26 聖なる日
お待たせしました。26話を更新しました。
今回はクリスマスネタです。ただ、受験生の恵美子ちゃんはクリスマスだ、お正月だなんて言ってる暇はないと思うんですが……
後期が始まり二ヶ月が過ぎました。この頃になると街ではクリスマスソングがあちこちで流れます。私達もクリスマスどうしようか? という声もありますが、流石に恵美子ちゃんには声は掛け難いです。なんたって受験生のこの時期は追い込みですからね! と玲華達と話をした夜の事です。
『飛鳥さん、クリスマスパーティーしましょうよ』という目を疑うチャットが入って来ました。恵美子ちゃんはどこまで余裕なんだろうか? それともランクを下げての受験だから何も心配してないんでしょうか? まあ、勉強はかなりやっているみたいですか……
『クリスマスパーティーっていうけど受験生は今、追い込みでしょう! 大丈夫なの?』と返信すると、すぐに『もう、お母さんみたいな事言わないで下さい。もちろん勉強もやってますよ! でも息抜きもしないと頭が変になりそうだし、飛鳥さんにも逢いたいから』とまたもや返事が来ました。どうしたものかなぁーと溜息が出ました。取り敢えず『保留』と返事をしたら『えええー!』と返信がありました。
翌朝、早速玲華達にも相談しました。
「恵美子ちゃんも相変わらずだね、それでどうするの?」
反対に訊かれてしまいました。
「いや、だから玲華に相談してるんじゃない」
玲華も瑞稀も他人事なんだから……
「まあ、ちょっとくらいなら良いんじゃない、折角だからプレゼント交換とかしようよ」
瑞稀、便乗する気満々だね!
「でも飛鳥、年が明けたら今度は受験祈願とか言って初詣に行こうって言い出すかもよ」
確かにそれはあり得る。
「初詣か…… 人、多いよね……」
「まあ、そこは家の都合で元旦と二日は無理だから三日だったらと言うことにしたら」
相変わらず玲華は頭が良いというか、ずる賢いです。
「そうだね!」
「偶には恵美子ちゃんの相手をしてあげないと本当に変になっちゃうよ! 息抜きは大事だからね」
「確かにそうかも知れないね」
「それじゃ、いつにする?」
「何が?」
「クリスマス! 場所は飛鳥の家とか大丈夫?」
「え! 家」
私と恵美子ちゃん、瑞稀に玲華にあと二人……
「いや、家は無理だよ」
私はちょっと困った顔をしました。
「あっ! そういうのが好きな人がひとりいる」
玲華に心あたりがあるみたいです。
「え! 誰?」
「美彩先生!」
なるほど、確かに…… 私は思いました。
「美彩先生か! 確かにこういうの好きだよね!」
「美彩先生って誰?」
そうか、瑞稀は知らないよね。
「どうせ今日はクリニックに行くから訊いてみるよ」
「飛鳥、ひょっとしてクリニックで治療してるの?」
「違うよ! テスト前に勉強をしてるだけ」
「そうなんだ」
私と玲華は、お互いに先生のことは知っているのでごく普通に当たり前な話です。
「だから誰なの? 教えてよ!」
玲華は納得顔ですが、瑞稀は知りたくて仕方がない様子です。
「瑞稀、私の家の近くのクリニックの先生だよ」
「飛鳥の家の近くのクリニックなのに何で玲華が知ってるの?」
あーっ、もう面倒臭!
「上杉先生のことは知ってるよね!」
「うん、飛鳥の主治医でしょう」
「そう、私は小さい時から先生のことを知ってるの、その上杉先生の奥さんなんだから面識くらいはあるよ」
玲華は瑞稀にきちんと説明しました。
「ふーん、そうなんだ、その奥さんが美彩先生なんだね!」
「そう、上杉先生の奥さん、つまり美彩先生が自宅でクリニックをしてるのよ」
瑞稀はなんとか理解してくれたみたいです。
放課後、私達は活動日では無いけど化学室で中間試験の勉強です。
「飛鳥はこの後もクリニックで勉強なんでしょう」
「私は玲華みたいに出来が良くないからね」
「私もそこまで良いとは思わないけど」
でもその余裕の顔が羨ましいのです。
「瑞稀はどうしてるの?」
「私は、個別教室に行ってる」
「え、塾ってこと?」
そうか、瑞稀は中学の時から塾に行っていたけど続いているんだね。
「それで瑞稀は二年になったらどっちにするの?」
「なにが?」
瑞稀は本当に分かっていないのかな?
「二年になったら理系と文系に分かれるでしょう! 私と飛鳥は理系だけど瑞稀はどうなのかなと思って……」
「私は文系だよ。今だってそっち系は苦労してるもん」
瑞稀は俯いてしまいました。
「瑞稀は学校の先生になるんだよね」
「うん」
「教科はどうするの?」
それは訊かなくても分かるでしょう! 瑞稀の得意科目を考えれば……
「私は英語の先生になりたいの」
「そうか、それなら文系で専門的なことを習った方が良いよね! でも、瑞稀とクラスが別々になるとは思わなかったな……」
玲華はちょっと淋しそうです。
学校の帰りにクリニックへ行きます。中間試験対策のためです。それとクリスマスの件も……
「先生こんばんは」
「あら飛鳥さん、中間試験だっけ?」
「はい、お世話になります」
「さあ、入って久美さんも来てるから」
リビングへ行くと久美が一足早く勉強していた。
「飛鳥は中間試験?」
「うん」
「いいよね! あとは期末試験で終わりだから」
久美は苦笑いです。
「でも三学期は中間試験はないんじゃない」
「まあ、そうだけど……」
美彩先生がいつものように問題集を持って来ました。
「ねえ、あなた達はクリスマスはどうするの?」
美彩先生から訊かれると話しやすいです。
「私達はパーティーをする事にはなっているんだけど何処でしようかと迷っています」
私がそう言うと美彩先生は「あら、それならここでやれば良いじゃない!」と食いついて来ましたよ。流石は美彩先生です。
「本当に良いんですか?」
「良いわよ! その代わり私達も一緒で良いかしら?」
「もちろんです。久美も一緒にどう?」
私が誘うと「良いの?」と訊かれたので「もちろんだよ! 匠君や玲奈も一緒に」と答えました。
そういうことでクリスマスを盛大に楽しむことになりました。
中間試験も終わり、今日から冬休みです。そして今日はクリスマス。普通はイブの日に前夜祭ということでやるんだろうけど美彩先生や上杉先生の都合で今日になりました。
「先生、こんなにご馳走買って来たんですか?」
「うん、だからみんな沢山食べちゃってね! 余ったら大変なんだから」
「だったら、こんなに沢山買わなくても……」
「だって美味しそうだったんだもん……」
いや、そんなに可愛らしく言われても…… 美彩先生はやっぱり天然なのかな、オードブルのセットを三皿、お寿司の盛り合わせを三皿、クリスマスケーキを三つとドリンク類を多数準備してあります。先生達を入れても十人くらいなので、ちょっと多いんじゃないのかな? そう心配しながらパーティーが始まりました。
「飛鳥さん、久しぶりですよね!」
恵美子ちゃんはそう言いますけど……
「そうね! 逢うのはそうだけど大体いつもネットで繋がっているから久しぶりというのは、ちょっと違うかもね……」
そう言って恵美子ちゃんはずっと私の側にいます。
「飛鳥、文化祭以来だよな」
「うん、そうだね! 匠君、久美達に虐められていない?」
これを聞いた久美と玲奈から猛抗議が……
「飛鳥酷いよ! 匠君を虐めた事なんてないよ」
玲奈がそう言います。
「まあ、虐めは無いけどいろいろと面倒なことをお願いされることはあるかな」
それを聞いて苦笑いをする久美、意外と自覚しているみたいだね!
「俺は結構な便利屋だからな」
匠君はその辺もう諦めているような……
「それじゃプレゼント交換するからみんなくじを引いてね!」
美彩先生が準備をしていたみたいです。
私は五番を引きました。
「先生、私七番ラッキーセブンでーす」
そう言うのは恵美子ちゃんです。
「はい、七番はこれよ!」
あの包装紙は玲華が持って来てた様な……
「飛鳥さんは何番?」
「五番です」
「それじゃこれね、」
なんとなく小さい箱にピンク色の包装紙です。
「あ、それ私が持って来たものだよ」
どうやら瑞稀が用意した物の様です。
「飛鳥に当たって良かった! 男子は多分使わないと思うから……」
「瑞稀、これなんなの?」
「マニキュア! 結構お買い得だったから」
「それは当たらなくて良かった。僕がそんな物を使ったら玲華から気持ち悪いと言われそうだよ」
甲斐先輩がそう言っています。
「あら、そんな事ないわよ! なんなら一緒に使っても良いわよ」
玲華がそう答えましたけど、それはあり得ないかな……
「塗るなら足の指だけにして欲しいかな、見えないから」
そう言う問題!
「甲斐君は結構癖になるかもよ」
「いや、そう言う趣味はないよ! ところで玲華はなにが当たったの?」
「私はこれ、たぶん入浴剤みたい。甲斐君一緒に入る?」
「うーん」
「馬鹿ね! 本気にしないの」
玲華、揶揄っちゃ駄目だよ甲斐先輩困ってるじゃない。
「みんな箱入りなんだね!」
「関は?」
甲斐先輩が訊いています。先輩はなんだかうすっぺらな封筒みたいな物を持っています。
「あっ! それは……」
上杉先生が言いかけました。どうやら先生が用意した物のようです。
「それは、たぶん当たりだよ!」
上杉先生はそう言ってますが、なんでしょうね?
「開けても良いですか?」
「うん、いいよ」
関先輩が開けてみると中には107シネマズのペア招待券が入っていました。
「わあ、凄い!」
喜んだのは瑞稀です。
「それじゃ、冬休みのうちに瑞稀と行こうか!」
「関は仲が良いな!」
そう冷やかす甲斐先輩でした。玲華と恵美子ちゃんはそれを見て羨ましそうです。
「これは玲奈でしょう」
久美が訊いています。
「どうして分かるの? 玲奈はこういうの好きだからね」
久美は二段式の小さな小物入れが当たった様です。
「玲奈は何が当たったの?」
「私はマグカップ」
「あ! それ私だ」
どうやら玲奈と久美はお互い交換し合ったかたちです。
その後も交換は続き匠君は美彩先生から手袋を、美彩先生は恵美子ちゃんからスマホのストラップが当たった様です。
「後は僕だけか……」
上杉先生は箱を開けると中にはちょっと高級そうなペンが入っていました。
「飛鳥君、これ高かったんじゃないの?」
そうか、もう私のプレゼントって分かるよね!
「上杉先生、それ見た目ほど高くないですよ」
私がそう言うと先生はちょっとだけ笑みを浮かべて「うん、大切に使わせてもらうよ」と喜んでくれました。
「でも、美彩が送った手袋は暖かそうだったな」
美彩先生は微笑みながら……
「秀一さんにもちゃんとあるから後でね!」
美彩先生は上杉先生にもちゃんとプレゼントを用意してるみたいでした。仲が良くて良いですね!
「飛鳥さん、このケーキ美味しいですよ」
「うん生クリームたっぷりで中に苺が入ってて最高だね!」
恵美子ちゃんも私もケーキを堪能しました。なんか二人でワンホール食べたんじゃないかというくらいです。
その後もパーティーは続きます……
ちなみに恵美子ちゃんが貰ったプレゼントは玲華が買った香水でした。これも男子に当たらなくて良かったと思います。
とても楽しそうなパーティーだったようです。私も昔はよく仲間内でやりましたけどね! でも、恵美子ちゃんは大丈夫かな…… 成績はとても良いみたいですが……




