この話には続きがあります
何も起こらないまま、年を越し、
バレンタインデーも終わり、もうすぐ春休み。
私は…全国大会も応援に行ったし、バレンタインデーもチョコを用意していた。
―――でも、結局渡せなかった…。
彼女がいる人に渡すのは、なんか失礼だと思った…、
まぁそれは建前で…本当はただ、勇気がなかった。
バレンタインデーにチョコを渡すなんて、
仲が良ければ“義理チョコ”として自然に渡せるけど、
仲も良くないし、友達ですらないのにいきなりは、“本命です”と言っているようなモノだ。
澤野くんに、私の気持ち伝えたところでどうなるの?
澤野くんに不快な思いをさせるだけじゃない?
あっさりフラれて、凹むだけじゃない?
「ねぇ、聞いた?聞こえて来た噂なんだけどさ、相田先輩に彼氏が出来たらしいよ」
クラスの派手目女子が、昼休みが終わる頃、教室に入ってくるなり、でかい声で話し出す。
「あぁ、知ってる!同じクラスの仲西航さんでしょ?あのサッカー部のカッコいい先輩!」
「うわ…またイケメンですか。あの先輩本当スゴいよね」
「うちの高校の三大イケメン、全員制覇してるじゃん」
「マジ、可愛い顔して、ヤるよねー。」
相田先輩は、澤野くんとは別れたのに、うちのクラスの澤野くんファンにはすっかり“悪女”扱いだ。
興奮して、声の大きさに全く気付いていない彼女たちを、
私はハラハラしながら見ていた。
――――止めてよ…澤野くんにも、聞こえてるのに…。
ガタッと澤野くんが席を立つと教室を出ていく。
「あ、澤野くん……っ」
私は無意識に、澤野くんの後を追って廊下に出ていた。
「―――んだよ…」
明らかに不機嫌さが増している。
後夜祭のあとから、ずっと不機嫌だったけど、
さらに話し掛けるなオーラが半端なくプラスされている。
「ご、5時限目、始まっちゃうよ?」
――――震えるな…。普通に…笑顔…笑顔…。
「サボるわ…気分悪い。」
――――それは…彼女たちの話のせいだよね…。
「分かった…」
私は澤野くんが立ち去ると、トボトボと教室に戻った。
ちょうど始業のチャイムが鳴り響いた…。