おやっさん
「今日も頑張ってるな!ミミズ!」
声をかけたのは、親方と呼ばれるポジションのオッサンだ。
「あざーす!自分、魔王なんでこれくらいは!」
「いやいや、若ぇのにたいしたもんだ!最近の若造は根性がなくてな」
ガッハッハと盛大に笑いながら俺の背中を叩く。
土木作業員のアルバイトをして半年が過ぎた。
身長が175cmになったので、人間に混ざっても違和感が無い。
一輪車、通称”ねこ”で土砂を運ぶ。
なかなかの重労働だ。でも魔王頑張る。
労働は日本国ミミズの義務らしい。
「帰りに、飯奢ってやる」
なんだこの人オッサン天使。
「あざーす!」
ラーメン屋に入る。
前にも何回か連れて来てもらった事がある。
「らっしゃーい。お、親方さんとミミズのにいちゃん」
「チャーシュー麺と餃子、それと生な!
ほれお前も頼め」
「ふわとろ赤土定食350円!」
「またそれかよ。変わってんなぁお前さんは。
ま、いいか!食うぞ」
「へい、チャーシュー餃子。
赤土定おまちっ!!」
生ビールは先に来ている。親方はもう半分ほど飲み干していた。
目の前に料理が並ぶ。
ラーメンと餃子、赤土のいい匂いが鼻腔をくすぐる。
赤土の味は、軍曹との食事を思い出させた。
「ウチの娘が二十五なんだが嫁に行きそびれてなぁ。
ミミズ、お前婿になっちゃぁくれねぇか?」
「俺に似てなくて可愛いぞ。ありゃ母ちゃん似だ。
遅くに産まれた子だから心配でなぁ」
何回か聞いた話である。
「自分、ミミズっすから」
何回か言った返しである。
「いやいや、ミミズも人間も大差ねぇよ!」
ガッハッハと笑いながら残りのビールをあおる。
汗水垂らして働く、食う、寝る。
ミミガーはこんな日常が楽しかった。
ミミキチ・寿命死
ミミズ残り7体