いよ、普通はヒーターが赤くなるまで一、二分かかるから」

 なんだか瑞稀も玲華も凄いを連発していますけど……

「ところで運転手さんは?」

「コンビニまで行って来ますって!」

「そうなの…… うちで一緒に食べれば良かったのに」

「まあ、でも結構恥ずかしがりやだから」

 朝食も無事に終わり出発です。

「行って来ます!」

「行ってらっしゃい」

「飛鳥、お土産よろしくね」

 姉はちゃっかりしているんだから……

 これから清川温泉に行く電車に乗るため隣県にある川本駅(かわもとえき)へ向かいます。川本駅からは電車で清川駅へ行き、そこからはバスに乗り換え清川温泉へ行きます。

「ねえ、なんで温泉まで車で行かないの?」

 当然のように瑞稀が訊きます。言われてみれば瑞稀の言う通りで早く車で行ってゆっくりするのが良いだろうと思うのですが……

「まあ、温泉に行くんだからバスや電車を使ってもいいでしょう」

 などと玲華は言いますけど……

「そうなのかな?」

 瑞稀は半信半疑ですが……

「それに、この車目立つんだよね」

「えっ、玲華今更それを言うの……」

「それに、昼からお母さんが車を使うのよ」

 だったら最初にそう言えば良いのに……

 そして、川本駅に到着です。ここからは電車です。

「あっ、玲華来たよ!」

 瑞稀、ちょっとはしゃぎすぎ! あれ、これ電車じゃ無いよ。

「玲華、これに乗るの?」

「そうよ」

 駅に到着したのは古いディーゼル気動車です。私達は早速列車に乗り込みます。

「結構古い列車だね」

「でも、これを楽しみに来る人もいるのよ」

 確かに、乗客の中にはいかにもと言える鉄分豊富な方がいます。

「登山客も多いね!」

「飛鳥、ここは剣岳(つるぎだけ)の麓だからね」

 剣岳はこの辺では有名な登山スポットです。

「今から登るのかな?」

「私には無理だよ!」

「大丈夫だよ瑞稀、今から登山しようとか言わないから」

 でも、気動車に乗ってゆっくり列車の旅も良いですね!


 清川駅に到着です。

「ここからバスなんだよね」

「うん」

 玲華はそう返事をした後、バス停で時間を確認しますが、玲華は溜息を吐きます。

「どうしたの玲華?」

「ここで四十分待つから……」

 えっ、そんなに待つの? 私も時刻表を確認すると…… 午前と午後にバスが三本づつ、一日に六本しかありません。

「まあ、この本数にして四十分後にバスが来るって事はいい方なんじゃない」

 私がそう言うと……

「飛鳥ってポジティブだね」

 瑞稀に言われてしまいました。

「ねえ、あれソフトクリームじゃない」

 瑞稀、ナイスだね!

「時間もたっぷりあるし食べようか」

 また、このソフトクリームが絶品でした。滑らかで濃厚でとても美味しいです。

「待ち時間がなかったら食べられなかったね」

 そして、ようやくバスが来ました。

「これもまた、なんだか古いくたびれたバスだね、あれ大丈夫?」

 確かにそうだけど…… 瑞稀、ちょっと失礼だよ。

「仕方ないのよ、清川村村営バスだから、よそのバス会社からの払い下げを使っているのよ」

 なるほど、私も瑞稀も納得です。

「お待たせしました清川村役場行きです」

 年輩の女性が声を掛けて来ました。

「どちらまで行きますか?」

 そう私達に訊いた時でした。

「婆ちゃん、このバスエンジンが止まらんけど」

 運転手さんが慌ててます。

「宏、デコンプば引かんね!」

「デコンプってなんね」

「すみません、ちょっと待ってくださいね」

 年輩の女性は運転席へ行き何やら説明しています。すると、プスンプスン、ストンとエンジンが止まりました。

「おまえはちゃんと助役さんの話ば聞いとかんけん、こげなことになるやろが!」

「こげなとは自動車学校じゃなろうとらんって……」

 などとなにやらもめていますが……

「すみません、お待たせしました。どちらまで行きますか?」

「あっ、清川温泉まで……」

 玲華もちょっととまどっている?

「えっと、そいぎんた清川温泉入口で降りてください。あと、切符をお願いします。一人三百五十円です」

「それじゃ、大人三人お願いします」

 そう言って玲華が切符を買いました。取り敢えず支払いは玲華が一括して払い、後ほど玲華から私達にも請求があります。

「出発までしばらくお待ち下さい」

 そして、私達はバスに乗り込みます。

「なんだか本当、長閑だね」

「うん」

「まあ、それが良いのよ」

 瑞稀の言葉に私は頷く事しか出来ませんでしたが、玲華は納得しているみたいです。

「お待たせしました。清川村役場行き発車します」

 そう言ってバスの扉を手で閉める車掌さん。

「手動なんだね」

 バスはゆっくり動き出し、長閑な山道を進んで行きます。

「ご乗車ありがとうございます清川村役場行きです。運転手は山川宏、車掌は山川ヨネが乗務します」

 そう紹介されたけど乗客は私達だけで貸切状態です。

 バスはしばらく走ると病院に到着しました。バス停には清川村立病院前と書いてあります。

「あら、今日はヨネちゃんやったと?」

「うん、うん病院の帰りね」

「そがんたい、ハハハ」

 なんだかお知り合いの様子、長閑で良いね!

「あら、お客さんやったね、ごめんなさい」

 まあ、そんな感じで村の人とのちょっとしたふれあいもあり、ようやく清川温泉入口に到着です。

「有難うございました。ここからまっすぐ降りたところが清川温泉ですよ」

 そう教えてもらいバスを降りました。

「はあ、やっと着いた」

 早速、湧水庵を探します。

「あった! あれでしょう」

 瑞稀が指をさしています。なんだか川のすぐそばにあって川のせせらぎが聞こえてきます。

「予約していた如月ですけど」

 玲華がチェックインします。するとすぐに部屋に案内してもらえました。

「予約してある貸切温泉が十二時からなのでそれまでに扇屋(おうぎや)さんまでお願いします」

 そういうことで早速浴衣に着替えて扇屋さんへ向かいます。なんだか浴衣で下駄をカランコロン音をたてて歩くのは心地良いですね。家から履いてきたミュールとはまた違って良い感じです。

 扇屋さんを訪ねると、すぐに温泉へ案内してくれました。私達の入るのは桜の湯です。

「ねえ飛鳥、あなたの胸のサイズってどれくらいなの?」

 脱衣所で浴衣を脱いでるときに玲華が……

「なに、いきなりどうしたの?」

 私はちょっと恥ずかしくなりました。

「…… B65だけど……」

「えっ、Bなの?」

「うん、まえに美彩先生と専門店に行ったときに測ってもらったから間違いないと思うけど……」

「玲華はどうなの?」

 瑞稀が訊きます。

「私は…… A70よ」

 ちょっと頬を膨らませ呟いています。

「でも、私はホルモン治療でここまでなれたけど玲華はまだこれからなんじゃない?」

 まあ、玲華の胸はまだまだ発展途上みたいです。

「ねえ、私には訊いてくれないの」

 瑞稀が嬉しそうに訊きますけど……

「訊かなくても大きいのは判るからいいわ」

「えっ、そこまで大きくないよC70なんだけど……」

 瑞稀、それで充分だよ。

「瑞稀は良いわね…… もう充分過ぎるくらい大きいから」

 などと言いながら私達は温泉に入ります。瑞稀があれでCなら恵美子ちゃんはDくらい…… でも私はちょっと恥ずかしいのでタオルで隠します。

「これがBカップのおっぱいなのね!」

 そう言って私の胸を触る玲華です。

「ちょっと! やめてよ」

「はあ、やっぱり私より大きい…… なんだかショック……」

 そう言われてもね…… でも玲華の胸は小ぶりでちょっと可愛かったかな! 本人には言えないけど……

 それにしても、ここの温泉は静かです。川のせせらぎだけが心地よく本当に癒されます。受験で疲れた私達を癒してくれます。本当に来て良かった。


長閑な温泉地で受験の疲れを癒します。しかし、これが終わると、みんなと別れて新しい生活が始まります。次回は最終話です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 受験お疲れさまの卒業旅行、良いですね~。 高校も大学もとにかく出ることに精一杯で、何にもなかったですねえ、私は…。 それにしても手動ドアのバス(^^) 普通の路線バスではないのでしょうね…
2021/03/28 14:18 退会済み
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