49 私達の受験
お待たせしました49話を更新しました!
化学部を引退した飛鳥達は本格的に受験に備えます。大学共通テスト前にクリスマスとお正月の二つの誘惑がありますが……
私は今、何処にいるんだろう? ここは緑がいっぱいあります。森の中かな? あれ、目線がやけに低いような、もしかして私、小さくなっている!
「飛鳥、森の北側に食品貯蔵庫があるんだって早く行こうよ」
「えっ、瑞稀がねずみに?」
「何言ってるの、飛鳥だってねずみでしょう」
えっ、私達はねずみになっている? 訳が解りません。ここは…… とにかく私は瑞稀に言われるまま食品貯蔵庫へ走ります。森の中を走るのって気持ち良いよね!
「飛鳥、この先のちょっと開けたところだよ」
「あっ、玲華!」
「あっ、飛鳥! そんなに急いでどこ行くの?」
玲華もねずみなんだ……
「あっ、飛鳥危ない!」
羽音をたてずフクロウが私に向かって来ます。
「うわーっ、フクロウだ! ちょっと本当にどうなっているの?」
私はフクロウに捕まりそのまま上空へ……
「えっ! 恵美子ちゃんがフクロウ? 私、恵美子ちゃんに食べられちゃうの?」
私は恵美子ちゃんの足にガッチリ掴まれたままです。
「飛鳥!!」
地上では瑞稀と玲華が上を見ながら叫んでいます。
「恵美子ちゃんちょっと痛いんだけど…… いったい何処へ連れて行くの?」
その時、フクロウ恵美子の足がちょっと緩んだ様な……
「ふうっ、ちょっと楽になったけど、恵美子ちゃんこんなところで離さないでよ!」
しかし、私の願いは虚しくフクロウ恵美子は足の力を緩め私は上空から地上へ真っ逆さまに落ちてしまいました。
「うわああああ…… はっ!」
私はベッドから落ちて目が覚めました。夢、良かった! でも、不吉な夢だ…… それにしても瑞稀と玲華と私がねずみなのに何故恵美子ちゃんがフクロウ? 何故私が襲われるの? でも、恵美子ちゃんに食べられるのなら…… 私、ひょっとして赤面してるかな? ちょっと顔に熱を帯びてるような…… 私は両手で頬を押さえながらそう思いました。
さて、今から学校へ行きます。季節は冬を迎え街ではクリスマスソングが流れています。高校生になって三度目のクリスマス…… でも今年はそんな事言ってる場合じゃなかった。年が明ければすぐに大学共通テストです。ここは何とか決めておかないと…… あっ、メールです。
『飛鳥さん、息抜きにクリスマスをしませんか? 美彩先生と一緒にケーキを作るので食べに来てくださいね!』
フクロウ恵美子…… いや、今年はそんな事してる場合じゃ…… でも、最近は学校行って、図書館で勉強して、個別教室で勉強して、家でも勉強してとちょっと息が詰まってます…… ケーキを食べるだけなら良いかな……? でも、今朝の夢が気になるな…… 取り敢えず『気分転換のため少しだけ行く事にします』と返信しました。はあ、私って本当にこういうのに弱いなぁ。
教室へ入るとみんな勉強しています。玲華もやっています。
「おはよう」
「おはよう、飛鳥! この後、英語の小テストがあるんだって」
「えっ、だからみんな勉強してるの?」
「うん」
私は顔をしかめて俯きます。
「うわ、最悪」
その後、先生が来てテストが始まります。テストは十五分くらいで終わり、自己採点です。まあ、七割くらいは出来たかな…… これも美彩先生のおかげかな!
「飛鳥、今日も個別教室行くの?」
「うん、行くよ! 今、共通テスト対策の勉強をずっとやってるから」
「そう、何時から?」
「五時だよ」
「それじゃ、放課後図書館へ行かない?」
「良いけど」
「私も現役医大生に家庭教師をお願いしたんだけど七時からだから」
現役医大生ってまさか、甲斐先輩じゃないよね?
「そうなの、どんな人?」
「えっと、髪はセミロングで結構可愛いくて、赤いメガネを掛けていてカジュアルなシャツにジーンズで……」
「女の先生?」
「うん、そうだけど…… どうかした?」
「ううん、甲斐先輩にお願いしたのかと思ったから」
玲華はちょっと赤面して可愛いです。
「真司が先生だったら勉強にならないでしょう!」
「えっ、なんで?」
ますます玲華の顔が赤くなり……
「ちょっとは察しなさい!」
玲華は俯いてしまいました。甲斐先輩となにかあったのかな? でも、赤くなった玲華はやっぱり可愛い!
放課後、私は化学室を覗きました。ちゃんと活動してるかな?
「あっ、飛鳥先輩!」
雛乃ちゃんが一番に気づいて私の側へ来ました!
「どうかしたんですか?」
「うん、ちょっと通り掛かったから、みんなどうしてるかなと思って」
「大丈夫です。みんな楽しくやってますよ」
そう言うのは鈴夏ちゃんです。
「飛鳥さん、クリスマス楽しみにしてて下さいね」
恵美子ちゃん、それはみんなの前では…… みんなはまた、部活へ戻りました。私はそれを見届け玲華が待つ図書館へ行きます。図書館に着くとそこには玲華と瑞稀、史華と徳永さんがいました。
「みんな一緒だったんだ」
「飛鳥、どこ行ってたの?」
玲華が一言。
「うん、ちょっと化学部に」
「恵美子ちゃんに逢いに行ってたんでしょう」
瑞稀がそんな事を…… まあ、半分は図星だけど、半分は違う。
「雛乃ちゃん達がちゃんとやれてるかなと思って……」
「雛乃ちゃんか、飛鳥の事結構慕っていたもんね」
瑞稀はその辺よく解っているなぁ。
「大丈夫だったでしょう!黒鉄君と悠香ちゃんがちゃんと仕切っているんだから」
玲華の言う通りです。
「みんな仲良く活動してたよ」
「飛鳥、心配だろうけど、もうあの二人に任せないと駄目だよ! 私達は引退したんだから」
史華にそう言われてしまいました。そうだよね、史華だって本当は黒鉄君に逢いたいと思っているんだろうけど…… その後、私達は閉館時間まで一緒に過ごしました。
冬休みになりました。世間では昨日がクリスマスイブで楽しい時間を過ごしたんだろうな…… 今日はクリスマスです。もちろん私にはそんな事は関係ありませんが、美彩先生と恵美子ちゃんが、折角ケーキを作ってくれてるので、ちょっとだけ顔を出します。それくらいならバチは当たらないでしょう。
「こんにちは!」
「いらっしゃい飛鳥さん」
「お邪魔します」
「あっ、飛鳥さんだ!」
そう言って私にピトッと密着して来る恵美子ちゃんです。
「あらあら……」
美彩先生に呆れられたかな……
「飛鳥さん、これ美彩先生と二人で作ったんですよ」
そこには美味しそうな苺のショートケーキがワンホールあります。
「飛鳥さん、全部食べるまで帰さないからね!」
美彩先生がコーヒーを入れながらそんなことを……
「先生、今の私だったらワンホールくらい余裕ですよ! 勉強で頭を使い過ぎてますから」
美彩先生は苦笑しながら……
「やっぱり、あとワンホールあった方が良かったかしら」
なんだか美彩先生が怖い事を……
「これって本当に手作りなんですか?」
「そうよ、恵美子ちゃんと二人で朝早くから作ったんだから、ねえ恵美子ちゃん」
「はい」
「手作りしたのは僕も保証するよ。おかげで遅くまで寝てられなかったからね!」
そう言うのは上杉先生です。
「ちょっと、秀一さんは何もしてないでしょう」
眉間に皺を寄せ睨む美彩先生です。美彩先生も怒ったら怖いかも知れません。
「まあ確かに手伝ってはいないね、もし僕が手伝ってたらまだケーキは出来てないかも知れないからね!」
上杉先生はちょっと頭を掻きながらそんな事を……
「ところで、飛鳥君はちゃんと睡眠は取れてるかな?」
「はい、よく眠れていますよ」
「受験の事とかで悩んだりしてない、大丈夫かな?」
上杉先生はちょっと心配しています。私も不安な事が……
「上杉先生、ちょっとだけ聞いてもらっても良いですか?」
そう言って二人でリビングを出て上杉先生の部屋へ移動します。
「どうしたの、恵美子ちゃんの事かな?」
私はちょっと驚いた様に上杉先生を見ます。
「上杉先生はお見通しなんですね……」
「まあ、仕事だからね」
上杉先生はそう言って微笑みます。
「今はまだ、受験の事で頭がいっぱいなのでいろいろ考える余裕もないんですけど、受験が終わったらと思うと……」
「一気に気持ちが耐えられなくなる……?」
「はい、受験が終わって余裕が出れば…… 恵美子ちゃんはいなくなっちうんだって……」
私は自然と涙が出てしまいました。
「あれ、どうしたんだろう…… 急に……」
そんな私を上杉先生は優しく抱きとめてくれました。
「大丈夫、その気持ちは普通の感情だから、そこで涙が出ない方が可笑しいんだからね、泣きたい時は泣いていいんだよ、ただ恵美子ちゃんも同じ気持ちだと思うし、それでも彼女は笑顔で頑張っているから飛鳥君も笑顔で見送ってあげないとね!」
「はい」
「あと、いつも言ってる事だけど精神的に辛い時はいつでも言ってくれよ、僕でも美彩でもいいからね!」
「はい、ありがとうございます」
「さあ涙を拭いて、まずは受験が優先だからね!」
「はい」
そういう事で、まずは受験です。その後私達はリビングへ戻り手作りのクリスマスケーキを食べて、上杉先生夫妻と恵美子ちゃんと一緒に細やかなクリスマスを過ごしました。
年が明けてお正月です。しかし私は、お節を少し摘んだだけで受験勉強をしています。クリスマスにちょっと息抜きをしたので不安なところがあるからです。本当なら初詣をして合格祈願をと思ってましたが…… 別に良いかな……
そんな事で、冬休みも終わりいよいよ大学入学共通テストですが、今日の天気は雪です。よりによってこの日に降らなくても…… 取り敢えずバス停に行きますが当然のようにバスは来ません。やばいです。試験会場に連絡すると、受験者はまだ誰も来ていないし、電話対応でバタバタしているようです。試験開始時間を遅らせて対応してくれるようですが無理な場合は追試になるかも知れません。
「飛鳥、乗って! 試験会場まで送るから」
姉が車にチェーンを巻いて来てくれました。
「お姉ちゃん大丈夫なの? 雪道は初めてでしょう」
「ゆっくり走れば大丈夫よ、それにこういう時に乗らないと経験出来ないでしょう!」
「ありがとう、お姉ちゃん」
車は取り敢えずゆっくり進みますが、すぐに渋滞で身動きが取れなくなりました。
「駄目だ! 全然動かない……」
「しょうがないよ、この雪じゃ」
少し動いては止まりまた少し動いては止まりを繰り返します。しかし、なんとか図書館の側まで来る事が出来ました。
「お姉ちゃんありがとう! あともう少しだから歩いて行くよ」
「うん、その方が早いかな、飛鳥気をつけてね!」
「うん、ありがとう」
そう言って試験会場へ歩き出します。しかしこの積雪なので思うように歩けません。でも、なんとか試験会場まで辿り着きました。受付をするために係のところへ行きますが、数人の受験生がそこにいます。
「あの、受付をお願いします」
すると係の人から……
「すみませんが今日のテストはもう始まりましたので……」
えっ! それじゃもう受験出来ないの? そう思った時係の人が案内の紙を差し出し説明を……
「今月三十、三十一日に追試をしますのでその日に改めてお願いします」
という事でした。
「飛鳥!」
「えっ! 玲華」
「飛鳥も間に合わなかったんだ」
「うん」
「飛鳥、帰るなら送るけど」
「うん、それじゃお願い」
私達の大学入学共通テストはとんでもない幕開けになりました。まさか雪が積もるとは…… 共通テストが追試になるとは…… 考えられない事態です。
一月三十日私達は共通テストの追試を受けます。
「瑞稀も追試になったんだね」
「そりゃあれだけ雪が積もれば外には出たくないしね!」
「えっ、試験会場まで行かなかったの?」
「うん、会場に連絡したら追試も出来ますからということだったからそれじゃお願いしますって言ったんだけど」
なるほど、瑞稀は賢い選択をしたんだね! まあ、波乱含みではあるけど大学入学共通テストは無事終わりました。これで判定は出るでしょう。次は前期試験です。今度は何事も起こりませんように……
またもや試験当日のアクシデントです。共通テストから波乱含みになるとは…… しかし、何とか追試を受ける事が出来て一安心です。この後はスムーズに行きますように!




