25 一年前期が終了
お待たせしました。25話を更新しました。
今回は前期が終了ということで部活の新しい人事や聖華高校の文化祭を中心に書きました。楽しんで頂けると幸いです。
無事に期末試験も終わり、点数も平均より上回ることが出来ました。恵美子ちゃんも修学旅行から戻りお土産をもらいました。しかし、この間の事はちょっとだけ注意して聖華高校の文化祭に一緒に行く約束をしました。
「飛鳥さんごめんなさい…… 私の所為で風邪が感染っていたなんて……」
「恵美子ちゃん、もう大丈夫だから! ただ、あまり困るようなことはしないでね」
そう言って珍しく落ち込んでいる恵美子ちゃんを私はそっと抱き寄せました。彼女は照れ臭そうですけど笑顔を取り戻し嬉しそうです。私も彼女とこうしているだけで心が安らぎます。
明日はいよいよ終業式です。一年前期が終了です。明日から一週間ですが秋休みになります。その期間中の土日が聖華高校の文化祭になります。匠君や玲奈、久美は元気かな? 匠君達は三人とも同じクラスで文化祭のイベントとはクレープ屋さんをするそうです。
「飛鳥、おはよう!」
「おはよう」
玲華と瑞稀が教室へ入って来ました。
「文化祭楽しみだね」
「聖華高校の文化祭ってどんな感じなのかな?」
瑞稀は今から楽しみと言った感じですが、玲華は何となく不安そうです。
「私も行っていいのかな……」
「良いに決まってるでしょう! どうしたの?」
玲華はちょっと俯き加減で小さな声で「だって飛鳥や瑞稀の友達は知らないから……」と呟きます。
「それなら恵美子ちゃんだって知らないよ! でも、とても楽しみにしてるよ」
まあ、恵美子ちゃんは積極的な人だから玲華とは違うか……
「玲華、ちゃんと紹介するから大丈夫だよ」
瑞稀が、ちょっと心配気味に声を掛けます。
「玲華、安心して玲奈も久美も匠君も、きっと良い友達になれるから」
玲華はそれでもちょっと不安そうでした。玲華ってそんなに人見知りだったっけ……
放課後、化学室では新しい人事が発表されました。部長は、前に話があった通り甲斐先輩です。副部長は風力発電班の中島先輩が班長と兼務します。えっ! それじゃ甲斐部長も兼務で良かったんじゃ…… バブル班の班長は青山部長引退のため北野さんが班長をします。私と同様一年生班長です。と言っても、うちの部では珍しくないそうです。一年で入部して同じ学年だけで新しい班を作ることが多いからです。でも三年生が引退して人数も少なくなったので来年の新入部員は五人くらいは欲しいところですね!
秋休み、今日は聖華高校の文化祭です。私と瑞稀と恵美子ちゃんは近所の高校なので、いつものバス停で玲華が来るのを待ちます。私と瑞稀は他校の文化祭なので制服着用ですが恵美子ちゃんは私服です。ピンクのパーカーにチェックのミニスカートです。相変わらず私には刺激的なんですけど……
「恵美子ちゃんは今日も可愛いね!」
「はい! ありがとうございます」
「このピンクのパーカーが凄く似合ってるよ」
瑞稀の言葉にご機嫌の恵美子ちゃんです。
「私は寒くなってくるとパーカースタイルが多くなるんですよ! 暖かいから」
「でも生足だしてたら寒いんじゃない?」
私が訊くと…… 恵美子ちゃんは苦笑しながら「まだ九月ですよ! もっと寒くなったら流石にタイツとか、でもほとんどジーンズかな」
なるほど、冬場の恵美子ちゃんはパンツスタイルなんだとちょっとだけ想像してしまいました。
「飛鳥、バスが来たよ」
「うん、玲華乗ってるかな?」
バスが到着し一番最後に玲華が降りて来ました。
「おはよう」
「おはよう、玲華! それじゃ行こうか、聖華高校に!」
「うん」
やっぱり玲華は緊張してるみたいです。口数が少なく恵美子ちゃんの服装にも触れる余裕がないみたいです。ここまで人見知りだったとは…… 大丈夫かな?
私達が校内に入るとそこは文化祭一色で人も多く、とても盛り上がっていました。入口では案内のチラシを貰いましたが、まずは匠君達がいる一年二組の教室を探します。
「匠君! どこ行くの?」
「ちょっと部室に行って来る。すぐに戻るよ」
玲奈は不安そうな顔をしています。
「その間、誰がクレープの生地を焼くのよ!」
匠君と玲奈が喧嘩をしているような……
「生地くらい誰だって焼けるだろう、それにすぐ戻るって言ってるだろう」
そう言って匠君は走って行ってしまいました。
「玲奈! なに喧嘩してるの?」
玲奈は振り返り私の顔を見ると「あすかー」と言って抱きついて来ました。
「よしよし」
そう言って彼女を抱き寄せ事情を訊きます。恵美子ちゃんからずっと見られているのが気になるけど……
「クレープ生地を焼かないといけないのに匠がどっかに行っちゃった」
「大丈夫だよ、すぐ戻るって言ってたじゃない」
その時、久美が顔を出して来ました。
「あ、飛鳥だ! もう来てくれたの?」
「うん、ちょっと早かったかな?」
「ううん、大丈夫だよ匠君がどっか行っちゃったけど……」
「匠君なら部室に行くって言ってたみたいだけど」
久美は嬉しそうに私達を見て「みんなで来てくれたんだね、ありがとう」と微笑んでいます。
「あっ、そうだ! 紹介するね、同じクラスの友達の如月玲華さんだよ」
「松本久美です。城南の文化祭の時に逢ったよね」
「うん、飛鳥と休憩交代のときかな……」
玲華も少し笑顔が出て来たみたいです。
「こっちの私服の娘は?」
「こっちは私達の後輩で城南中央中学の今井恵美子ちゃん」
「よろしくでーす! 飛鳥さんとお付き合いさせて頂いてます」
「へぇーそうなんだ、よろしくね恵美子ちゃん!」
「はい」
またこの娘はお付き合いとか言ってと思いましたが、久美はそれほど変に思ってなかったので、まあ良いかな……
「玲華さんって私と一字違いなんですね! 私は山中玲奈です。よろしくね!」
「あら、本当だ。よろしくね!」
玲華はかなり落ち着いて来たみたいです。
「久美達は一緒には回らないよね」
「ごめん! 今回は忙しくてずっと教室に缶詰だよ! お昼は交代で休憩するだろうけど」
「うん、仕方ないよ」
久美はメニューを持って来ました。
「何か食べる?」
私達は朝食を食べては来ましたが甘い物は別腹ということでそれぞれ注文しました。私と恵美子ちゃんはチョコバナナクレープです。瑞稀と玲華はチョコクリームにしたみたいでした。
「あ! 飛鳥来てくれたんだ。ありがとう」
匠君が戻って来ました。
「匠君何処いってたの? 玲奈が心配してたよ!」
瑞稀がまた余計なことを……
「ちょっと部室までスマホを取りに行ってたんだよ。ところで何か食べる?」
「うん、今注文したところ。匠君、紹介するね、如月玲華さんと今井恵美子ちゃん。こっちは松下匠君」
「よろしく!」
「匠君、早く生地を焼いてよ注文が入っているのに」
「だから俺じゃなくてもあの辺で遊んでる奴に焼かせりゃ良いじゃないか、何故俺ばかりに言うんだよ」
そう言って匠君は仕方なく生地を焼きに戻りました。確かに奥で遊んでる男子がいるようです。あれだと真面目にしてる人は面白くないですね、折角の文化祭なのに。
「飛鳥お待たせ! ごめんね恥ずかしいとこ見せて」
「うん、あまり匠君ばかりに言っちゃ駄目だよ」
「うん、分かってはいるんだけど言い易くてついね」
「それじゃ、仲良くしてね」
私達は他のブースを見て回ることにしました。
「食べ物屋さんが多いね!」
瑞稀がクレープをほうばりながら言っています。
「うん、これじゃどこのブースも大変だろうねって瑞稀、やめてよみっともない!」
玲華としてはそんなこと出来ないということでしょう。お嬢様だから……
「良いじゃない! こうするのが美味しいんだから」
「クレープはやっぱり歩きながらですよね」
「恵美子ちゃんだけだよ分かってくれるのは」
玲華は苦笑して、もうなにも言いませんでした。瑞稀は一人で文化祭を楽しんでいるようです。
「飛鳥さん、ここ行ってみませんか?」
恵美子ちゃんがもらったチラシを見ながら言っているのは巨大迷路です。
「これ面白そうね!」
玲華も瑞稀も、もう行く気満々です。
「でもさ、これ出れなくなったらどうするの?」
瑞稀がちょっと不安そうです。
「たぶん、リタイア用の出口があると思うけど…… そこまで難しくないと思うけどね」
玲華がそう言っています。
「でも、壁に手を当ててずっと進んで行けば最後には必ず出れると思いますよ。時間は掛かりますけど」
恵美子ちゃんは余裕です。ちょっとした対処法も分かってるみたいです。
「それじゃ、行ってみようか!」
巨大迷路は視聴覚室に出来ていました。
「巨大じゃないじゃん」
恵美子ちゃんが不服そうですけど、高校の文化祭だから……
「意外と簡単かもね」
玲華はそう言って中へ入って行きました。
「飛鳥さん、私達も行きましょう!」
私は恵美子ちゃんと手を繋いで入ります。
「いらっしゃいませ」
係の学生さんから説明を受けました。どうしても出れない時は窓際の方へ行けばリタイアの出口がある事とチェックポイントにある置物と一緒に写真を撮って戻って来ることを教えてもらい二人ずつ入ることに……
私は恵美子ちゃんと二人で挑みます。彼女は私の手を引っ張ってさっさと行きます。
「ねぇ! そんなにさっさと行って大丈夫?」
私はちょっと不安でしたが……
「飛鳥さん、大丈夫ですよ! 簡単ですよ」
そう言って話しているとチェックポイントに到着です。
「えっ! 本当に!」
「飛鳥さん、写真を撮ってください」
チェックポイントには『チェックポイント』と書いた紙を持った熊のぬいぐるみがありました。私はぬいぐるみを真ん中にして恵美子ちゃんと二人で写真を自撮りしました。
「でも可愛い! このぬいぐるみ」
「恵美子ちゃん戻るよ!」
「あ! 待って下さいよ飛鳥さん」
そして、ちょっと戻ったところで玲華と瑞稀に逢いました。
「ねぇ飛鳥、チェックポイントあった?」
「あったよ、ほら!」
私は写真を見せました。
「えっ! 何処にあったの?」
瑞稀がすかさず聞いて来ます。
「この先の一番奥の方だよ」
「それじゃ、この写真をLINEで送ってもらって戻ろうか」
「玲華さん駄目ですよ! この写真には私と飛鳥さんしか写っていないですから」
恵美子ちゃんに否定されてしまいましたね!
「飛鳥、出口で待っててよ」
不安そうに瑞稀が言います。
「瑞稀、駄目なときはリタイア出来るからね!」
私がそう言うと玲華は「大丈夫! 必ず行けるから」そう言い残して行ってしまいました。
それから私達は間もなく出口へ戻って来ましたけど…… 待つこと二十分、やっと二人が戻って来ました。
「あっ! やっと出れた」
瑞稀の第一声です。玲華は小首を傾げながら腑に落ないようです。
「遅いですよ!」
まあまあ恵美子ちゃん、それは言っちゃ駄目だから……
「あなた達が早すぎるのよ!」
玲華の『あなた達……』を久しぶりに聞いたかも……
そのあと、私達は聖華高校を後にしました。お昼を食べるためです。あれだけ飲食ブースがあるのに普通に食事出来るところがなかったからです。焼きそばとかたこ焼きとか、クレープはあるのにカレーとかサンドイッチのブースは無かったのです。私達四人はモールタウンのフードコートでお昼にしました。
「瑞稀は関先輩とどうなの?」
玲華が恋バナを始めました。
「どうなの? って最近は逢ってないよ。写真コンテストの撮影でなかなかね」
「そう言えば城北川に行ってるって言ってたもんね」
私もその話は何度か聞きました。
「電話してみれば良いじゃないですか!」
積極的な恵美子ちゃんらしい意見です。
「そんな、撮影に行ってるって分かってるのに邪魔しちゃ悪いよ」
「瑞稀は関先輩には優しいのね! 電話が無理ならメールでも良いんじゃない」
玲華は人のことになると積極的なんだね。
「メールするくらいなら電話が良いよ。声だって聞けるから」
結局、電話するのね! 瑞稀が可愛いらしい貝殻のストラップの付いたスマホで電話を掛けています。
「もしもし、関君! 今良いかな?」
繋がったみたいです。なんとなく猫撫で声の瑞稀は可愛いらしいです。
「今、何処にいるの?」
「…… 今、城北川から帰って来たんだけど……」
え! なんか聞き覚えがある声が後ろから……
その時、いきなり瑞稀の肩に手を置く男性が……
「ただいま! 瑞稀」
瑞稀は振り向いてハッと息をのみ頬を赤く染めています。
「おかえり……」
スマホ越しに声を掛けています。
「もう、電話は切ってもいいね」
そう言って関先輩は瑞稀の隣に座りました。
「いつ、戻って来たの?」
「ついさっきだよ! 聖華高校の文化祭にって誘われてたからなるべく間に合えばと思ったけど無理だった。ごめんね」
瑞稀は俯いたまま「いいんだよ! そんなの…… でも、嬉しい」
そういうことで瑞稀はここで別行動になりました。すると玲華も「飛鳥ごめん! 私も用事を思い出したから」と言って玲華ともここで別れました。瑞稀はともかく玲華は私と恵美子ちゃんに気を遣ったのかも知れません。
「飛鳥さん、折角だから書店につきあってもらって良いですか?」
「うん、いいよ! 何買うの?」
「高校入試の問題集です。もう二冊終わったので」
そういうことで書店へ行きました。それにしても問題集二冊終わったって、ちゃんとやる事はしてるんだね! 私はそう思いました。高校入試用の参考書とか久々に見ました。なんだか懐かしいです。
「これとこれは終わったから、これだね」
恵美子ちゃんは二冊ほど問題集を買っています。
「恵美子ちゃん、この問題集は有名進学校のじゃないの?」
「はい、そうですよ」
「これ買うの……」
「はい、これくらいはやらないと面白くないでしょう?」
私は、ちょっと理解に苦しみながら「そうだね……」と一言話を合わせました。彼女は勉強については私達が心配する事はないようです。
恵美子ちゃんが問題集を見ている時、私は反対側で医学書を見ていました。生理解剖学と書いてあります。こういうのは昔からよく見てました。理科の教科書にも身体の仕組みとかがついているとつい見入ってしまいます。
「飛鳥さんは何を見てるんですか?」
恵美子ちゃんは私の側に来てその本を見て眉間に皺を寄せながら私を見ています。
「これ、気持ち悪い」
「そうかな?」
私は普通に思っていたのですが……
「飛鳥さんはこういうのを見てなんともないなら外科医が向いてますね」
「え、外科医? 私は精神科医になりたいんだけど……」
「そうですか……」
そこで話は終わってしまいました。
書店を出て恵美子ちゃんが言います。
「私は小児内科医になりたいんです。でも飛鳥さんがさっき見ていた本は得意じゃなくて」
「うん、そういう人は多いからね、私は小さい頃からこういうのは興味があってね…… 口から食べ物が入って何処を通って何処から出るのかとかね」
「飛鳥さんは、やっぱり外科医になるべきですよ! あれを見てなんともないんだったら」
「そうだね、まだまだ先の話だから考えとくよ」
私はそう言って微笑みました。
最後に恵美子ちゃんから『飛鳥さんは外科医になるべき』と言われてました。本人は精神科医希望なんですけど……
でも、その前に医学部に合格しないとね!




