表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れのスカート  作者: 赤坂秀一
第三章 女子高生です
14/52

14 原因

お待たせしました。14話を更新しました。

一度は成功したバイオディーゼルですが、ここのところ失敗続きです。どうなることやら


 翌日の朝、私と瑞稀(みずき)は化学室に行きました。昨日新しく作った物と不純物除去をしてる物の様子を見るためです。不純物除去の方は水とバイオディーゼルが綺麗に分離していてほとんど不純物は除去出来てるみたいですが、新しく作った方はケン化してドロドロの石鹸になっていました。

「あーっ! 出来てなかったね」

 瑞稀がそう言ったとき私はちょっと責任を感じました。

「うん…… どこで間違えたのかな?」

飛鳥(あすか)があんまり長く撹拌(かくはん)するからだよ」

「それは…… あんまり関係ないと思うけど……」

「だって、前回同様他に変わったことはしてないよ」

「でも、撹拌し過ぎたからって水分が出る訳じゃないし…… 甲斐先輩(かいせんぱい)も言ってたでしょう」

「そうだけど…… 甲斐先輩は飛鳥の味方だからね」

「み、ず、き!」

 私は、ちょっとだけ怒った振りをして瑞稀が書いている研究記録に目を通し失敗の原因を探りました。

「おはよう、二人とも」

玲華(れいか)、また失敗しちゃったよ」

 玲華はドロドロの石鹸が入ったビーカーを見ました。

「仕方ないよ、原因が今ひとつ分からないんだから」

 確かに一度は成功したけど失敗の原因は天ぷら油に水分が含まれていたからだけなのだろうか?

 その後、私達は教室へ向かいました。最近は雨がよく降ります。四月の下旬この頃は日替わりで天気が変化します。梅雨とは違って降ったり止んだりなのですが雨は鬱陶(うっとう)しいです。


 放課後、私は化学室へ行きました。

「お疲れ様です」

 化学室では甲斐先輩が準備をしています。

「あ! お疲れ様。また駄目だったね」

「はい、何が原因なんですかね」

「今村さん!」

 甲斐先輩が私の側に来ました。

「あ! はい」

 うわぁ、変な声になっちゃった甲斐先輩近いよ、なんだか私、怖いよ。瑞稀達早く来ないかな……

「昨日はごめんなさい。ちょっとした冗談だったんだけど……」

「あの、先輩、私は……」

 甲斐先輩は右手で私を制して「いや、分かっているから大丈夫」

 えっ! 先輩、私のこと知ってるの?

「消えないシャボン玉だよね」

「えええ!?」

 このタイミングで瑞稀達がやって来ました。私達に気付いた二人は慌てて私と先輩の間に入ってくれました。

「飛鳥、大丈夫? 甲斐先輩辞めてください」

 瑞稀が先輩に注意しています。玲華も毅然とした態度で先輩を見ています。

「瑞稀違うの! 玲華も」

 瑞稀も玲華も目を白黒させています。

「どういうこと?」

「僕は、今村さんがシャボン玉のことを知りたいんだと思って訊いていたんだよ」

 玲華と瑞稀は顔を見合わせながら……

「なんだ、そうだったの」

 ホッと胸を撫で下ろしています。私はこれ以上変な誤解が起きても困るので甲斐先輩に言いました。

「先輩、私GIDなんです」

 一言そう言いましたが先輩に反応はありません。

「あ、そうなの、GIDってなに?」

 あっ、そうか、分からない人もいるよね。私はそう思い今度は分かりやすく言いました。

「私、戸籍上は男なんです」

 玲華も瑞稀も言っちゃった! というような顔をしています。

「え! 男!」

 先輩は驚いて実験器具を落としそうになりました。

「でも、女子用の制服だよね。それに髪だって長くてどこから見ても女子でしょう」

「私、性別違和なんです。だからホルモン療法も受けています」

 私は全てを告白しました。しかし、甲斐先輩はさほどショックを受けたようには見えませんでした。

「そうか、大変なんだね病院にも行っているの?」

「はい、月に二回ですけど」

「そうか、困ったことがあったら言ってね」

 淡々と話をして今日の研究に入りました。結局何だったのよ! やっぱりただの冗談だったの? 告白する必要無かったってこと? やっぱり男は好きになれない! その後実験が始まりました。

「如月さん廃油の水分を飛ばしてね、今村さんはナトリウムメトキシドを作ってくれる?」

「はい!」

 瑞稀は心配そうに私を見てくれています。でも私はナトリウムメトキシドをおもいっきりいつもより激しく振っています。

「玲華、飛鳥大丈夫かな?」

 瑞稀も玲華も、そっと私を見ています。

「今は、ほっときましょう」

 玲華って私のことをどう思っているのかしら?


 私はこの後、治療のため大学病院へ行かなければならないので部活を途中で帰りました。この後、玲華達がバイオディーゼルを作ったと思うのですが明日の朝は良い結果が出てれば良いのですが…… とにかく、まだ一回しか結果が出ていないのです。実際に成功したバイオディーゼルは1リットルしかありません。大丈夫なのかな? これじゃ文化祭の発表に間に合わないよ。


 私は大学病院にはバスで行きます。学校を出たときの雨は病院に着いたときには止んでいました。

「先生こんにちは」

「やあ、今週は忘れずに来てくれたね」

「はい、前回はすみません」

「いや、いいんだよ。ところで採血は済ませた?」

「はい」

「それじゃ、結果が出た後に治療するからね」

 先生は検査の結果を見て、治療プログラムを見直し私に一番最適な治療をしてくれます。それは先生の口癖で副作用があるから怖いんだよ。と私より先生が怖がっているように思えます。

「飛鳥君、研究の方はどうなの?」

「それが、まだ一回しか成功していないんです。ドロドロの石鹸が出来ていて……」

 私は頭を掻きながら言いました。

「うーん、ケン化している訳だね、廃油の水分除去はしてるの?」

「はい」

「それじゃ、原因は苛性ソーダかもね」

「苛性ソーダが水分を吸収するのは分かっているので取り扱いは急いでやっているんですが……」

「まあ、そうだろうね、あと管理も厳重にしてるだろうから問題は雨だろうな、今みたいに天気が悪いと空気が湿っているから余計に吸収してるはずだよ」

 そうか、天気も関係してるよね! 私は一筋の光を見たような感じがしました。

「先生、ありがとうございます。なんとかなりそうです」

「うん、良い成果が出ると良いね」

 そうか、雨が私達の研究を邪魔していたのね! 私は早速対策を考えることにしました。


 翌日の朝、化学室へ行くと元気のない玲華がいました。

「おはよう玲華」

「おはよう、はあー、また失敗したわ!」

 昨日エステル反応させたであろうビーカーにはドロドロの石鹸が出来ていた。やっぱり昨日上杉先生が言ったとおり雨により湿った空気から苛性ソーダが水分をより多く吸収しているのだろう。

「玲華、そのことなんだけど……」

「おはよう」

 甲斐先輩が化学室に入って私と玲華の話に割り込んで来ました。

「やっぱり失敗だったね」

「先輩、どういうことですか?」

 玲華は何か原因が分かったのかと先輩の顔を見ています。

「最近雨が多くて湿度が高くなっているから苛性ソーダの水分吸収がいつもより多いと思うんだ」

 あーあ、ぜーんぶ言っちゃったよこの人。折角、私も情報を掴んだのに…… 私はやっぱりこの人が嫌いです。

「それじゃ、雨の日は研究出来ないって事? ねえ、飛鳥はどう思う?」

「私も、昨晩ずっと考えていたんだけど天気の良い日もしくは、湿度を調整してから苛性ソーダの量を測って個別に分けとけば良いかなと思ったんだけど」

「そうか、そしたら真っ直ぐメタノールに入れれば良いわけだから成功する確率が上がるのね」

「うん」

 しかし、玲華が不思議そうに「昨晩考えたの?」と訊きました。

「うん、昨日上杉先生にアドバイスを貰ったからね」

「そりゃ凄いな」

「どうしてですか?」

「だって原因らしいことが分かって直ぐに対策を思いつくなんて凄いよ」

 先輩は本当にそう思っているのかな。さっき私が先輩のことを嫌いと思ったことを悟られたのかな…… 私は甲斐先輩のことを疑って心の底から喜べません。でも、これって良くないですよね。


 私達は放課後にもう一度きちんとした対策を考えることにして教室へ行きました。

「ねえ、飛鳥!」

「なに?」

「要するに最近雨が多かったから湿度が高くなっていて苛性ソーダが水分をより多く吸収して失敗してるのよね」

「うん」

「それじゃ、どうやって湿度を調整するの?」

 玲華は真剣な顔で私に訊いて来ます。

「おはよう飛鳥」

「瑞稀! どうして化学室に来なかったの?」

「ごめん、寝坊していつものバスに乗り遅れちゃって…… それでなに話してたの?」

「瑞稀、失敗の原因が分かったの、湿度が邪魔してたのよ」

 玲華は真剣な面持ちで今朝の化学室でのことを瑞稀に話しました。

「そうか、それじゃストーブかなんかで部屋を暖めるとか」

 瑞稀の発想はとても面白い。

「それじゃ暑くて実験出来ないでしょ」

 本当に玲華も瑞稀も分からないのかな……

「ねえ、あんまり難しく考えていない?」

 二人はまたもや真剣な顔で「それじゃどうするの?」と訊いて来ます。

「エアコンで除湿すれば良いじゃない」

「エアコン!」

「そうか、それが一番手取り早いよね」

「日本の平均湿度が60パーセントから70パーセントなんだけど、それだとまだ高いから40パーセントから60パーセントだったら快適に実験出来ると思うの、化学室にもエアコンはあるから大丈夫だと思うんだけどね」

 そういうことで古澤先生に相談したら、化学室はちょっと広すぎるから化学準備室で苛性ソーダの入れ替えをする時だけという条件で許可して貰えました。流石にずっと使用することはNGということでした。何故なら基本的にエアコンの使用は夏期の通常授業や夏期講習のときだけでそのときも室内温度を二十八度にするという取り決めがあるためです。しかしながら苛性ソーダの入れ替えのときだけでも化学準備室でエアコンの使用が認められたということは良かったと思います。その結果バイオディーゼル研究の成功率がとても良くなりました。



失敗の原因が分かりひと安心です。


エアコンの設定温度ですが、勘違いをしていました。冷房時の室温28度、これはエアコンの設定温度ではなくあくまでも室内温度を調整するということでした。そうしないと設定していて室温が30度越えてることありますからね。環境省のホームページにもありました。今年の夏は快適に過ごしたいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] みんなでがんばって活動している感じが微笑ましいですね。 高校の実験室レベルだと意外と制約もありますし、繊細な実験は確かに苦労するでしょうねえ…と思いながら読んでいました。 私の現役時代は実…
2020/07/18 11:02 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ