002 吾輩、拾得される
吾輩、木の剣である。
ここは迷宮、の浅い階層であるはず。
まだまだ宝箱などもなく、落ちているアイテムも少ない。吾輩、ある意味レアである。
目的?剣に生まれたからには使ってもらうことに決まっているのである。
ただ、レアとはいっても浅い階層、探索者、迷宮にとっては侵入者でエサであるが、武器を失うこともなく、木の剣が必要になるほど切羽詰まっていることもない。
見つかったとしても、良くて「ほっとけ」といわれる程度である。吾輩、寂しくはない。
吾輩の近くで探索者とスライムが出くわした。
この階層のスライムは強くはないが、厄介である。それなりに上等な武器、技術、もしくは魔法がなければ武器が痛むのである。吾輩、触れたくはないである。
スライムを避けて進もうとした、おそらく初級探索者が、同時に吾輩を見つけた。
吾輩、とうとう拾われた。初の拾得である。そして「ちょうど良いや」とばかりにスライムの核めがけて突き刺された。
溶ける吾輩の刀身、倒されるスライム。初級探索者に一撃で倒されるとは情けない、いや、吾輩の攻撃力が高かったに違いない。
ほぼ溶けてしまった吾輩の刀身、スライムから抜かれ、そのまま捨てられようとしたとき、
初級探索者の脇から飛びだすウサギ型のモンスター。
仲間からの掛け声で驚きつつもウサギに殴りかかる初級探索者。その手にあるのはもちろん吾輩である。
スライムに溶かされかけた吾輩である。木の剣として優秀なはずの吾輩も、ウサギの頭に入った一撃を最後に、折れた。