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憧れのスカート  作者: 赤坂秀一
第一章 病気なの?
3/52

3 思春期

第三話が完成しましたのでお楽しみください

 小学校に入学するとき、私の事で学校側にはいろいろと配慮をして頂きました。同じ新入生とそのお世話をする六年生には普通に受け入れてもらえるように前もって話をしました。トイレとかは職員用を使用させてもらえることになり、今後着替えとかが必要な場合は保健室を使用させてもらえることになりましたが入学後、幼稚園が一緒だった友達や六年生の女子からも普通に……

「私達と同じ女子トイレを使えばいいのに」

 という嬉しい意見があったのでそういう事にしました。小学校に入学すればいろいろ問題があるだろうと思っていましたが、みんなが私のことを女の子として見てくれた事に私も母もとても感謝しました。なかには私の事を偏見の目で見る男子もいましたがそういう時は同じクラスの女子や匠君が守ってくれました。

 しかし、匠君の誘いで通うことになった柔道教室では思うようにいきませんでした。

「何故駄目なんですか?」

 匠君が柔道教室の武田先生に訊いています。

「匠君、君の言いたい気持ちは分かるけど飛鳥君を女子と一緒にする訳にはいかないんだよ」

「だから何故駄目なんですか」

「飛鳥君は見た目は女の子だけど実際は男の子だからだよ」

 武田先生は私の方を見ながら申し訳なさそうに言いました。

「でもその件は母から前もって話があっていると思いますけど……」

 私はつい口を挟んでしまいました。武田先生は少し困った表情をしています。

「実は、その事で協会側から話があって男子と女子を同じ立場にすることで問題があると指摘されどうにもならないんだよ」

「大人の都合ということですね」

 私と匠君はちょっとがっかりしました。

「先生、それじゃ私は柔道教室に入るのは辞めます」

 私がそう言うと先生は申し訳なさそうに……

「そうか、すまないな飛鳥君、男子柔道部は君のことを歓迎してるんだけど…… 駄目なんだよな」

「柔道着の下にTシャツを着ていいなら……」

 武田先生はまたもや俯いてしまいました。

「すまない、男子柔道はそれも出来ないんだよ」

 そう言って黙り込んでしまいました。

 しかし、私も折角柔道教室に来たのだからと思い先生に言いました。

「先生、誰かと対戦させて貰えませんか? 勿論Tシャツは着ますけど」

「それは構わないよ」

 今度は、私のお願いを俯いていた先生は簡単に了承してくれました。

「おい飛鳥大丈夫なのか?」

 匠君はちょっと心配そうですけど……

「大丈夫だよ」

 そう笑顔で答えました。

 その後、先生は私がそう言うのを想定していたようでひとりの生徒に準備をさせていたました。

「君の噂は聞いていたからここの教室で一番の生徒を呼んでいるからね」

 そして、試合の準備が整いひとりの男の子が試合場に現れました。現れたのは六年生の背の高い男の子です。

「先生、本当にいいんですか?」

 心配そうに男の子が訊いていますが武田先生は静かに頷くだけでした。

「お願いします」

 私がそう返事をした後、武田先生の「始め!」の掛け声で試合が始まりました。試合場の周りには他の部員達が六年生の圧勝だろうと試合を見ています。私はとにかく隙を見て相手の懐に飛び込み一本背負いに持ち込みたいけど相手もそれを警戒しているようでなかなか仕掛けられません。その時、相手が少し引いたのを見てそのまま大外刈りに持ち込もうと足をかけた時何かに躓き転んでしまいました。そこをすかさず寝技に持ち込まれそうになったので慌てて亀みたいに四つん這いになり丸くなりました。

「まて」

 武田先生の合図で仕切り直しです。なんとか助かったと思っていましたが「始め」の合図とともに今度は突進され私は仰向けに倒された瞬間、咄嗟に足を使って男の子の攻撃をかわしました。

「一本それまで」

「えっ!」

 私は不思議に思いました。私は倒れたけど負けてないのにと、すると男の子は仰向けになって倒れていました。これは偶然に巴投げのようになったみたいです。その後道場の周りは歓声に包まれました。

「おまえ凄いな」

 六年生の男の子は私の両肩に手を乗せ……

「一緒に柔道やらないか、もっと上手くなるぞ」

 そう言われた時でした。私は背中がゾッとして寒気を感じて……

「嫌! やめて!」

 そう叫んで男の子の手を払い除けました。男の子は呆気に取られ呆然とその場に立ち尽くしていました。その後、私は女子柔道に勧誘されましたがどっちにしても試合には出ることが出来ないみたいなので……

「偶に顔を出しますね」

 そう言って柔道教室を後にしました。


「それは災難だったね」

 その話を聞いた上杉先生が言いました。

「だって急に肩に手を乗せて来るんだよ。びっくりしちゃった」

「ということは、女の子の飛鳥君としてはちょっと衝撃的だった訳だね」

 笑いながら言った上杉先生を見て私は恥ずかしくなりました。

「あの、先生検査はいつぐらいからして頂けるんでしょうか」

 母は少しでも早く私の治療をしてもらいたかったようです。

「そうですね、検査はもう少し後でないときちっとした結果が出ないと思うんですよ」

「飛鳥が思春期になる前にホルモン療法とかして頂けるんでしょうか」

「思春期が始まったときは思春期を止める治療をしますので大丈夫ですよ」

 それを聞いた母は、多少不安なところもあったようですが少しは安心したみたいでした。


 小学四年生になると友達の様子が少しずつ変わって来た感じがします。私達の中では瑞稀ちゃんの胸が少しふっくらして来た感じがあり、他の友達にも思春期の兆候があるため、この頃から体育の授業は男女別に別れて着替えることになりました。私は保健室で着替えが出来る事になっていましたが「飛鳥は私達と一緒に着替えればいいじゃない」

 瑞稀を先頭にクラスの女子に誘われたので、その日から私は女子と一緒に着替える事になりました。この時私は、みんなにとても支えられてるなあと思いました。これはもう感謝でしかありません。


 私も六年生になった頃から少しずつ体の変化に焦りを感じました。私達の周りでは匠君の身体がひと回り大きくなり鼻の下には薄らと髭が生えたみたいで声のトーンもちょっと低くなった感じでした。久美ちゃんも玲奈ちゃんも少し胸がふっくらして大人っぽくなったみたいです。この頃の私は髪を肩より少し長く伸ばし、より女の子らしくしていましたが私も身体が少し大きくなり声も少し低くなったように思われたのでこのことを上杉先生に相談しました。

「先生、なんだか声が低くなったような気がするんですけど……」

「そうだね、そろそろ二次性徴抑制治療を始めないといけないみたいだね」

 それを聞いて私は嬉しくなりました。

「先生、本当に、本当にいいの?」

「はい、良いですよその為に経過観察をしていたんだからね」

 私はやっと女性らしい身体になれると喜びました。

「先生、胸も大きくなる?」

「え、胸は大きくならないよ」

「でも治療を始めるんでしょう」

「飛鳥君、治療を始めるのは二次性徴抑制治療といって思春期による身体の変化を止める治療なんだ。ホルモン療法とは違うんだよ」

「えーっ、そうなの」

「ホルモン療法は条件付で十五歳からと決まっているからね。でもそろそろ検査も始めないといけないかな認定が遅くなるといけないから」

「先生、いつから始めるの?」

 私は待ち遠しくて仕方がありません。

「今日は、お母さんは一緒じゃないの?」

「え、待合室にいますけど……」

「ちょっと呼んで来て貰っていいかな検査は両親の承諾が必要なんだよ」

「えーっ、本人が良ければそれでいいんじゃないの?」

 上杉先生は苦笑しています。

「それがいろいろと事情があってね、そうもいかないんだよ」

 私は待合室にいる母を呼びに行きました。

「あの、何か問題があったんでしょうか」

「いえ、そうじゃないんですよ検査と治療をするためにご両親の承諾が必要なので」

「それじゃ、ホルモン療法を始めるんですか?」

「いえ、その前に二次性徴抑制治療をします。思春期による身体の変化が見られますのでそれを止める治療をします」

 それを聞いた母は先生に丁寧にお願いしました。それから上杉先生はホルモン療法についても説明をしてくれました。ホルモン療法をすれば女性らしい身体になれる反面副作用があること一度治療を始めると後戻りが出来ないことも詳しく話してくれました。

「とにかく認定が無いとホルモン療法は出来ませんので、もう一度ご家族で話し合ってください」

 上杉先生はそう言うと看護師さんに何か指示をしていました。

「それじゃ飛鳥君、ちょっと痛いかも知れないけど我慢してね」

 そう言うと先生はおもむろに私の左手の袖をあげました。

「先生、なにするの!」

「何って、二次性徴抑制治療の注射をするんだよ」

「え、注射!」

 私は顔面蒼白になりました。

「飛鳥君、今回は皮下注射だからちょっとチクッとするだけだけどホルモン療法は筋肉注射だからもっと痛いかもよ」

 上杉先生が悪戯っぽく言うのを聞いて……

「先生って意地悪なんですね」

 そう答えました。注射は少し痛かったけどこれで思春期を止めることが出来るならと我慢しました。

「飛鳥君二週間後にもう一度注射をするからね」

「え! まだやるんですか?」

「うん、しばらくは月二回注射をするからね」

「えーっ、これって飲み薬とか無いんですか?」

 私は渋い顔をしながら先生に言うと……

「ないこともないけど確実なのは注射が一番なんだ」

 何だか先生は楽しそうに言いますけど…… まあ、仕方がないので従う事にしました。しかし、二次性徴抑制治療で月二回の注射、認定が出てホルモン療法が始まればこれも月二回の筋肉注射を受けなければならないことを考えると溜息しか出ません。だからと言って治療をしないという選択肢はないので我慢しなければならないのは分かってはいるけれど辛すぎます。注射は本当に嫌いなのだから……


いよいよ、治療が始まりますが他にも乗り越えなければならない事が起こりそうです。次回をお楽しみ!

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