008 吾輩、用途は明確である
吾輩、剣である。
なんどかの復活を経て、吾輩、黒光りする木の剣となった。
なんの木か、気になったりはしない。気になるなんてことはないのだ。
相変わずの迷宮だが、やはり黒くとも光っているのは人目をひいたのか、ほどなく拾われることになった。
だがしかし、この探索者、すぐに使うつもりがないのか、荷物にくくりつけられてしまった。
さらに気になるのは拾われた時の視線である。
吾輩、剣であるのだから刀身が重要である。なので刀身がじっくり見られることはあるのだが、この探索者、柄を見ているのである。
「この太さ、この色つや…」
およそ剣に対する感想ではない。
その視線と感想は何度目かの休憩の時に判明した。
吾輩、剣である。
マッサージするためにあるのではない。
確かに柄は滑らかであるが、びしょびしょにされた上にそんなところに突っ込まれては困惑しきりなのである。
そして、多少安全であるゾーンとはいえ、大きな声を上げたうえに呆けてしまってはいけないのである。
案の定、吾輩は探索者とともにモンスターにかみ砕かれてしまった。
書き続けるって大変ですね。