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006 吾輩、酷使される。
吾輩、艶ある木の剣である。
今、吾輩は見習い探索者に振るわれている。
ここは見習いが来れるような場所なので、相手は動きが遅く弱いスライムばかり。
弱いスライムとはいえ、タダの剣では溶かされて終わりである。
吾輩、頑丈になったものである。
見習い探索者たちは吾輩を使いまわし、順繰りにスライム狩りをしていく。
割れたり、傷ついたスライムの核は少々とは言え、金になるらしく、少年少女たちは嬉々として回収していく。
もちろん、経験を得る、という目的もあるらしい。
さて、何匹のスライムを屠ったであろうか。
吾輩の表面に変化が訪れた。
あれほど美しかった艶が失われたのである。
順番が回ってきた少年は気が付いていない。
この少年はさきほどから吾輩の扱いが荒いので困るのである。
そう、吾輩、これは確信である。
何度目か、スライムめがけてたたきつけられる吾輩。
運よく、であろう、核に向かう吾輩の刃。
そして、勢いよく地面にもたたきつけられた、刀身の溶けはじめた吾輩は、
メキリ、と折れた。