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『天使さん、好きよ』
よく会う女の子のいつもの台詞。
なんて返すかは決まってる。
"ボクも好きだよ。ありがとう。"
喉元まででかかったその言葉は、言えなかった。
「う……お゛ぇッ……、あ……?え?」
口から吐き出されたのは言葉じゃなくて、胃液。喉がひりひりする。
びっくりして目を見開く女の子。
でも、何より自分が驚いてる。
どうして?吐き気がする理由なんてないじゃないか。
混乱しながら"ちょっと具合が悪いみたい"なんて誤魔化すように言おうとしたら、彼女の声が耳元でした。
"好き"
真っ赤な彼女の甘美な囁き。
もちろん幻聴で、傍に人なんかいない。
『刻輪?大丈夫?』
心配そうに手を伸ばしてくる女の子。
無意識だった、
『え?』
その手を払い除けていた。
また目を見開く女の子。
あぁ、なんでだろう……
「き……らい……」
女の子は傷ついた顔をした。