~ミミズ神に惚れた俺は世界を救う~
俺は37歳無職、絶賛ニート中の自称ナイスガイ。
彼女居ない暦37年になる。魔法は習得している。足りないのはMPだ。
人生に絶望してる。正直死にたい。
飯を食ってクソして寝る。うんk製造機と呼ばれる所以だ。
もしかしたらうんkが本体なのかもしれない。
こんなはずじゃなかった……。何度も何度も言葉にする。
絶望した俺は今決断した。ふう○くで卒業すると!
親が俺に用意した金を握り締める。
軍資金だ。これで二週間、飯が食えなくなる。
構わない。
「俺は漢になるッ」
意気揚々と家を出る。風が心地いい。
外に出たのは何年ぶりだろう……。
解き放たれた気がした。俺は風になれる!
道を駆ける。風俗店に向かって!!
待ってろおっぱい。待ってろまだ見ぬ俺の嫁!
横断歩道に差し掛かる。
いかにナイスガイの俺でも車には勝てない。
信号が青に変わるのを待つ。
ふと目に留まる生物。
咄嗟に口にしていた。
「おい!そこのミミズ危ないぞ!」
身体が勝手に動く。歩道に居るミミズを助けるために。
気がついたらミミズをその手に抱え、横断歩道を突っ切る。
(よかった……ミミズは無事だ……)
安堵した途端、世界がスローモーションに変わる。
パァアアアアアアアアアアアアアアアン!!
走行中のトラックのクラクションが鳴り響く。
俺はミミズを庇うように抱え込み、背中をトラックに向けた。
ミミズだけは!
ミミズだけは!
俺の身体は吹き飛ぶ。
意識が朦朧とする。
よかった……ミミズは無事だ……。
ミミズの温もりを手のひらに感じる。
ふうぞくなんてもうどうでもいい。
ミミズ、お前さえ無事ならば……。
俺は……どうなっても……。
ここで意識が途切れた。
「起きなさい、ミミズの救世主よ」
優しい声が聞こえる。
普段は親からの罵声しか浴びせられない俺に。
目をゆっくりと開けると、そこには純白のドレスを着た巨大なミミズが佇んでいた。
美しい……。俺は思わず感嘆の声を上げる。
俺はミミズに惚れてしまった。
これが一目惚れというやつか……。
彼女はこの世の美の化身だ。
「貴方は我が眷属のミミズを助けました。」
「助けられたミミリーちゃんもきっと喜んでいます。」
「貴方に能力を授け、転生させて差し上げます。」
ミミズ神と目が合う。優しげで、つぶらな瞳。
何度でも言う。美しい……。
彼女はニッコリと微笑み俺に言う。
「あなたに名前を授けます。今日からあなたはミミガー。」
「さあ、生きなさいミミズの救世主。あなたはきっと、いいミミズになれるわ。」
身体が優しい光に包まれる。
ああ、これが母親になってくれるかもしれないミミズの温かさか……。
俺はすでにミミズに変わっていた体で精一杯の礼を捧げた。