6
志軌は翌朝、香ばしい匂いに目を覚ます。
ベッドの上から音のする方に視線を向けると、エプロンを付けた愛梨が朝食を作っていた。既に着替え終え、髪もいつものポニーテールへと結っていて既に準備はできているようだ。
「……志軌起きた?」
暫くその様子を見守っていると、愛梨に気付かれ声をかけられる。もう少しこのまま眺めていようと思っていたのだが、ばれてしまっては仕方ない。志軌は体を起こしつつ「おはよう」と言った。
「なによ、のぞき見?」
「起きるタイミングを見失ってただけだよ」
昨夜のことがあるし、とは流石に言えなかった。志軌は愛梨が実は起きていたなどと知らないからだ。
「ふーん、まあいいわ。ほら、朝ごはん食べましょう」
丁度調理し終えた愛梨はテーブルへと作り終えた料理を運ぶ。
トースト、目玉焼き、ウィンナーと定番のメニューが並んでいく。
「なんだか夫婦みたいだな」
朝起きて料理をつくってくれる同世代の女性がいるなど、そうでなければそうそう起こるシチュエーションではない。
「なっ、ばっかじゃないの!? な、なんで、し、志軌とけ、けっ結婚……しなきゃならないの!?」
顔を真っ赤に染め声を荒げる愛梨をみて料理の乗った皿を並べ終わった後に言って良かったと志軌は安堵した。もしそうしていたら、朝ごはんは無しになっていただろう。
「そんな慌てんなって、ただのたとえ話だろ」
どうしてそこまで気が動転しているのか分からない志軌は不思議で仕方ない。
「だからって志軌は由夢ちゃんが好きなんだから私にそんなこと言っちゃっだめよ!」
そう言われた志軌はくすっと笑う。
「ちょっとなに?」
「いや、久しぶりに自分の事”私”って言ったなって思って」
幼いころは一人称が私だった愛梨だったがいつの間にかボクへと変わっていた。しかし今でも慌てた時など自身に余裕がなくなった時には私と言ってしまうことがあった。
「なによ、似合わないって言いたいの?」
「誰もそんなこと言ってないだろ、ただ懐かしいなって思ったんだよ。それより冷めちゃう前に飯食おうぜ」
尚も視線を向け続ける愛梨から逃れるようにトーストを手に取り口に運ぶ。程よく染み渡ったバターの風味と匂い、そして少し焦げたトーストのカリッとした食感。そんなトーストを気に入った志軌が無言で口を動かしていると、それを静かに見つめていた愛梨に気付く。
「なんだよ、食いにくいんだけど」
「…………」
「なんだよ……愛梨も食べろって。早くアキバ行こうぜ」
愛梨が小さな口でモグモグと頬張る姿は可愛らしいものだが、志軌は早くアキバへと向かいデバイスを見て回りたかった。返答のない愛梨を不審に思いながらも食べ続けていると、愛梨が口を開いた。
「ねえ志軌。どうせならボクの行きたいところに付き合ってよ」
イベントは午後からだ。早くに起きたため、まだ時間に余裕はある。そのため近場であるならば、
「いや、俺はマウスとか見に」
「最後くらいいいでしょ」
志軌の言葉に耳を貸す気のない愛梨はぴしゃりと言い放ち、時間を気にしたように時計に目を向ける。
最後とはどういう意味なのか問いかけたかったが、愛梨の身にまとう雰囲気がそれを許さない。
「……分かった。付いてくよ」
初めて見る愛梨の余裕のない姿に志軌は頷いた。
「ん、ありがと」
礼を言う愛梨はどこか寂し気に笑った。
食事も終わり外出する準備が整った志軌はリュックを背負い愛梨に導かれるようにして駅へ向かう。入っているのはキーボードなどの軽いもののため背負って歩くのに支障はない。
表には出さないが志軌は、少し様子のおかしい愛梨のことが気がかりだった。原因を探ろうと過去を振り返るが、記憶上では特別変ったことがあったという訳でもない。それでも、いつもの調子とどこか違う気がするのだ
「どこ行くのかぐらい教えてくれよ」
「秘密。楽しみにしててよ」
何かのヒントになるかもと問いかけるが、はぐらかされてしまう。ただその声色からは不機嫌な色はなく、むしろこれからを楽しもうとしている雰囲気が伝わってくる。それがさらに志軌を混乱させる。
しばらく歩きながら考えるも、一向に糸口が見えない。そのため一層の事考えるのをやめることにした。考えても答えが出ないため、愛梨に言われた通り純粋にこれからの出来事を楽しもうと決めたのだ。
そうこう思考しているといつの間にか駅へとたどり着き、二人は電車へと乗り込んだ。日光がとどかずエアコンの効いた車内は極楽だ。都心故の人の多さはあるがそれでも、満員というわけではない。
そんな空間をくつろぐ志軌の隣で愛梨は楽しそうに話しかけてくる。その内容はこれまであったことや、今日のこれからの事、志軌の知らなかったことなど様々だ。久々に機嫌の良い愛梨に先ほどまで勘繰っていたことは思い過ごしだったかと安堵し、会話に乗る。
「そういえばボク、志軌が由夢ちゃんのこと好きになった理由とか聞いたことなかった……聞かせてよ」
「俺が言おうとしたら愛梨が不機嫌になってたんだろ」
由夢のことで相談するときに熱が入ってしまい必要以上に志軌が語ってしまった時など、露骨に機嫌が悪そうにしていた。そのこともあって、自ら望んで話すことは今までなかった。
「いいでしょ、聞かせてよ」
だが今日は打って変わってその話を聞きたいようで食い下がってくる。志軌としては今更恥ずかしがる相手ではないためまあいいかと軽い気持ちで話始める。
「そうだな、まあ言っちゃえば一目惚れだったかな」
「一目惚れって、ボクたちが最初に会ったのって幼稚園だったよね」
同じ幼稚園で三人は出会い、ほぼ同じ時期に仲良くなったのだ。つまり十年以上前からの恋なのだと愛梨は驚く。志軌が由夢のことを好きなのは知っていてもその始まりまでは知らなかった。
「長いね」
呆れたような感心したような声色の愛梨に、志軌は自嘲気味に笑って返す。
「俺だってどうかとは思うよ。でも告白するチャンスが無かったというかいざという時にタイミングがつかめなかったというか」
実は志軌とて告白をしようと試みたことが一度もないわけではなかった。しかし由夢の都合が悪くなったりとその機会が訪れることは無かった。そして一度チャンスを逃せば再度決意を固めるのには時間がかかる。そのため実際に行動に起こせたことは一度もない。
「ふーん……。そのことボク聞いたことなかったんだけど」
「愛梨に言えば絶対笑われるって思ったから言わなかったんだよ」
「別に笑わないわよ。頑張った結果駄目だった人を笑うほどボク性格悪いつもりじゃないんだけど」
言われたことが心外だと志軌を睨みつける。
「分かってるよ…………ありがとな愛梨」
「え?」
唐突に礼を言われ、思わずきょとんとしてしまう。
「だからありがとって。これまで相談に乗ってくれて、助かったよ」
「らしくないこと言うね」
普段はお互いに礼を言うことはほとんどない。言わなくても伝わっていると言うこともあるのだが一番の理由は、今更素直になるのが気恥ずかしいからだ。長年の付き合いは気軽に話しやすいことが増える一面と反対に言葉にしにくくなってしまう一面と二つの面があった。
「そんなの分かってるけど、本当に助かったんだよ」
どれだけ仲が良くても異性のことは分かりずらい。そんな時に手助けしてくれる存在が大きかった。
「そ。まあありがたく受け取っておくわ、その言葉」
素っ気ない言葉だがそれとは裏腹に表情は楽しそうだ。その理由は単純なもので志軌が恥ずかしそうに視線をそらしているからだった。
「志軌ならうまくいくと思うよ、由夢ちゃんも悪くは思ってないはずだから」
恋愛感情かどうかは定かではないが少なくとも好意を持っていることは、由夢と話している間に愛梨が感じていたことだった。バレンタインデーに愛梨と由夢で一緒に志軌に渡す手作りチョコを作ったこともある。
「そうだといいけどな」
だが当事者である志軌はそう簡単に安堵することはできない。
「あーあ、こうして志軌から相談聞くのも終わりなのよね……それはそれで寂しいものね」
「んだよ告白しろって言ってたのそっちだろ」
「そうなんだけど、もう長い間話聞いてたからそれはそれで、ね」
愛梨の誕生日やクリスマスなどのイベントの時だけにかかわらず、夏休みに三人で遊びに行くときなど事あるごとに志軌はよく相談していた。それがこの先無くなるのはどこか虚無感を感じさせる。
「別に付き合えたとしてもそれがゴールって訳じゃないし、相談したいことはまだまだある」
その言葉は本心でもあったが、どこか疎外感を感じている愛梨を思っての言葉でもあった。志軌としては由夢と付き合えたからといって愛梨と過ごす時間を減らしたくなかった。古くからの付き合いで同じゲームをできる知り合いというものは重要だ。
「そんなこと言って由夢ちゃんといちゃいちゃするんでしょ、そういうのはボクのいないところでやってよね」
「はいはい」
ジト目で睨んでくる愛梨から逃れるように、スマホを取り出して適当なSNSを巡回する。このまま話していても痛いところを突かれると思ったからだ。少しして隣をチラッと見てみると愛梨も同じようにスマホを触っていた。女の子らしいピンク色のカバーと小さなG19の形のストラップがついているのだが、その画面にはこの辺りらしい地図が表示されていた。大方これからの道のりを確認しているのだろう。
「遠いのか?」
イベント会場のある秋葉原まではあと数駅程度だ。出来ればあまり遠くへは行きたくない。
「ううん。次の駅かな。もうつくはずよ」
だがそんな心配は杞憂だった。
そしてその言葉通り駅に近づいてきた電車は徐々に速度を落とし、やがて停車する。同じ駅で乗り降りする人は多く、出入口は大勢の人でごった返す。そんな中、志軌と愛梨ははぐれそうになりつつもなんとか一緒に下車した。
「多いな」
志軌たちの暮らす地元ではここまで人が集まることは滅多にない。そのため少し疲れた様子だ。
「ここ、人気なんだよ、知らなかった?」
人気の店が集まったショッピングモールやこの辺りで一番大きい映画館、遊園地や動物園も近くにあり若い男女や子連れの夫婦などが多く訪れる場所である。
「ほら、行こ」
人の多さに呑まれる志軌とは裏腹に愛梨は手を引いて先へと歩き出す。駅を出た愛梨は時折足を止めスマホを使って進行方向を確認しながら、目的地へと向かっていく。少し強引な行動だが、悪い気がするわけではない志軌はなされるがままだ。しかしそんな中でも一つだけ気になることがあった。
「そろそろどこ行くか教えてくれよ」
バスなどに乗らないところを見るとそこまで距離は離れていないのだろう。そう予想をたてながら尋ねる。
「んー。ちょっと、服見に行きたいのよね」
「服?」
そんなことのためにイベントの前にわざわざここに来たのかと、文句の一つでも言おうかと思った志軌だったが愛梨の目を見てその考えを改める。これからのことを心底楽しみにしているそんな光の宿った瞳だったからだ。そこで志軌は別のことを口にした。
「でも、買えるだけの金あるのか?」
「んーん。ただ志軌と見て回りたいのよ」
愛梨は普段欲しいと思った物は買い、迷うぐらいの物なら我慢して買わないというはっきりしたタイプだ。だからこそ買わずにウインドウショッピングをするという行為をすることは今までに無かった。
志軌は不審に思いつつも、女性はそういうのが好きだと以前由夢に聞かされたことを思い出し、こういう時もあるかと納得した。
ジリジリと日差しに焼かれながら、街路樹の植えられた道を進んで行くと次第に煌びやかな装飾がされた店がだんだんと増えてくる。オシャレなカフェや女性客で賑わうスイーツ店などに志軌はどこか居心地の悪さを感じる。愛梨と一緒でなければ絶対に訪れない場所だ。
「ほら、着いたわよ」
そんなことを考えていると立ち止まった愛梨から声をかけられる。突然のことにぶつかりそうになりながらも、すんでのところで立ち止まった志軌は辺りを見まわたす。
そこには女性服が外からも見えるようにショーウィンドに飾られている店が数多く存在し、その周辺を多くの男女が一緒になって歩いている。その距離の近さから見るにほとんどがカップルだろう。
「あ、ほら。志軌これ可愛いと思わない?」
そんな中愛梨は、飾られている服を楽しそうに見つめている。
「え? ああ、そうだな。でもそういうの普段着ないだろ?」
視線の先にあった服は可愛らしいフリルなどの装飾がついている。しかし今まではこういった女性らしい洋服よりも、動きやすいカジュアルな物を愛梨は好んで着ていた。
「別にボクが着るとか着ないとかってことは関係ないの。もう、ほんといつまでたっても乙女心がわからないんだから」
無粋なことを言う志軌を怒りながらも、自分の好みを覚えてくれていたことに微笑む。
「罰としてボクに似合いそうな服選んでみてよ」
挑発するように含み笑いをする愛梨。
「嫌だ。どうせまた馬鹿にすんだろ」
これまでにも似たようなやり取りはしたことがある。しかし、そんな時に志軌が選んだ服は大抵が不評だった。
「今日はそんなこと言わないよ。だから、ね」
渋る志軌の背中を押す。
「じゃあ…………これかな」
自分が良いなと思ったやつの中で愛梨に似合いそうなものを指さす。
「へー……」
そう一言だけ言ってしげしげとその服を見つめる。
「なんだよ」
その無言の時間が居心地悪く愛梨に声をかける。
「んーん、何でもないわよ」
そっけない返事ではあったが、その声はどこか弾んでいるように聞こえた。
「楽しそうだな」
思ったことをそのまま告げると、一瞬きょとんとした愛梨が笑顔を向ける。
「あはは。うん、楽しい」
「そっか」
一通りショーウィンドを見終えると、愛梨は志軌の手を引いて次の店へと移動し今度はその中へと志軌を誘導する。
「あ、おいッ」
「ボクだけじゃなくて、志軌に似合いそうな服も探そうよ」
その言葉通り、二件目のこの店には男性服も取り揃えられていた。
「いいよ、どうせ買わないんだろ? だったら別に」
「ほんと分かってないわね。ほら、そんなこと言わないで行きましょ」
無粋なことを言う志軌の言葉に、食い気味に答えると売り場へと誘導する。
「ボクが選んでいい?」
あまり乗り気でないことを察しているのか、そう提案する愛梨に頷いて返事をする。
「じゃあ……そうね……」
時折志軌を見てああでもないこうでもないと、真剣な表情をして吟味している。先ほど自分の服を選んでいた時以上に悩んでいるようだ。何か言うと「うるさい」と言い返されてしまえそうだと、静かに見守る。
真面目に自分のことを考えてくれていることを嬉しく思いながらも、どうして今日はそんなことをするのかと疑問に思う。ウィンドウショッピングもそうだが、愛梨が志軌の服を選ぶことも無かった。だがそれを口にするまえに志軌の目の前に愛梨が選んだ服が突き出され、タイミングを見失う。
「これなんてどう?」
自分では選ばないだろうと思うタイプのシャツでは合ったが、確かに似合いそうだと思える説得力があった。
「へえ、いいな。……というかそういう服着て欲しいのか?」
「うーん……これはただ似合うと思った、ってだけよ。今みたいな服装の方が志軌らしさが出ててボクは好きかなー」
そんなことを言いつつ視線は未だに展示されている服の方を向いている。まだ服を選びたりないようだ。
「まだ探すのか」
「んー、どうせなら一式選びたいなーって思って……」
そう言いながら、店内をゆっくりと歩き回り始める。離れるわけにもいかなく後ろを付かず離れずでついていくと、先を行く愛梨に店員が話しかけるのが見えた。こういう場で話しかけられるのが苦手な志軌はそれを少し距離を置いて見つめる。
しばしの時間が流れた後、すっかり打ち解けた様子の愛梨は店員と別れて近づいてきた。
「彼氏さんの服選びに来たんですかーって言われちゃった」
困惑する姿を想像していたのか喜々とした様子で話すが、志軌はしれっと答える。
「んなわけないのにな。周りからはそう見えるもんなのか」
「……うん、だからちゃんと言っといた。ボクの片思いですって」
「げほっ、お、おまッ……」
想像もしなかった言葉を返され思わず咳込んでしまう。瞬間、どこからか微笑ましいものを見るような視線を感じる気がした。
「あははははっ」
愛梨はしてやったりとほくそ笑んで一人で先を行く。
「お、おい、なんでそんな嘘つくんだよ」
そんな愛梨の後ろをすぐに追い、問いかける。
「いいでしょ、別に。志軌の面白い顔が見れたんだから」
「お前なあ」
思惑にはまってしまったことに悔やみながらも、してやったりと笑う愛梨の楽しそうな表情を見ればそれ以上文句を言う気にはなれなかった。
「と、こ、ろ、で。ボクの言ったことが本当の事だったらどうするのよ?」
「はいはい。その話はもう終わりだから」
なおも同じ話題を続けようとする愛梨を無理やり遮ると、不満そうな顔をしながらもしっかりと話を切り替えてきた。
「それでさっき店員さんに教えて貰ったのだけど……あれとか、どう?」
「いやだ」
即答する。
視線を向けた先にあった服はシンプルなズボンだったが、それが今の愛梨の服装に合わせて選ばれたものだと一目見て察したためだ。
「あはは。そんな必死にならなくてもいいじゃん」
「うっせえ」
「ほんよ志軌はからかい甲斐があるね」
店内に掛けられた時計がふと目に入った愛梨は、ウィンドウショッピングを切り上げ、先ほどの店員に軽く会釈をして外へと出る。後ろをついてきながら志軌も時間を確認すると、少し早い気もする時間帯ではあったがこれから電車に乗る必要があることを考えるとこのぐらいが丁度いいのかもしれない。
「結局何がしたかったんだよ」
行きたい場所があると誘った割には大した事は何もしていない。東京に来たからこそのしたいことがあるのかと思っていた志軌には、肩透かしを食らった気分になる。
「志軌とデートがしたかったのよ」
そう言われ一瞬意味の分からなかった志軌だが、どこか寂しそうな表情をする愛梨を見て気付くことができた。デートと言ったのはただの冗談で、ただ何気ない日常を志軌と過ごしたかったのだろうと。最近様子がおかしかった理由はこれだったのかと理解した。
愛梨は既に志軌と由夢が付き合うという前提でいる、つまりこれからは二人で出かけたりすることができなくなると思っているのだろう。由夢ならたとえ愛梨と二人でどこへ行こうと文句を言うとは思えなかったが、愛梨自身がそういったことをするのが浮気みたな気がして嫌なのかもしれない。
今まで志軌は意識してこなかったが、どれだけ仲の良い幼馴染三人だとしてもその中で二人の関係性が変わってしまえば残る一人も二人に対する接し方を変えざる負えなくなるということを実感した。
「そっか」
これから愛梨と会えなくなるという訳ではない。だが自分のせいで変化してしまうということで、志軌の中には戸惑いが生まれた。
「別に志軌が気にすることじゃないよ。別に二人が付き合ってもボクはボクのまま、二人の幼馴染なんだから」
志軌の心の変化を感じ取った愛梨は優しく声をかける。
「まあ流石に由夢ちゃんの彼氏を盗る真似はできないから、二人で出かけたりとかはもうできないけど、三人で遊んだりしよ」
「ああ、三人でプロゲーマーになるんだもんな」
「あはは、そうだったね」
志軌の言葉に楽しそうに笑う愛梨に一安心する。
「それじゃあ早く行こ。遅れたら志軌のせいだから」
志軌は悪戯っ子ぽく笑う愛梨と共に、駅へと向かった。




