50 前期試験と二次試験
お待たせしました50話を更新しました!
大学共通テストも無事に終わり、前期試験、二次試験といよいよ受験本番です。果たして希望の大学に合格する事は出来るのでしょうか……?
波乱含みの共通テストが終わりました。この後、前期試験に突入します。しかし、何故私の試験の時に雪が降るかな…… そういえば恵美子ちゃんの私立高校の試験の時も雪だったよね…… この地域は滅多に雪は積もらないのに積もってもせいぜいワンシーズンに一度か二度なのに…… 私って誰かに恨まれてる? まあ、そんな訳無いかな……
そんな事を考えながら学校へ今日から授業は前期試験対策があります。個別教室でも橋本大学の過去問集を徹底的に指導してもらえるようでとてもありがたいです。
「飛鳥さん!」
うん? 誰かが私を呼んだような……
「飛鳥、恵美子ちゃんと雛乃ちゃんが来てるよ」
えっ、どうしたんだろう? 私は急いで二人が待つ廊下へ行きました。
「どうかしたの?」
雛乃ちゃんは俯いてモジモジして黙っています。
「飛鳥さん、ちょっと早いけどバレンタインのチョコを作ったので食べてください」
恵美子ちゃんがそう言ってハートのチョコを渡して来ました。
「あっ、ありがとう恵美子ちゃん、試験勉強の合間に食べるね!」
すると恵美子ちゃんはモジモジしている雛乃ちゃんを突いています。それに気づいた雛乃ちゃんも……
「あ、あの、飛鳥先輩…… わ、私も作ったので、た、食べてください」
雛乃ちゃんも作ってくれたようだけど、なんだか顔が赤いよ大丈夫?
「ありがとう雛乃ちゃん、少しづつ食べるね」
私がそう言ってチョコを受け取るとき雛乃ちゃんの手を触り受けとりました。すると雛乃ちゃんは、顔を真っ赤にして一礼したあと走って行ってしまいました。恵美子ちゃんはちょっと呆れているような…… 雛乃ちゃんってまさか私のこと…… それは無いかな……
「飛鳥、このチョコ美味しいよ」
瑞稀が食べながら言います。
「あっ、瑞稀ももらったのね!」
「うん、私も玲華もね、飛鳥のよりはちょっと小さいけどね」
「それじゃ飛鳥さん受験頑張ってくださいね」
恵美子ちゃんはそう言いながら私にちょっとだけピトッと密着して微笑みを残して行ってしまいました。まったくもう、恥ずかしいんだから…… 私はたぶん赤面しています。
「ところで瑞稀はバレンタインなんてしてる暇ないよね」
「うん、流石にね! 取り敢えず合格発表があってからにしようかって隼人君が……」
瑞稀はちょっとにやけています。
「隼人君って?」
「やだ、関君だよ!」
ちょっと恥ずかしそうに頬を染める瑞稀です。そうか、関隼人先輩だったね。
二月の中旬、今日は橋本大学の試験です。私と玲華は橋本大学朝日山キャンパスで試験があります。
「飛鳥、早くしないと遅れるよ」
今日は姉が大学まで車で送ってくれるそうです。どうも車の運転に目覚めたらしく運転するのが楽しいようです。
「お姉ちゃん、それじゃよろしくね!」
「まかせときなさい」
私は助手席に座り試験勉強の見直しをしています。
「飛鳥、もし橋本大学に決まったら毎日一緒に大学に行けるね!」
「そうだね……」
そう言ったものの、いやお姉ちゃん、私の志望校は北山大学だから…… 私は助手席でそう思いながら勉強を進めます。なんだか車の中って心地よく揺られるので頭の中に残ります。これってとても良いかも…… そんな事を思っていると……
「飛鳥着いたよ」
私はそう言われ顔をあげると……
「お姉ちゃん、ここは大学病院じゃない、キャンパスはもうひとつ先の入口だよ」
「えっ、そうなの? ここからは行けないの?」
「無理だよ」
まあ、行けない事もないけど患者さんの邪魔になるだろうしね。そういう事で姉は車を動かします。しばらく行くと……
「ねえ飛鳥、ここで良い?」
姉は校門のちょっと手前に止まっています。
「良いけど、どうしたの?」
「だって、前に趣味の悪そうな黒塗りの高級車が止まっているんだもん。あれってヤクザかなんかじゃ無いかな?」
姉に言われて前を見ると見覚えのある高級車が……
「お姉ちゃん、あれ玲華の家の車だよ」
「ええっ! 玲華さんって飛鳥の友達だよね」
「うん、前にも話したじゃん家が総合病院で一人娘だって。この間の雪の共通テストのときも家まで送ってもらったんだから」
「飛鳥は、あの車に乗ったの?」
「うん」
「中はどんな感じなの?」
「中は対面式のソファーでとてもクッションが効いていて、冷蔵庫の中には飲み物が常備されてるの」
「凄い、シャンパンとかワインがあるの?」
「さあ、私が乗ったときはコーラとコーヒーがあったけど」
「ふーん、でもなんだか憧れるね!」
さっきまでヤクザの怪しい車だと言っていた姉だが一転して憧れの車に変わりました。まったくもう…… あっ、玲華が呼んでいます。
「お姉ちゃんありがとう、それじゃね!」
私は玲華の側ヘ行き、一緒に試験会場の中へ入って行きました。中では流石に玲華とは離れた場所に座ります。そういえば受験番号も結構離れていたような…… そして、試験が始まります。
試験は夕方までみっちりありました。面接では、まず性同一性障害の事を訊かれました。しかし、トイレの件などで多少の制限はありましたが、そこまで問題無く受け入れてもらえる事にまずは感謝です。それと地域医療枠での受験でしたのでそれについても訊かれました。
「卒業後は県内に残って九年間医療をして頂く事になりますが、問題ないでしょうか?」
「はい、問題ありません」
この質問の意図は誤解している受験生がたまにいるという事でした。
「飛鳥、面接どうだった?」
先に終わった玲華が私の側に来ました。
「さほど問題無かったよ! 性別違和の件はいろいろ訊かれたけど大丈夫だよ」
「そう、私はうちの病院の事を訊かれてちょっと面倒だったかな!」
「どういうこと?」
「私のお母さんはこの辺の大学では有名だからその辺でちょっとね」
「そういうのは関係ないと思うんだけど」
「まあ、間接的な訊き方ね、あとうちの大学でいいんですか? みたいな事も訊かれたし……」
「でも、そんなの受験生の自由じゃないのかな、家が病院っていうのも大変なんだね」
「まあね!」
そんな感じで橋本大学の試験も終了です。あとは北山大学の二次試験です。これでもし両方とも駄目なんて事になると後期試験を受けなければなりません。まあ、一応願書は出しているけど出来れば……
「飛鳥、共通テストの判定どうだった?」
いや、瑞稀判定は前期試験前に判っていたじゃない。
「あっ、私はB判定だったよ、瑞稀は?」
「それが、私A判定だったんだけど何かの間違いかな?」
「そんな訳ないでしょう、文系と理系じゃ判定内容も違うでしょう! でも良かったじゃない」
玲華がそう言います。
「玲華はどうだったの?」
「私も飛鳥と同じでBだった……」
「そっか、それじゃ甲斐先輩がA判定だったっていうのは本当に凄い事だったんだね」
私と玲華はしみじみそう感じました。
「そういえば、試験の時久美と玲奈に会ったよ」
「えっ、どこで!」
「橋本大学の長田キャンパス。久美は私と同じ教育学部で玲奈は経済学部だって!」
そうか、あの二人も橋本大学なんだ!
「匠君は?」
「匠君は一條工業大学だって」
「工業大学?」
「うん、工学部なんだってよ」
「へえ、玲奈と別れちゃうんだね」
「まあ、別に大学が違うだけだから……」
それにしても瑞稀がA判定って事は余程のことがない限り決まりじゃない! いいな……
そして、今日は二次試験です。全学部とも北山大学本城キャンパスで試験があります。これが終われば一段落なのですが……
取り敢えず筆記試験が終わりました。次は面接です。
「飛鳥、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ橋本大学でもさほど問題無かったからたぶん大丈夫だよ」
私は自分に言い聞かせるように言いました。たぶん大丈夫でしょう。
そして、全ての試験が終了し、あとは結果を待つだけです。今までやって来た事をすべてやりつくしました。でも、もし橋本大学が駄目だった場合一條大学の後期試験の勉強も必要になります。
「飛鳥、明日の合格発表行くでしょう」
「えっ、合格発表?」
玲華はちょっと呆れ顔です。
「何寝ぼけてるの? 橋本大学の合格発表!」
「あっ、うん…… でもネットでも見れるんだよね!」
「まあ、そうなんだけど合格発表はやっぱり見に行くもんでしょう」
「うん…… そうだね」
なんとなく心配です。本当はひとりでこっそりネットで見ようと思っていたのですが…… まあ、私立だし、大丈夫だと思うけど…… もし、玲華だけ合格してたら…… 凄くヘコむだろうなぁ……
合格発表の朝、瑞稀が迎えに来てくれました。
「飛鳥行こうか?」
「うん」
「それじゃ駅まで送ろうか?」
姉がそう言って車の準備をします。
「お姉さん車持ってるんだ! 良いな」
などと瑞稀が言います。
「まあ、私達もそのうち必要になるだろうけど、その前に免許を取らないとね」
そんな話をしながら、姉に送ってもらいます。
「お姉ちゃんありがとう」
「ううん、学校まで送れなくてごめんね」
「駅までで充分だよ」
そう言って姉と別れ電車で橋本駅へ向かいます。
「お姉さん親切だね」
まあ、瑞稀はあまり姉の事は知らないからね……
「最近、車に慣れて来て運転が楽しくて仕方ないみたいなんだ」
「でも、それって便利だよね」
瑞稀の一言が確かにと思えるかも…… そう話している間に橋本駅到着です。
「おはよう、飛鳥、瑞稀」
「玲華、おはよう」
「いよいよ、第一関門だね」
瑞稀は気合充分のようです。
「うん、それじゃ瑞稀あとでね!」
私と玲華はそう言って駅北口のバス停へ行こうとした時……
「えええっ! 一緒に来てくれないの?」
なんて事を瑞稀が言い出します。
「だって、私達は朝日山キャンパスの方だから」
私がそう言うと瑞稀はちょっと泣き出しそうな感じでした。
「分かった、分かった仕方ないな」
玲華がそう言って、まずは三人で長田キャンパスの方へ瑞稀の合格発表を見に行きます。まあ、長田キャンパスは駅南口から徒歩三分だから近いけど、まったくそれなら久美や玲奈と行けば良かったのに…… しかし、瑞稀はキャンパスに近付くにつれ黙り込んでしまいます。大丈夫かな…… 長田キャンパスに到着です。
「ほら瑞稀、早く見て来なさいよ」
玲華に言われ瑞稀が……
「うん……」
心細そうにひとり歩いて見に行きますが…… まったくもう!
「ほら、一緒に行ってあげるから」
ちょっと見てられなかったので私は瑞稀と一緒に試験結果を見に行きます。
「受験番号は?」
「22152だけど……」
私は瑞稀の番号を探します。
「22145、22147、22148、22151、22152! あった!」
「あったよ瑞稀!」
「あっ…… よかった」
まずは瑞稀に春一番が吹きました。瑞稀はあまりの嬉しさに今にも泣き出しそうな雰囲気です。
「さあ、早く入学案内もらって来なさい」
「あっ、飛鳥?」
「えっ、久美、玲奈?」
「なんで飛鳥がここにいるの?」
「だって、瑞稀がひとりで見るのが嫌だって言うから」
「飛鳥の結果は?」
「瑞稀を優先したから今からなんだけど……」
「それじゃ、みんなで見にいこうよ」
久美がまた余計な事を……
「あっ、私は大丈夫だから」
そう言って玲華と一緒にまずは橋本駅へ向かいますが、その後ろから瑞稀と久美、玲奈と続きます。なんでこんな事になったんだろう?
「ねえ飛鳥、もしこれで落ちてたら……」
「玲華、言わないで…… それは考えたくない」
そんな事をコソコソ言いながら駅まで戻って来ました。朝日山キャンパスまでは歩くにはちょっと遠いので大学病院行きのバスに乗ります。
「あの二人は二年前のクリスマスで一緒だった子よね」
「うん、中学まで一緒だったから」
「飛鳥は中学でも良い友達がいたんだね」
玲華と二人話しながら駅北口からバスに乗ります。
「朝日山キャンパスって結構離れてるのね」
「大学病院の隣だからね、でもバスの本数はかなりあるよ。各方面からも大学病院行きのバスがあるみたいだしね」
そして、大学病院玄関前に到着です。大学病院前はバスターミナルみたいに広いです。
「ここまでバスが来てくれると病院を利用する人は便利だね」
「うん、学生は隣まで歩かなきゃ行けないけどね」
私達はやっと橋本大学医学部に到着です。
「飛鳥大丈夫? ついて来ようか」
「大丈夫だよ、瑞稀じゃないんだから」
それにもし落ちてたら恥ずかしいじゃん!
そして、私の受験番号を探します。
「39539、あるかな……」
私はひとつずつ番号を探します……
「あっ…… あった!」
私にも春一番が吹きました。
「やったね! おめでとう」
「えっ」
いつの間にか私の背後には瑞稀、久美、玲奈がいました。
「やったー、合格だ!」
私は両手を上げて喜びます。あっ、玲華は?
「玲華、どうだった?」
「あったわよ!」
玲華はちょっと余裕の表情です。
「うん、やったね、おめでとう!」
「ありがとう」
取り敢えず橋本大学は合格を頂きました。
「あっ、電話だ! もしもし……」
『飛鳥さんおめでとうございます!』
「えっ、なんで知ってるの?」
『合格発表をネットで見ましたから』
「えっ、恵美子ちゃん? 私の受験番号知ってたの?」
『一度教えてくれたじゃないですか』
「うん、でも五桁の番号よく覚えていたね」
『飛鳥さんの番号は39539ですよね』
「うん、そうだけど……」
『サクラ咲くで覚えやすかったから』
「あっ、そう言われればそうだね」
『今、分かったんですか?』
「うん、そんな余裕なかったから」
『あっ、授業が始まるから……』
そう言って電話は切れました。
「恵美子ちゃんなんだって?」
「私の受験番号を覚えてたみたいでネットを見て合格してたからって」
「ふーん、愛されてるのね! 良いなぁ」
そう瑞稀が言いますが、瑞稀だってとっても仲が良いじゃない。
「でも、タイミングが良かったね! これが飛鳥が発表を見る前だったら……」
確かにね……
「玲華も甲斐先輩に連絡しなくて良いの?」
「うん、あとで逢うから…… それにしてもよく覚えてたね恵美子ちゃん」
「語呂が良かったみたい39539なんだけど」
「サクラ咲く、か…… もう合格が決まっていた様な番号だね」
「うん」
このあと、母に連絡をしました。母は仕事中だったので一言おめでとうと言ってくれただけでしたが、気持ちはとても伝わりました。
その後クリニックにも行きました。
「あら、飛鳥さんどうしたの?」
看護師の華奈さんが体温計を持って待合室にいました。
「美彩先生に、ちょっと……」
「えっ、具合でも悪いの?」
いや、華奈さんそうじゃないから……
「合格発表の帰りなんです」
「あっ、ちょっと待ってね」
華奈さんはそう言って診察室へ…… いや、華奈さんそんなに慌てなくても……
「飛鳥さんどうだったの?」
美彩先生が慌てて診察室から出て来ました。そんなに慌てなくても良かったのに……
「お陰様で橋本大学医学部医学科に合格しました」
「うん、おめでとう! これで私の後輩だね」
「いえ、まだ、北山大学の結果次第ですから」
「あら、もう橋本大学で良いんじゃない!」
美彩先生は笑顔でそういいます。
「美彩先生、それは可笑しいでしょう」
「あっ、いけない患者さん! 飛鳥さんちょっと待っててね」
そう言って先生は診察室へ戻りました。ひょっとして患者さんがいたの?
その後上杉先生も帰って来て改めて二人から祝福してもらいました。これで後期試験は受けずに済みました。あとは二次試験の結果次第です。
取り敢えず、橋本大学医学部に合格することが出来ました。後は北山大学ですが……
次回は卒業式です。




