34 それぞれの成果
お待たせしました34話を更新しました。
文化祭初日のお昼、食事休憩も終わり玲華と交代です。私は充電スポットの方へ行きました。相変わらず数人の人がスマホの充電中です。
「玲華、交代だよ!」
私に気付いた玲華は……
「恵美子ちゃん達は?」
「向こうはまだだよ」
「それじゃ、恵美子ちゃん達を先に休ませた方が良くない?」
「うーん、そうだね……」
確かに一年生組を先に休憩させるべきかな? 私は先に休憩したけど……
「こっちは僕が見てるから玲華も斎藤さんも一緒に休憩に行って来ていいよ、今村さんは一年生組の交代を頼むよ!」
そう言ってくれたのは甲斐部長でした。
「はい、分かりました」
あっ、でもお爺ちゃんがいた!
「お爺ちゃんお昼は?」
そう言ってお爺ちゃんの側へ行きます。
「ん! どうした?」
祖父は車の後ろの席を畳んでお弁当を食べていました。
「お弁当持って来てたの?」
「うん、ワシが勝手に出歩くのもな、認知症の爺さんがうろついていると思われても困るからな」
そう言って祖父は笑っていました。でも、腕には来校許可の腕章があるので変に思われることはないと思いますけど…… その後私は恵美子ちゃんのところへ行きました。
「恵美子ちゃん、秋野さん交代しようか!」
私が声を掛けると二人から……
「飛鳥さんは食事は何処に行ったんですか?」
突然訊かれました。
「えっ、私のクラスの喫茶に行ったけど……」
「そうですか! やっぱり違うんじゃない」
秋野さんが恵美子ちゃんに何か言ったのかな?
「さっきの先生方は一緒じゃなかったんですか?」
「ううん、私は一人だったけど……」
あの二人は、今頃は喫茶の方にいるんじゃないかな?
「それじゃ私は焼きそばかなんか買って済ませようかな」
そう言って私に手を振って休憩に行く恵美子ちゃんでした。なんだったんだろう?
「飛鳥、元気そうね」
背後から声がしたので振り返ると久美が来ていました。
「久美、来てくれたんだ!」
「もちろん、匠君と玲奈も来てるよ」
久美の後ろから匠君と玲奈は仲良く手を繋いで来ています。
「飛鳥、久しぶりだな!」
「相変わらず仲が良いわね」
ちょっと顔を赤く染める匠君です。
「匠君、五千メートル四位だったんだって?」
「うん、あと少しで表彰台だったんだけど…… 来年はもっと良い成績を残せる自信が付いたよ」
「久美も、五位だったんだよね」
玲奈は匠君と手を繋いだまま言っています。
「私の場合は仕方ないよ上位四人はみんな三年生だったんだから」
久美はそう言いながらも自信に満ち溢れていました。
「飛鳥、この映像ってバイオディーゼルでエンジンを掛けたのか?」
「うん!」
「そうなのか? どうせなら文化祭でやれば良かったのに」
ちょっと残念そうに映像を見ている匠君です。
「匠君、中庭でバイオディーゼルを使ってエンジンを動かしているから見る?」
「えっ、やってるのか?」
「うん、発電機を回してスマホの充電スポットをやってるの!」
「あっ、見る見る、色々と見てみたい」
「でも、ちょっと待っててね! 今私がいなくなると、ここは誰もいなくなるから」
匠君は楽しそうに映像を見ています。こういうの好きだもんね!
「飛鳥、この映像なんかバタバタしてるみたいだけどなんかあったの?」
久美の問に私はテストの時の状況とバイオディーゼルの特性を説明しました。これって上杉先生達にも説明したような……
「飛鳥さんお待たせしました」
そう言って私にピトッとくっ付いてくる恵美子ちゃんです。
「あれ、食事は?」
「これですよ!」
三年生の教室で売っていた焼きそばを買って来たみたいです。
「美味しそうね」
「はい、三年生の先輩から君、可愛いからおまけしちゃうね!って言われたんです」
「えっ、そんな事言われたの?」
私はちょっとだけイラッとしました。これって嫉妬ですか……
「飛鳥さん、やっぱり気になりますか?」
ここで、うんと返事をするのも癪なので……
「私も買いに行ったらおまけしてくれるかな?」
私がそう言うと恵美子ちゃんからは……
「飛鳥さんがですか……」
ちょっと怪訝そうに私を見る恵美子ちゃんです。
「なによ、それ! ちょっと気になるんですけど……」
横で聞いていた匠君がちょっと慌てて……
「飛鳥は可愛いというより綺麗の方じゃないかな」とさらっと言うのでちょっと恥ずかしくなりました。何故か恵美子ちゃんも俯き加減です。
「私は、飛鳥は可愛いと思うけどなぁ」
久美まで何を言い出すのか…… こんなこと言わなきゃ良かった。
「ねえ、玲奈もそう思わない?」
「私も、おまけしてくれるかな?」
玲奈は人の事より自分の事が気になるみたい。
「私は、おまけ無いよね……」
そこで久美がボソッと言ってますけど……
「私は久美は可愛いと思うけどなぁ」
「それじゃ、行ってみようか私達も! ほら、飛鳥も」
玲奈から私も誘われたけど……
「あっ、私はいいよ、お昼は済ましているから」
私がそう言うと久美と玲奈は二人で行ってしまいました。
「やっぱりそういうのって女子は気になるんだな」
そう匠君に言われると恵美子ちゃんが……
「そりゃ女の子は気になりますよ! 異性からどう思われているかは男子は気にならないですか?」
匠君は首を傾げながら……
「あんまり気にならないかな、でも女の子からカッコいいとか言われれば嬉しいけどね」
「あら、なんの話?」
玲華と瑞稀が休憩から戻って来ました。恵美子ちゃんは玲華と瑞稀にも自慢しているようです。
「うふふ!」
玲華も瑞稀も笑って言いました。
「あの先輩は女子なら誰にでも言ってるよ」
そう玲華が袋を見せながら言いました。
「えーっ! そうなんですか?」
それを聞いた恵美子ちゃんは苦笑しています。それを見て私も可笑しくなりました。
「飛鳥さん知っていたんですか?」
ぷーうっと頬を膨らませる恵美子ちゃん!
「知ってる訳ないじゃない! 知ってるなら教えるよ、久美も玲奈も行っちゃったのに……」
「えっ! あの二人も行ってるの?」
でも、そう言っている瑞稀も買って来たんだね! どうやらそれが売りのようですが、女子は分かっていても嬉しいんだろうなと思いました。
「飛鳥、あとからで良いんだけど写真部の展示見に行かない?」
「うん、良いけど」
「関先輩、コンテストで金賞を取ったらしいよ」
そういうのは玲華です。
「あっ、それ私が言おうと思ってたのに」
瑞稀がちょっと頬を膨らませます。
「金賞って、まさか、遅くまで撮影していたあれ?」
「うん…… たぶん」
瑞稀は自分が受賞したみたいに喜んでいます。やっぱり嬉しいよね!
その後私は、匠君達と中庭へ行きバイオディーゼルを使ったエンジン始動の実演です。と言っても燃料を入れてエンジンを動かすだけですけど……
「本当にバイオディーゼルだけなんだな」
匠君は疑っていたのかな…… 燃料を入れるときにそんな感想を……
「ブルン、ブルン……」
「おっ! 凄い、エンジンが掛かった」
匠君、掛かるのが当たり前だから……
「匠君、排ガスがちょっと違うから」
「なにが、どう違うの?」
匠君と玲奈は排ガスが出るところへ……
「うっ! 天ぷらを揚げてる匂いがする」
「バイオディーゼルを使った時はこういう匂いがするんだよね」
そして、エンジンを一度切ってエンジンオイルをチェックします。
「うわ! 本当に綺麗なもんだな、さっきの映像とは全然違うぞ!」
「こっちが新品のオイルだよ」
「本当に変わらないね!」
匠君と久美は興味津々、玲奈はそこまでないようです。
「それじゃ、オイル交換とかは必要ないの?」
久美の質問にはお爺ちゃんが応えてくれました。
「オイルは汚れないけどオイルの粘度がサラサラになってくるから交換しないとエンジンが焼きついてしまうんじゃ」
お爺ちゃんはこの説明を今日は何回もしているみたいでした。
「瑞稀、写真部に行くなら行って来て良いよ」
玲華がいうので私と瑞稀と恵美子ちゃんの三人で見に行きました。
校舎の一番端の三階視聴覚室へ行くと、そこには関先輩の作品が飾られていました。夕方、空が赤く染まり少し薄暗くなったところに赤い鉄橋を渡る電車が光の線を引いて走っている写真です。見ていてそのときの光景が目に浮かぶようです。
「関先輩おめでとうございます」
私がそう言うと……
「ありがとう飛鳥さん! 遅くまで粘って撮影したかいがあったよ」
「でもこの写真、電車はブレてるのね」
そう言うのはもちろん瑞稀です。
「うん、ピントを鉄橋に合わせてシャッタースピードを少し遅くしたんだ。だから電車はブレて光の線を引いたんだ」
「へえー凄いんだね! そこまで計算してたんだ」
「でも、シャッタースピードと明るさの加減が難しくてね明るすぎたり、暗すぎたりで大変だったよ」
「だから何日も通ったんだね」
「うん、瑞稀にも淋しい思いをさせたね」
そう言いながらそっと瑞稀の肩を抱く関先輩です。
「うわー!」
恵美子ちゃんはそんな二人を見て口に手を当てて思わず声が出ています。瑞稀も照れてるけど見せつけられてる私達もちょっと恥ずかしいです。でも、見てるだけで幸せそうな二人でした。
今回はそれぞれの部活である程度の成果が出た発表みたいな回になってしまいました。




