32 お薬の秘密
お待たせしました! 32話を更新しました。今回は飛鳥に処方されたお薬が何だったのか判明します。今更ですが、この物語はフィクションです。
中間試験も終わり今週の土曜日から文化祭が始まります。今回は学校側から許可を頂き祖父にも手伝ってもらい発電機をバイオディーゼルで動かします。今回は今までの集大成というところでしょうか!
「飛鳥の家って本当にクリニックのそばなんだね」
そう言うのは玲華です。実はこれからクリニックに行って美彩先生に文化祭の日程を伝えに行きます。
「先生、こんにちは!」
「あら、飛鳥さんと玲華ちゃんいらっしゃい」
美彩先生は笑顔で招いてくれました。
「先生、いい加減ちゃん付けはやめてよ」
玲華が恥ずかしそうに訴えます。
「あら、良いじゃない! 玲華ちゃんのことは小さい頃から知ってるんだから」
「でも、飛鳥はさん付けなんだよね……」
「飛鳥さんは中学に入る前くらいからしか知らないからなんとなくね……」
「それって、やっぱり可笑しい!」
玲華は納得がいかないみたいです。それってなんとなく分かるかな!
「それで今日は二人でどうしたの?」
あっ、そうだった! 文化祭だ。
「美彩先生、今週の土曜日と日曜日は城南高校の文化祭なので来て下さい」
「あっ、そうか! もうそんな時期だね。今年はどうするの?」
「はい、私達が作ったバイオディーゼルで発電機を回してスマホの充電スポットを作ります」
「うん、それは面白そうね! 必ずいくわね」
美彩先生は確約が取れました。
「ところで飛鳥さん、あのお薬はまだ飲んでるの?」
美彩先生が思い出したように訊きます。
「はい、文化祭が終わるまでは…… ということでしたけど」
「そうなんだ……」
美彩先生はちょっと考え込んでいます。その時タイミング良く上杉先生も帰って来ました。
「ただいま」
「おかえりなさい。秀一さん」
「お邪魔してます」
「あっ、玲華ちゃん? と飛鳥君! 今日はどうしたの?」
上杉先生は玲華がいたのでちょっと驚いたようです。
「上杉先生もちゃん付けなんだよね、あれ! でも飛鳥は君なの?」
玲華はちょっと驚いたようですけど、私は最初の頃からそうだから……
「飛鳥君は…… 飛鳥君だよ! 小さいときに出逢って、その時からずっと…… うん」
上杉先生はなんとなく困ってしまったみたいです。
「と、ところで今日はどうしたの?」
上杉先生は話題を変えるためもう一度訊きました。
「今週末文化祭なんだって!」
美彩先生が一言……
「あっ、そうか!」
「ねえ、秀一さん文化祭は一緒に行きましょうよ」
そう言う美彩先生ってなんとなく可愛いと私は思いました。
「うん、そうだね」
どことなく上杉先生も照れてます。相変わらず仲の良い二人です。
「上杉先生、飛鳥のお薬はいつまで続けるんですか?」
玲華が訊きました。でもこれは上杉先生が私の体調を見て決める事だし……
「えっ、どうしてだい?」
「副作用がありますよね、朝から活動できるお薬はとくに」
玲華もやっぱり心配してくれてるみたいです。病院の娘だからある程度の知識はある訳だしね。
「それは僕が考えて処方しているから……」
またもや上杉先生は困ってしまい苦笑いです。でも、その時美彩先生が言いました。
「秀一さん、そろそろいいんじゃない! 充分過ぎるくらい結果はでてるでしょう!」
美彩先生は何かを知っているみたいですが……
「美彩は気付いていたんだね」
「ええ、最初に処方箋を見た時にね」
美彩先生はそう言って微笑みます。
「処方箋ですか? 別に変な事は書いてなかったと思いますけど……」
「飛鳥さんは処方箋を見たの?」
「はい」
そりゃ見るよね! 私が飲む薬だし、見ても薬の名前とかよく判らないけど……
「お薬の名前が書いてあったでしょう」
と美彩先生、確かにお薬の名前は書いてありますよ、処方箋なんだから……
「はい、えっと、たしか、ドコサヘキサなんとかと、エイコサなんとかって書いてあったと思いますけど…… お薬の名前はよく判らないので……」
玲華はそれを聞いて「飛鳥はそんな一般的なのを知らないの?」と言われてしまいました。
「これって一般的なお薬なんですか?」
「飛鳥さんはDHAとかEPAって聞いたことある?」
「あっ、それは知ってますよ! 青魚の成分が入ったサプリメントですよね」
「そう、それなのよ」
美彩先生は微笑んでいます。上杉先生は苦笑いです。
「あれって睡眠効果もあったんですか?」
私のその言葉を聞いてみんなは苦笑しています。
「飛鳥、そんな訳ないでしょう」
玲華は呆れ顔で私を見ています。
「あーあ、とうとバレちゃった! 文化祭が終わるまでは…… と思っていたんだけどな!」
「えっ、それじゃあのお薬はなんの効果も無かったって事ですか?」
私はようやく理解しました。
「いや、そんな事はないさ、実際に眠れるようになったでしょう」
「はい、そうですけど……」
「実はプラセボ効果というのを試してみたんだよ」
「プラセボ効果? ですか」
「うん、要するにこの薬を飲めば治るという思い込みな訳だ」
「でも、思い込みだけでそう簡単に治ったりしないでしょう」
私はちょっと疑っていますが……
「でも、新薬の治験とかでこの効果が出て困る事があるんだ。病が治ったのが薬の効果なのか、プラセボ効果なのかってね、だから沢山の人に治験に協力してもらって新薬の効果を実証しているんだけどね」
「思い込みで病が治るものですか?」
「まあ、全てがそうとはいかないけど、人には免疫力というものがあるからそれがこの効果でどう出るかだよね」
「そういう治療もあるんですね」
「まあ、お陰で飛鳥君に不要な薬を飲ませないで済んだから良かったよ! 効果が無ければ成分の弱い睡眠薬くらい処方しないと駄目かなと思っていたからね」
上杉先生の話では、私はちょっとした睡眠障害だったようで眠れないから朝からきちんと活動出来ないしそれが長引けば身体に怠さも出るという事でした。夜眠るときに私自身の性のことで今後の事とか、恵美子ちゃんのこと、それによる学校生活の事などを考え過ぎていたようです。そういうのもホルモン治療の副作用になるのかは分からないけど可能性があるということでした。
私は今回の事が一段落した事でぐっすりと熟睡する事が出来ました。
「おい飛鳥、起きろ朝だぞ!」
えっ、誰? 私はちょっと寝呆けています。
「おい、文化祭じゃろう」
「あっ! お爺ちゃん……」
祖父が私を起こしに部屋に来ていました。全く昔と変わりません。いつも一緒に行動する時はこんな感じで起こしに来ます。前回のエンジンテストの時もそうでした。
「お爺ちゃん、もう部屋まで来ないでよ。私は昔と違うんだから」
私は恥ずかしくてちょっと可愛らしいパジャマを布団で包み隠して言いました。
「あっ、すまんそんなつもりじゃ……」
祖父は慌てて目を隠し後ろを向きます。
「お爺ちゃん、着替えるんだから下で待ってて!」
私がそう言うと祖父は慌てて部屋を出て行きました。着替えが終わり下へ行くと姉も朝食を食べています。
「あれ、お姉ちゃん学校なの?」
私が首を傾げて言うと……
「そんな訳ないでしょう、文化祭よ」
「大学も今日なの?」
姉は溜息を吐いて……
「飛鳥の学校の文化祭を見に行くのよ」
「えっ! 来てくれるの?」
「まあ、ちょっと面白そうだからね」
「ありがとう」
私はちょっと嬉しくなりました。
「ところで飛鳥、私大はどこを受けるの?」
「うん、まだはっきりとは決めて無いけど橋本の医学部か一條の医学部にしようかなって……」
「そうなんだ、だったら橋本に来れば良いじゃない。あそこの大学は私大じゃ結構良い先生が揃ってるらしいよ」
「ふーん、そうなんだ」
「飛鳥だって折角なら良い先生から講義を受けたいでしょう」
「まあ、そうだね! オープンキャンパスとかないのかな?」
「高校にそういう話は来てないの? 夏休みはあると思うよ。模擬講義とかね」
「うん、そういうのは参加したいなぁ」
朝食を食べたあと……
「飛鳥、そろそろ学校へ行くぞ」
「ええ、もう行くの?」
「準備があるじゃろう」
「まだ七時半だよ! 文化祭は九時からだし、学校までは車で十五分くらいなんだから」
祖父とそういう話をしているとき恵美子ちゃんが来ました。
「おはようございます飛鳥さん」
「おはよう、あ! そうだ恵美子ちゃんも乗って行く?」
「なにがですか?」
恵美子ちゃんは首を傾げて訊きます。
「今日は発電機とかがあるからお爺ちゃんの車で学校に行くから」
「はい、お世話になります」
そう笑顔で返事をする恵美子ちゃんです。
そういう事で私達は祖父の車で学校へ行きます。恵美子ちゃんは相変わらず私にピトッとくっ付いて隣に座っています。
学校に到着して私は祖父の車を決められた中庭に誘導します。そして準備を始めました。
「おはようございます! 今日はよろしくお願いします」
古澤先生と甲斐部長が丁度シャボン玉の準備をしていました。
「あ、お世話になります」
そう祖父も挨拶をします。
「今年もシャボン玉をやるんですね」
「勿論やるよ! 僕の中ではこの研究は集大成だからね」
「そんな大層なものじゃ無いでしょう」
そう言いながら玲華も中庭に来ました。
「君達にもちょっとは手伝ってもらうからね!」
まあ、良いけど…… 化学室の動画上映の方はいいのかな……
準備も終わり文化祭が始まります。私は玲華と二人で発電機によるスマホの充電スポットにいます。今からバイオディーゼルを給油してエンジンを始動します。
「玲華、バイオディーゼルを持って来て」
ポンプを使ってゆっくり給油します。
「OK、準備完了!」
「お爺ちゃん、問題無い?」
「オッケーじゃ」
そして、エンジン始動のカウントダウンをしようとしたその時でした!
「キャーッ!」
女子の悲鳴です。何かあったのかなと見てみると男性がうつ伏せに倒れています。一緒に来てたと思われる女子が呼び掛けています。
「どうしたんじゃろうな?」
祖父も心配そうに見ています。
「大丈夫ですか? 聞こえますか?」
最初に動いたのは玲華です。すぐに駆けつけ声を掛けてます。
「飛鳥、手伝って仰向けにするから」
「うん」
私も駆けつけ仰向けにしようと手伝いますがちょっと無理。
「お爺ちゃん手伝って!」
そう言って三人で仰向けにしました。
「玲華、呼吸してる?」
「いや、してないよ」
私は直ぐに事務室にあるAEDを思い出しました。
「玲華、心臓マッサージ出来る?」
「うん」
「それじゃお願い! 私は事務室にあるAEDを借りに行ってくる。お爺ちゃん救急車を呼んで!」
「うん、分かった」
玲華は気道を確保して心臓マッサージを始めました。私はそれを見て事務室へと全速力で駆け出しました。
お薬の秘密も判り一段落です。文化祭も始まり今からという時誰かが倒れています。緊急事態です。飛鳥と玲華はどこまで対応出来ますか……




