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「いよいよか……」

 あれから時間も経ち撮影会もイベントも無事に終わり志軌たちは、後処理のある由夢を近くにあった公園で待っていた。

「…………」

 これから告白する志軌が緊張しているのは当然だが、愛梨もどこか落ち着かない様子で無言でいる。どこか気になるのか、髪を結っているヘアゴムをしきりに触っている。

「どうしたんだよ」

「別に。ほっといて。志軌はこれからのこと考え時なさいよ」

 気になって話しかけるが、取り付く島もない。

「俺が悪かったなら謝るよ。だからそんな怒るなって」

 それは志軌にとってこの気まずい雰囲気をどうにかしようとしての言葉だった。しかし愛梨にはそれが不快だった。

「理由も分からないのにそんなこと言うの志軌の悪いとこ。何にも分からないくせに適当なこと言わないで」

 ふいっと顔を横に向けてしまう愛梨。どうにかしたいとは思いつつも、どうしようもない志軌は黙っていることにした。

 そしてしばらくすると由夢がやってくる。重い空気の状態で二人っきりでいることが、辛くなり始めていた志軌には喜ばしいことだ。

「おまたせー。それにしても改まって呼び出すなんて、どしたの? 珍しいね」

「……志軌が用事あるんだって」

 志軌に変わって、愛梨が会話を進める。

「んー、なんだか空気悪いね? ほらもっと明るくなろうよー」

 一目見ただけでそのことを看破した由夢は、場を盛り上げるためにわざと明るくふるまう。

「気にしないで、由夢。私は……お邪魔虫だから。先に行ってるわ」

「え? どういうこと愛梨ちゃん?」

 何故そんなことを愛梨が言うのか理解できない由夢は、聞き返すが愛梨は答える気はない様子だった。

「ばいばい」

「ちょっと待ってよ、愛梨ちゃんっ」

 それだけを言い残して、止める由夢の言葉も聞かないまま愛梨は去っていった。

「喧嘩でもしたの? 私が原因?」

「いや……特には何もないはず……だ」

 志軌は記憶をさかのぼるが、失言や変な行動を取った覚えはなかった。

「でも愛梨ちゃん、泣いてたよ……」

「え?」

「さっき少ししか見えなかったけど、目元潤んでたよ愛梨ちゃん」

 納得のいかない志軌は、その言葉が信じられなかった。出会ってから今までの長い間の中で、愛梨が泣いたことなど小学生の時の一度や二度しかなかったからだ。そして泣くような理由に心当たりもない。

「ほんとか?」

「志軌くん、追って。愛梨ちゃんきっと無理してる。このままじゃ、もう会ってくれなくなっちゃうかもしれないよ」

 由夢はそう言いつつも、ほとんど確信に近い気持ちを抱いていた。

「私はね志軌くん。三人仲良くしてるのが好きなの。誰かがそこからかけちゃうのは嫌。ずっとこれまで一緒だったんだよ」

 三人が仲良くなってから喧嘩したことはあっても、離れ離れになってしまったことは一度もない。由夢がプロゲーマーになってからも、頻度は少ないものの連絡は必ずとっていた。

「愛梨ちゃんいい子だから。昔から言いたいことも我慢しちゃってるんだよ」

「……分かった」

 志軌には愛梨がそこまで辛そうにしている理由が分からなかった。しかし、愛梨が辛そうにしていることは志軌も薄々ながら気付いていた。それでも、由夢に想いを告げるということが志軌の中で大きなウェイトをしめていて、気が回らなかったのだ。愛梨がわざと気丈に振る舞っていたのも大きい。

「待ってるから、心配しないで。二人で戻ってこないと許さないから」

 由夢にそう言われた志軌はその場を後にした。

 走って後を追いかける志軌が、歩いている愛梨に追いつくまで時間はかからなかった。幸いまだ時間もたっていなかったこともあって、見失うほどの距離が空いてなかった。

「愛梨!」

 後ろ姿を見つけ、名前を叫ぶが愛梨は振り向きもせずに足を止めることなく先へと進んでいく。

 どんどん先に進んでいく愛梨に追いつき、志軌は腕を掴んで無理やり止める。

「待てって」

 それでも最初は無視しようとしたのか抵抗された。しかし、すぐに諦めたのか後ろを振り返った。

「なによ! 由夢ちゃん放っておいて私のとこになんで来たのよ」

 振り返った愛梨の目元に泣いた跡があることに気付く。愛梨を追っているときに周囲に人気が少ないことに気付いていたのだが、それは愛梨が狙ってやったことなのだと察する。

「お前のことが心配だったんだよ。なんだよあれ。由夢も気にしてたぞ」

「志軌が好きなのは……私じゃなくて由夢ちゃんでしょ。そんなこと気にしないで二人で仲良くやってればいいのよ!」

 一度は乾いた涙も、叫び声と共に再び溢れ、頬を濡らす。

「あ、愛梨……」

 久々に見る泣き顔に思わず困惑してしまう。それでも、そんな表情をさせ続けるのが嫌でなんとか言葉を紡ぐ。

「なんでそんなこと言うんだよ。……確かにさ、俺が好きなのは由夢だよ。でもお前の事だって大事なんだよ」

「大事? 大事って何よ。志軌は私を友達とか幼馴染としか思ってないじゃない。それだったら、私にそんなこと言わないでよ。そんなに優しくしないでよ。私のこと何も知らないくせに……」

「何にも知らないなんてそんな訳ないだろ。今までずっと一緒にいたじゃないか」

 最初に出会ってからすでに十年以上の月日がたっている。それだけの時間があれば相手のことを知ることも可能だ。

「嘘。私が自分の事ボクって呼ぶ理由も、ポニーテールにしてる理由も……こんなにも心が揺らいでる理由も、由夢ちゃんばっか見てて知らないくせにっ!」

「それってどういう……」

「私が志軌の事好きだってことだよ! …………ッ」

 それがずっと伝えずに我慢してきたことだった。今とて言おうとしていた訳ではなかった。しかし、感情が高ぶって思わず口をついてしまった。

「え……。でもずっと由夢とのこと応援してくれてたじゃないか」

「だって、だって……志軌が先に自分の好きな人のこと教えてくるんだもん……応援するしかないじゃない」

 あわよくばその中で、自分のことを意識してくれればという気持ちが無かったわけではない。しかしそれは叶わぬ願いだった。

「気を引きたくて、ボクって呼び始めたりちょっと意地悪なこととかもしたのに。由夢ちゃんに夢中で全然気づいてくれないし……。私がポニーテールにしてるの、志軌が昔似合ってるって褒めてくれたからなんだよ」

「……すまん」

「ずっと、ずっと好きだったんだよ。なのに、志軌は私を女として見てくれない。それが辛かった。ほんとうは嫌だけど、由夢ちゃんと比べられてそれで由夢ちゃんに負けたなら素直に諦められた。でも、志軌は私をただの幼馴染としか、友達としか見てくれなかった。おなじ土俵にすら立たせてくれなかった……」

「…………」

 今までに露ほどにも思ったことのなかった真実に、二の句が継げなくなっていた。知らず知らずとはいえ、愛梨を傷つけてしまっていたことがショックだった。

「ねえ、志軌。私ってそんなに魅力ない?」

 言いながら愛梨は潤んだ瞳で、下から志軌の様子をうかがうように見上げてくる。それは長い間共にいる志軌ですらドキッとしてしまう効果があった。

「そんな訳、ない。でも……」

 その言葉はお世辞でも、この場を収めるためだけの言葉でもなく本心だ。それでも、好きな人は由夢に変わりない。そのことをしっかり伝えようとすると、その前に愛梨が割って入った。

「分かってる。……分かってるからその先は言わないで」

「悪い……」

「ふふっ、志軌謝ってばっかね」

 少し気持ちが落ち着いてきたのか、泣き止んだ愛梨は少し頬を緩めた。

「はぁ。なんだか言いたいこと全部吐き出したらすっきりしちゃった」

 これまでずっとため込んでいたものを、言いきった愛梨は憑き物が落ちたように普段通りの様子に戻っていた。

「それはよかったよ」

「別に志軌を許したわけじゃないんだけど」

「うっ」

「冗談よ。気にしてない……なんて流石に言えないけど、ボクだって志軌や由夢ちゃんと喧嘩したいわけじゃないし。それにもうずっと前に、覚悟してたことだから。今はちょっと感情が爆発しちゃったけど」

 根本的な解決にはなっていないが、愛梨の調子が普段通りに戻ってきていることに志軌は安堵する。

「別にもう無理してボクにする必要ないんじゃないか」

 先ほどの話を聞いていて分かったことだが、愛梨の一人称は私から変わってはいない。気を引きたいという当初の目的も本人に語ってしまった以上、続ける理由も薄い。

「ううん。続けるよ。だいぶ慣れてきちゃったし、それになにより、ボクはまだ志軌のこと諦めてないから」

「……え?」

「だって別にまだ志軌は誰のものでもないでしょ。だったらボクにもまだチャンスはあるってこと。由夢ちゃんも言ってたでしょ、夢を叶えるのには諦めないことが重要だって」

 でもそれもこの後に志軌が由夢のところに戻って告白すれば、結果によってはその努力も無意味になってしまう。そう思ったことが顔にでていたのか愛梨は言葉を続ける。

「そ、れ、に。付き合えたとしても、別れるかもしれないでしょ」

「それ告白しようとしている相手に言う言葉じゃないな」

「ふんっ、今までのお返し。それより早く戻りましょ。由夢ちゃんが待ってるよ」

 最初は由夢から追うように言われたものの、呼び出しておいて長時間待たせるのはよろしくない。それは志軌も同じ意見だったので、再び来た道を戻ろうとしたその時だった。

 ポケットに入れたままにしていたスマホが着信音を奏でたのだ。

「……由夢?」

 着信画面にはそう表示されていた。話題に出ていた当の本人からの電話に驚きながらも電話にでる。

「大丈夫だよ、愛梨とは仲直りできた。……え? ……ああ、そうか。分かった……大丈夫、気にすんな」

 通話が終わると、会話の内容をそのまま愛梨にも伝える。

「なんか急用ができたから戻るって。愛梨にも謝っといてくれって、頼まれた」

「あーあ、折角覚悟決めてたのに残念だね」

 そう言うものの、声色は先ほどよりも僅かに明るくなっているのを、志軌は聞き逃さない。

「何だか嬉しそうに聞こえるんだが」

「そんなことないわよ。それよりいいの? 由夢ちゃんに想い告げられなくて」

「……いいよ。別に由夢がまだ外国に行くとは決まったわけじゃないし」

「後悔しても知らないわよ」

「愛梨と仲悪くなってまで、無理にするほどのことじゃないよ。好きなのは由夢だけど、愛梨だって俺には大切な存在なんだから」

「っ……。なによそれ。か、揶揄ってるの?」」

 そんなことを言われるとは思ってもみなかった愛梨は、思わず赤くなってしまい、それを隠そうと顔をそらす。

「事実なんだからしょうがないだろ。お前だってずっと一緒にいたんだから今更会えなくなるなんて考えられないよ……痛っ」

 さらに恥ずかしいことを言い続ける志軌を、愛梨は軽く叩いてやめさせる。

「女たらし」

「いやいやいや。なんでそうなるんだよ」

「由夢ちゃんが好きな癖に。そんな期待させるようなこと言うなんて、志軌がそんなひどい男だなんて知らなかった」

「思ってることをただ口にしただけだって」

「んんーーーっ! だ、か、ら! そういうとこだって、言ってるのよ! もう志軌は黙ってて。ほら、帰ろ」

 愛梨はそう言うと、志軌の手を取って歩き出した。由夢がいないのであれば、公園に戻る理由はない。他に用事もなく、翌日には学校もあるため帰宅することにしたのだ。

 荷物を置いてある姉の家へと戻ってから、駅へと向かい電車に乗る。そして目的の駅に着くまで、愛梨は手を離すことなくそのまま繋いだままだった。



 数日後。

 学校から帰ってきたた愛梨がくつろいでいると、チャイムが鳴る音が聞こえ、家に誰もいないことを思い出し玄関へと向かった。そしてドアを開けると思いもよらぬ相手がそこにいた。

「来ちゃった」

「なによその、彼氏の家に突然遊びに来た彼女みたいな台詞は……由夢ちゃん」

「えへへー」

 先日とは違い私服姿の由夢は変装のためか、伊達メガネと帽子をしていた。テレビ等でも由夢の姿を見ることもあるため、多くの人がその存在を知っている。

「どうしたの?」

「ちょっと、時間で来たからこの前のイベントで撮った写真渡そうと思って」

 そう言って右手に持っていた封筒を差し出す。

「あ、ありがと由夢ちゃん」

「今暇?」

「うん、大丈夫だけど」

「それじゃあ、ちょっと散歩しようよ。久しぶりにゆっくりしたいし」

 その提案は愛梨にとっても、嬉しいことだった。私生活の中であったことなど、由夢に話したいことはまだまだ尽きていないのだ。

 受け取った写真を一度部屋に置き、再び玄関へ戻ってくる。

「志軌も呼ぶ? 由夢ちゃんと会えるって聞けば飛んでくるよ」

「んーん、今日は愛梨ちゃんと話に来たの。志軌くんは、こないだ愛梨ちゃん泣かしたからお灸を据えるってことで」

「分かった」

 そうして二人だけで、近所を歩きに向かう。

「こうして一緒に歩くの久しぶりだね」

 久しぶりに歩く地元は、由夢が知っていた時と所々景色が変っている部分があり、それが寂しくもあり楽しくもあった。

「あー、あのお店無くなっちゃってる……好きだったのにー」

 愛梨にとって、その気持ちは既に経験していることでありもう慣れてしまったことだ。そのことに一喜一憂して表情がころころと変わる由夢の姿は見ていて面白い。

「愛梨ちゃん、あのあと志軌くんとちゃんとお話しした?」

 仲直りしたことは知っていても、ことの顛末までは知らない由夢は心配して問いかける。

「うん、大丈夫。……というか」

「うん?」

「好きって言っちゃった」

 それを聞いた由夢は驚きつつも、どこか落ち着いている様子だった。

「そっか。それで志軌くんなんて答えたの?」

「ううん。ボクが返事はいいって言ったから聞いてない。志軌が好きな人は知ってるから……。それよりあんまり驚かないんだ、ボクが志軌のこと好きだってこと」

「だって、愛梨ちゃんから直接聞いたことはなかったけど、分かりやすいんだもん。バレンタインに手作りのチョコ一生懸命作ってたんだもん。それに髪結んでるゴムずっと志軌くんから貰ったの使ってたりするから」

 愛梨が髪型をポニーテールにしてるのはそれを志軌に褒められたからであり、髪をまとめているヘアゴムは誕生日プレゼントで志軌から貰ったものである。

「志軌は全然気づいてなかったけどね」

「鈍感だからね、志軌くんは」

 どこか実感のこもった言い方に、愛梨は気になっていたことを問いかけた。

「由夢ちゃんってもしかして……志軌のこと好きだったり、する?」

「なんで?」

 小首をかしげる由夢は、本当に不思議そうにしているだけにみえて、どう思っているかはその感情から読み取ることはできない。

「今なんか実感ありそうな言い方だったし、それに……ボクたちが小学生の時に志軌くんがプロゲーマーになるって決めた時、志軌やボクはモニターの方見てたけど、由夢ちゃんは志軌くんの方見てたよね」

「よくそんな昔の事覚えてたね愛梨ちゃん」

 それは由夢もプロゲーマーになろうと決めた日でもあり、その時のことは覚えていた。

「ずっと気になってたから」

「……。愛梨ちゃんには特別に教えてあげる。志軌くんは私の初恋相手だよ」

 隠すことなく堂々とそう告げる。しかしその答えは愛梨が望んだもののようでそうではない。

「今は? 今も好きなの?」

 由夢が志軌に好意をいだいたことがある、というのは愛梨が予想した範囲ないのことであった。だからこそ、志軌をたきつけたのだ。しかし、本当に聞きたいのは”今”どう思っているかだ。

「うーん……それは秘密かな」

 しかし由夢には答える気がなかった。。

「ここで答えないのは、肯定してるのと同じだと思うんだけど……」

「ははは。それは考えすぎだよー。私のことは気にしないで、愛梨ちゃんは自分の恋を頑張って」

「……うん、分かった頑張る。ありがと」

 気になりはするものの、再度問いかけてもはぐらかされてしまうだけだろう。そう思った愛梨は素直に由夢の言葉を受け取ることにした。

「ん、それでこそ愛梨ちゃんだよ」

「…………話は変わるけど由夢ちゃん、外国をメインに活動するようになるって噂本当なの?」

 志軌の告白を邪魔してしまったのは愛梨だ。その自覚があるために、少しだけでも志軌の力になりたかった。ずっと真偽の気になっていた噂の答えをもしかしたら教えてくれるかも、という可能性にかけた。

「あ、その話」

 由夢はスマホを取り出し、画面を見つめ「んー、まあちょっと早いけどいいかな、愛梨ちゃんだし」と一人呟く。

「もう少しで公式からそのことで発表があるんだけど、特別に少し先に教えちゃうね。その噂って、アメリカにゲーミングハウス建ててるのが原因で流れ出したんだと思うんだけど、それ勘違いなんだ」

「勘違い?」

「うん。ゲーミングハウスは建ててるんだけど、それはアメリカで活動する”新しいチーム”のためのものなの。だから私たちには全く関係ない話だよ」

「はあー。なんだ、そうだったんだ。よかった由夢ちゃんと離れ離れになるかと思って心配してたんだよ」

 大きく安堵の息を吐いて、ホッとした表情をする。

「大丈夫だよ。私だって志軌くんや愛梨ちゃんと、そんな遠くまで離れたくないからね」

 その言葉を聞けて一安心だ。安心した愛梨を見て、心配性だなぁと由夢は微笑む。そして少し言いにくそうにしながらも、別れを切り出す。

「……それじゃあ私はそろそろ時間だから、戻るね。これからみんなで練習するんだ」

「分かった。由夢ちゃんも頑張ってね。また試合の時は配信見ながら応援してるから」

 名残惜しいが、忙しい中無理に会いに来てくれた由夢に無茶を言うことはできない。

「それじゃ、今度の試合も負けられないね。愛梨ちゃんに無様な姿なんて見せられないもん」

 そうにこやかに言うと、由夢はばいばいと手を振って愛梨と別れ歩いていった。

「……ボクも頑張らないと」



「なにを頑張るんだ」

 帰ろうとしていた愛梨に、偶然通りかかった志軌が背後から話しかけた。

「ッ志軌!? ……驚かさないでよ」

「別に驚かしたつもりはないんだが。それで頑張るって何を?」

「志軌には秘密。これは女の子だけの話だから」

「?」

 今来たばかりの志軌は、由夢がここにいたことを知らず、どういう意味なのか理解しようがない。

「気にしない気にしない。志軌が頑張ってるようにボクも頑張ろうって決めただけだから。志軌はそのままの志軌でいて。そのままの馬鹿な志軌で」

「なんで言い直したのかわかないけど、まあいいか」

 愛梨に馬鹿と言われるのは今に始まったことではないし、本気で馬鹿と言っているわけでもないことは志軌にも分かっているため適当に流す。

「そうそう、小さいこと気にするとモテないよ」

「……」

 それを愛梨が言うのか、と思ったが口には出来ない。

「志軌、ボクの部屋くる? さっき、イベントの時の写真届いたから一緒に見ようよ」

「ああ。暇すぎて適当に出歩いてたぐらいだし、行くよ」

 先を行く愛梨の後ろを志軌はついていく。今度写真を撮るときはそこに写る全員がプロゲーマーであることを願いながら。

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