38 新部長とバイオディーゼル班の今後
お待たせしました! 38話を更新しました。今回は新部長さんが選出されます。果たして誰が新部長に選ばれるのでしょうか?
修学旅行も夏休みも終わり、九月です。今月いっぱいで三年生は引退になります。そこで新しい部長を選任する訳ですが…… 旅行中にあった謎のメール、よく解りません。甲斐部長の話では、玲華に部長を頼めないだろうか? というつもりだったらしいんですけど…… 一方副部長の考えは北野さんがクラスとしても二組だし成績も優秀なので…… という安易なもので実際には何も決まっていなかったようです。部長と副部長で話し合いとかしなかったのかな? どっちにしても旅行中にメールしなくても良かったんじゃない?
まあ、とにかく旅行中にも話した通り二年生で話し合おうよ! ということで化学準備室に集まりました。
「それじゃ、この中で部長になりたいという人はいる?」
玲華がそう訊いていますが……
「その前に、何故恵美子ちゃんがいるの?」
「えっ! いつの間に」
みんなが恵美子ちゃんに注目しています。
「えへ、バレちゃった!」
バレちゃったじゃなくて、そこにずっといたでしょう……
「恵美子ちゃん、今日は大事な部長選出の話し合いだから席を外してもらってもいい?」
私の言葉に恵美子ちゃんは眉をひそめ……
「一年生にとっても部長選出は大事な事ですよ! 本格的な指導を誰からしてもらうことになるかが決まる訳ですからね! だから一年生代表で来ました」
私はちょっと困った表情をして……
「いや、だから恵美子ちゃん……?」
「飛鳥、もういいよ! しょうがない」
玲華はそう言って、ちょっと微笑みました。
「ただし、口出しをしないように、良いわね!」
玲華にそう言われ……
「うーん…… はい」
取り敢えず返事はありました。みなさん、ちょっと苦笑してますよね……
「それじゃ、気を取り直して部長になりたい人はいる?」
玲華がそう訊いたあと、沈黙を破ったのは……
「そんな人いないでしょう」
恵美子ちゃんが小声でポロリとそんなことを……
「恵美子ちゃん、口出しするなら退出してもらうわよ!」
そう注意された彼女は慌てて両手で口を塞ぎました。まったくもう……
「今度言ったらつまみ出すからね!」
真顔の玲華にそう言われ恵美子ちゃんは両手で口を塞いだまま、うん、うん、と頷きました。
玲華は気を取り直して……
「それじゃ改めて推薦で決めましょう! 私は北野さんが良いと思うんだけど……」
すると北野さんからは……
「私は玲華が良いと思うけど…… 今だってこの場をキチッと仕切ってるしね!」
確かにそうだよね、でもなんだか二人でやり合ってない?
「徳永さんはどう?」
「私は北野さんにお願いしたいと思ってます」
それを聞いた玲華は、ちょっと安心の様子、でも北野さんはちょっと複雑そう……
「飛鳥は誰が良いと思う?」
そう訊かれて私は……
「私は玲華が良いと思うんだけど」
私はそう返事をしました。玲華、そんな目で見ないでよ!
「瑞稀は?」
玲華から訊かれ瑞稀は、一瞬息を呑み……
「私は…… 飛鳥が良いと思うんだけど」
えーっ、なんでそこで私なのよ!
「それじゃ私と北野さんで二票ずつだね! どうしようか?」
溜息まじりの玲華です。大体瑞稀が私を推薦するから可笑しくなるんだって! 最後に訊いているんだから空気読んでよね! と私がひとりでブツブツ言っているときでした。『コンコン』とノックをする音と同時に準備室のドアが開いて甲斐部長が入って来ました。
「どう! 決まったかな?」
みんなは、甲斐部長を見て首を横に振ります。
「推薦で決めれば良いんじゃないかな? 五人なんだから」
そう言いますけど推薦にして決まらないから……
事情を聞いた甲斐部長はちょっと困っているみたい。
「なるほど、斎藤さんが今村さんに票を入れたから玲華と北野さんの二票ずつになったのか…… あれ、どうして君がここにいるのかな?」
甲斐部長が恵美子ちゃんに気付きました。
「一年生代表だそうです」
玲華がひと言で説明します。
「なるほど、じゃあ君は誰が良いと思う?」
甲斐部長が恵美子ちゃんに訊きました。
「私は、飛鳥さんが良いと思います」
うわーっ、これじゃまた、二票づつで三人並んじゃったじゃない! 恵美子ちゃん狙って言ったでしょう。
「うーん、それじゃ、僕の票をいれよう! 玲華にお願いしても良いかな?」
玲華はひとつ溜息を吐いて……
「しょうがないわね!」
そう言って部長は決まりました。
「それじゃ、副部長なんだけど……」
玲華が話を続けます。北野さんは息を呑みます。たぶん指名されると思ったのでしょう。
「飛鳥、お願い出来る?」
玲華は私に助けを求めたように聞こえましたので……
「はい」
と、ひと言だけ返事をして了承しました。
「それじゃ、これで決まりだね!」
これで甲斐部長も一安心のようです。その後、化学部の運営とか部費や予算のことで話がありました。
「でも、本当のことを言うと君達二人に決まったから僕としては話しやすくて良かったよ! 有難う」
なんだか甲斐部長にお礼を言われてしまいました。あれ、なんだか化学室が騒がしいんですけど……
「どうしたの?」
化学室に戻り側にいた一年の朝霧珠里さんに訊きました。
「黒鉄君が……」
珠里ちゃんは中庭を指差し頬を赤く染め、それ以上は言えないという感じです。私は化学室の窓から中庭を見たときでした。北野さんと一年の黒鉄悠真君が抱き合っています。恵美子ちゃんの話だと準備室から出て来た北野さんに声を掛け手を握り中庭へ連れて行ったらしいんですけど…… 北野さんと黒鉄君が戻って来ました。どうやら私達に気付いたみたいです。
「あっ、飛鳥ごめんね! 変なとこ見られてちゃったみたいね…… 黒鉄君に根負けしちゃった」
あとから聞いた話では黒鉄君は入部当初から北野さんの事が好きだったみたいで、今回部長選出から外れ、元気なく戻ったところで声を掛けられ、手を握られて半ば強引に中庭へ連れて行かれて告白されたみたいです。その後、彼女の手を引き寄せ二人抱き合ったと言うことでした。黒鉄君は真面目な生徒だと思っていたけど結構大胆だね! 青春しちゃって……
「あーあ、良いなー、私も抱きしめて欲しい!」
私の顔を見ながらそう言う恵美子ちゃん……
「恵美子ちゃんはいつも私に抱き着いて来るでしょう」
「だから、たまには抱きしめて欲しいんじゃないですか」
ピトッと密着してくる恵美子ちゃんだけど……
「私は人前では恥ずかしいから後でね!」
そう言ってその場から離れました。
化学部の役員も決まり三年生は引退しました…… ちょっと淋しくなりましたけど、来年春には新入生が新たに入って来てくれるでしょう!
「如月部長はいるか?」
突然、古澤先生が慌てて化学室に入って来ました。
「先生どうかしたんですか?」
玲華が訊いています。
「いや、君達が作ったバイオディーゼルなんだけど城南市が貰ってくれるそうなんだ」
私も玲華も顔を見合わせびっくりしました。
「あの、どういう事でしょうか?
私達が訊くと、城南市ではバイオマス事業が進められていてゴミ収集車や市バスの一部でバイオディーゼルが燃料として使用されているそうです。うちの高校のクラブ活動でもバイオディーゼルを作っていますよと、理事長先生が市の関係者に話した事で顧問の古澤先生にこの話が来たみたいです。
「まあ、そう言う事でバイオマス事業課の職員さんにうちのバイオディーゼルを見せたら、かなり精度が良いと言われてな……」
「それじゃ、あのバイオディーゼルはもう無いんですか?」
私が訊くと……
「いや、それがたったの二十リットルしか無いのに、市の方に頂けるのだから市政の新聞にも載せたいという事で改めて場を設けるらしい」
なんだか話が大袈裟になってるようなんですが……
「先生、城南市から折角そういう話があるのなら数量をもう少し増やしても良いですか?」
玲華部長がそういうことを言うので先生も折角ならという事でバイオディーゼルをもう少し追加で作ることにしました。
「今村が始めた活動が凄いことになったな!」
「はい」
そう返事をしたものの先生に言われなんとなく恥ずかしさと緊張が押し寄せて来ました。でも、これで恵美子ちゃんや悠香さんも、もう少しバイオディーゼル作りを体験出来ます。
バイオディーゼルを城南市へ寄贈する日が十二月の最初の土曜日になりました。それまでにあとどれくらい作れるか分かりませんが、折角バイオディーゼル班になってくれた恵美子ちゃんと悠香さんにも思う存分作ってもらいたいと私は思いました。
「こうやって飛鳥さんと部活が出来て嬉しいです」
「そうだね! 恵美子ちゃん達はほとんどやって無いもんね」
「でも、市に寄贈したらもう終わりなんですよね?」
「うん、その後はどうしようか?」
私がそう言うと……
「宇宙研究をしませんか?」
そんな事を言う恵美子ちゃん!
「宇宙?」
「はい、宇宙といっても星座とかISSとかの研究なんですけど……」
「どうするの?」
「ISSは見える時と見えない時があるので観測してどのくらいの周期でみえるのか? とか星座はその季節の星座の観測とか」
「それ、面白そうね! 私も一緒にやって良い?」
「はい、バイオディーゼル班から宇宙観測班に変更したら良いですよ」
そんな提案を恵美子ちゃんからされました。この件はどうやら悠香さんも一緒に計画していたみたいでした。
バイオディーゼル寄贈の日、私達五人は市長さんにバイオディーゼルを手渡すところを何度もカメラで撮られました。一人ずつ市長さんと握手をしたところも撮影されました。その後ろから綺麗な女性の人が……
「彼女はバイオディーゼルバスの運転手さんです」
私達は女性のバスの運転手さんとも一緒に写真を撮りました。
「女性のバスの運転手さんって大変ですよね!」
瑞稀がそう訊いています。
「そんな事ないわよ! 慣れれば楽しいわよ」
そう言われましたけど私達はその女性のことを格好良いなと思いました。最近はよく女性の運転手さんは良く見るようになりましたからね!
「あなた達が作ったバイオディーゼルは大切に使いたいと思います」
彼女はそう言って私達ともう一度握手をしたあと寄贈会は終了しました。これで私達のバイオディーゼル班の活動も終了です。今後は恵美子ちゃん達と一緒に宇宙観測班として研究をします。
新部長も決まり、バイオディーゼル班から宇宙観測班に新たになった飛鳥達の今後をお楽しみ下さい!
今回週末にはちょっと早いですけど年末年始の都合で特別更新が出来ると思いますので、あと2話くらいは年始に更新出来るかな……? お楽しみに!




