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憧れのスカート  作者: 赤坂秀一
第四章 インターハイと文化祭と私
17/52

17 文化祭は恋の予感

文化祭が始まりました。しかし、飛鳥は淋しそうです。玲華は甲斐班長。瑞稀は彼氏がいる感じなのです。


 定期試験が終わり、いよいよ文化祭が始まります。準備は万端です。クラスではカフェをやるのですが私達は化学部のイベントがあるので、クラスのイベントは免除になっています。そういうことで、私はバイオディーゼルの説明のため化学室に缶詰になりました。玲華(れいか)甲斐班長(かいはんちょう)とシャボン玉デートじゃなかったシャボン玉の実演のため中庭にいます。瑞稀(みずき)は最初、バイオディーゼル要員だったのですが手作り石鹸の販売員が足りないということで急遽駆り出されました。しかし、本人は満更でもなさそうです。ちなみに化学部の石鹸は学校の御手洗や洗面所に置いていたのですがかなり好評だったので、文化祭で販売することになりました。二百個完売を目指すそうです。これを機会に石鹸班というのも味気ないのでバブル班になりました。これには北野さんも嬉しかったらしく終始笑顔でした。班長は青山部長が兼務されます。

「あ! 飛鳥がいた」

 早速、匠君(たくみくん)玲奈(れいな)が来てくれました。

「おはよう、飛鳥!」

「有難う、今日は部活大丈夫なの?」

「ああ、今日は休みだから。それにしてもきちんとまとめたな」

「うん、写真とかも撮ってもらってたから分かりやすく出来たかな」

「失敗とかしなかったの?」

「したよ! 原因が分からなくて大変だったんだよ」

「それでも頑張って成功させたことは飛鳥(あすか)らしいな」

「ねえ、これ書いたの瑞稀でしょう」

 玲奈(れいな)は偶に鋭いところをついて来ます。

「何故分かったの?」

 隣の販売ブースから瑞稀が来ました。

「だって瑞稀の字はハネとか止めがはっきりしてて文字がカッコ良いもん」

「え! そうなの?」

 意外と文字は人それぞれで特徴があるみたいですね自分では分からないけど……

斎藤(さいとう)さん戻ってきて! お客さんが待ってるから」

「あ! すみません」

 隣の販売ブースは売り上げ好調のようです。これって今日で完売するんじゃ無いのかな……

「飛鳥、他にどんなことしてるの?」

 玲奈が目を光らせます。

「他は普通の学校と同じ内容の文化祭だよ、あ! でも中庭で消えないシャボン玉を実演してるよ」

「え! 消えないの?」

 あ、いや、消えるか!

「あ! 消えにくいシャボン玉ね」

 私は言い直しました。流石に大袈裟なキャッチコピーだよね。どっかの審査機構に注意されても困るから……

「それとソーラーカーの実験も同じところでやってるかな? 実物大じゃないけど」

「なんだか化学部のとこばかりだな」

 匠君がそう言ってます。

「だって化学部だもん! 入口でチラシとか貰わなかったの?」

「うん、そう言えば…… それで飛鳥はずっとここにいるのか?」

「あとで交代はあると思うけど、たぶん缶詰だね」

「そうか、少しくらいは一緒に回れると思ったけど」

「ごめんね!」

 その後二人は化学部特製手作り石鹸を買ってくれました。

「来てくれて、有難うね!」

「うん、あとで久美も来ると思うから」

 そして、二人は中庭の方へ行ったようです。あの二人は相変わらず仲が良いなあ。なんとなく羨ましいです。玲華も甲斐班長がいるし、瑞稀だって隠してはいるけど…… 絶対に誰かと付き合っている。私は彼女をジッと見詰めますが、販売で忙しいようで気付いてくれません。

「はあー」

 最近は溜息ばかりです。そんな時でした。同じクラスの近藤弥生(こんどうやよい)さんが来ました。

「飛鳥、お疲れ!」

「あれ、どうしたの? カフェは?」

「大丈夫! ちゃんとやってるから…… それよりこれ!」

 彼女はわざわざ差し入れを持って来てくれたのです。私は化学室で缶詰だし、石鹸販売の瑞稀もなかなか抜けることが出来ないだろうとサンドイッチとコーヒーを持って来てくれたのです。

「近藤さん、有難う」

「お礼は玲華に言って、彼女から頼まれたから、それじゃ頑張ってね」

 そう言って近藤さんは戻って行きました。身動きが取れない私にはとても助かります。玲華に感謝です。私は説明の合間に食べて、瑞稀や北野さん達も交代で食べてます。

「飛鳥!」

久美(くみ)、来てくれてありがとう」

 その後には、美彩先生(みさせんせい)です。

「先生も来てくれたんですか!」

「勿論、この時期の文化祭も

良いわね」

「これを飛鳥が作ってたの?」

 久美はサンプルのバイオディーゼルを持っています。

「そうだよ」

「これが、軽油の代わりになるの?」

「はい」

 美彩先生はバイオディーゼルを使ってエンジンを回したりしないのか聞いてますけど、そこまでは難しかったのです。エンジンを供給してくれる人もいないし、この燃料の信頼性とかもあるので…… でも、本当のことを言うと発電機とかを動かしてみたかったかな……

「それじゃ斎藤さんは先に休憩に行って来て」

 青山部長が言っています。

「それじゃ、すみません。飛鳥、お先! 久美またね」

 そう言うと瑞稀はさっさと行ってしまいました。

「瑞稀はどうかしたの?」

「うん、どうも彼氏さんがいるみたいなんだけど……」

「あの瑞稀に彼氏!」

「まだ分からないんだけどね」

「良いなあ、瑞稀は」

「陸上部に良い人いないの?」

 久美は首を振りながら「いないよ、いてもそんな雰囲気じゃないよ、記録を伸ばすのに精一杯だから」

 陸上部も練習は大変な様子です。

「飛鳥、交代だよ」

 玲華が化学室に来ました。

「玲華休憩は?」

「私はもう終わりだから」

「あら、やっぱり玲華ちゃんだ」

「あ! お久しぶりです」

 どうやら美彩先生も玲華のことを知ってるみたいです。

「玲華、サンドイッチありがとう。あとよろしくね!」

「うん」

 そして、私は美彩先生と久美の三人でみて回ることにしました。

「飛鳥、お勧めは?」

「お勧めでは無いけど『消えにくいシャボン玉』を実演してるからちょっと行ってみない」

「消えにくいシャボン玉?」

 美彩先生は意味が分からないみたいです。

「ここよ」

 今は玲華がいないので甲斐班長がひとりで頑張っています。

「お疲れ様です班長!」

「あれ、休憩は?」

「今、休憩中です。お客さんですよ」

 私は、美彩先生と久美にシャボン玉を進めました。

「これは普通のシャボン玉よね」

 美彩先生はちょっと疑っていますね。

「新しいストローがありますのでいろんなシャボン液を試して下さい」

 すると久美が「あ! 違う、全然壊れない」と評価をもらいました。

「あら、本当凄いのね」

 もうひとつの方も試しています。

「私はこっちの方が良いわね」

「そうですね、私もそっちの方がいい感じでした」

 どうやら喜んでもらえた様子です。

「あれは普通のシャボン液じゃないの?」

「はい、特別な配合をしています」

「玲華ちゃんも一緒にしてるの?」

「はい」

「あ、そう?」

 美彩先生どうかしたのかな?

「今村さん、金魚すくいは行った?」

 甲斐班長が聞いています。

「そんなのがあるんですか?」

「うん、うちの隣のクラスの三組がやってたよ。明日までに売ってしまわないと処理が大変って言ってたからサービスしてくれるんじゃないかな?」

 私達は二年生のクラスへ行きました。焼きそば、たこ焼き、金魚すくいって、これってもう文化祭じゃないよね。みんなが浴衣とか着てたら間違いなく縁日です。そこで金魚すくいをしている瑞稀が知らない男子と一緒にいます。とても楽しそうです。

「あれ、瑞稀じゃない?」

 私はそっと久美の手を引きました。

「どうしたの?」

「瑞稀のとなり!」

 久美は頷き納得したみたいです。

「あの娘、飛鳥さん達の友達なの?」

「はい」

「ふーん、なかなかいい感じじゃない! アオハルだね」

 はあ、私が溜息を吐くと美彩先生に「なに二人して溜息吐いてるの」と言われ私は久美を見ました。久美も私を見ています。すると何だか可笑しくなって私は久美と一緒に笑ってしまいました。

 その後、私は休憩が終わり化学室へ戻りました。

「玲華、お待たせ。あとは私がやるから戻っていいよ」

「それがね、今日はひとりでするから良いんだって」

「なに、喧嘩でもしたの?」

「そんな訳ないでしょ!」

 甲斐班長ってシャボン玉に思い入れでもあるのかな?

 そして、前半の文化祭が終わりました。私達化学部への来場者はなかなかのようでした。バブル班の石鹸も200個中120個が売れ明日には完売しそうな状況です。

「上杉先生来てなかったよね」

「うん、今日は大学病院で外来があってたみたいだよ。それに明日は来るって言ってたから」

「そう、ねえ、カフェに行かない駅のとこの!」

「うん、いいよ、瑞稀も行こうよ」

 瑞稀はちょっと考えたように「ごめん、今日はやめとく」

「ちょっと瑞稀、最近付き合い悪くない?」

 玲華がポツリと愚痴りました。

「うん、ごめん」

 そう言って瑞稀は先に行ってしまいました。

「玲華、許してあげて」

 玲華は頬を少し膨らませ不機嫌そうです。

「でもさあ、飛鳥……」

「今日、瑞稀の彼をみかけたの! 聞きたくない」

 玲華はさっきまで膨れっ面だったのに今は小悪魔的な顔をしています。女の子ってこんなにもコロコロと表情が変わるもんかしら、私にはまだ分かりません。

「それじゃ瑞稀はいない方が良いわね」

 そして、私達は駅のカフェへ行きました。

「昼休憩のとき彼と一緒に金魚すくいをしていたの」

「瑞稀が……」

「うん、二年生のブースに焼きそばやたこ焼きと並んで金魚すくいがあったでしょう」

「うん、あの縁日街でしょう。私も班長と行ったけど…… あそこは結構人が多いから私だったら避けるけどなあ」

「でも、班長と行ったんでしょう」

「それは、私は隠してないから」

「まあ、そこはどうでも良いけどね」

 その後も私達は瑞稀をネタに話を続けました。

「飛鳥、そろそろ電車の時間だから」

「うん、それじゃね」

 私は玲華と別れてバスターミナルへ行くときでした。女の子がバスターミナルのところを行ったり、来たりしています。それに彼女の制服は見覚えがあります。

「どうかした?」

 私が声を掛けるとその子は泣きそうな顔になっていました。事情を聞くと財布を落としたと言うことでした。

「中央中学校だよね」

「はい」

「大丈夫だから、交番に行ってみようか」

 私は彼女と一緒に交番へ行き事情を話しました。

「そうですか! あまり期待しないで下さいね、最近は財布を拾っても中身だけ取って財布はゴミ箱に捨てる人がいてね、なかなか届けてくれる人がいないんだよ」

 世の中には酷いことをする人がいます。

「家は学校の近くだよね」

「はい」

「それじゃ、一緒にバスで帰ろう」

「でも、バス代がないので……」

「それじゃ、私が貸してあげるから」

 そう言って私達は一緒にバスで帰って来ました。私は彼女とアドレス交換をして別れました。彼女の名前は今井恵美子(いまいえみこ)、苗字は私と一字違いです。


 翌日、文化祭最終日です。私はバイオディーゼルではなくシャボン玉のブースにいます。甲斐班長から「今日は僕がひとりでバイオディーゼルの展示にいるから君達はシャボン玉で遊んでて良いよ」と言われました。でも、それじゃ瑞稀が蚊帳の外みたいで可哀想に思えたのですが、バブル班の一員みたいに手作り石鹸完売頑張ろうと気合い充分と言ったところでした。

 私は、玲華とシャボン玉を飛ばして遊んで、ではなく、研究の実演をしているときでした。

「今村さん、昨日は有難うございました」

 今井さんです。お姉さんに逢えて良かったです。そう言って彼女は抱きついて来ました。

「ちょっと恵美子ちゃん!」

 彼女の幸せそうな顔を見ると無下に引き離すことは出来ませんでした。玲華は微笑ましい顔で見ています。これも女子同士のスキンシップみたいなものですか? 私はよく分からないけど、でもとても心地良い感じですね。





文化祭最終日、駅で知り合った今井恵美子とは中学校の後輩のようですが……

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― 新着の感想 ―
[良い点] やはり文化祭は文化部の華ですねえ…。 賑わっている様子が何とも楽しくなります。 現役時代は私、「実験の説明をできるのがお前しかいないから」とずーっと化学室に缶詰めでしたね。 お陰で文化祭を…
2020/08/09 13:57 退会済み
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