【番外編】恋の始まり~咲目線~
本当は…予感がしていた。
多分…あの日、初めて言葉を交わした時からーーーー。
俺は、うろたえる間宮を見て、笑いながら思い出していた。
間宮と職員室の前でぶつかった日のこと。
ーーーー最初はただ、『変なやつ』だと思った。
明らかに俺に好意を寄せているのに、必死に隠そうとするし。
そのくせキスしようとしたら、泣くし…。
ーーーそんなやつ、初めてだった。
俺のことをまるで自分のことのように、怒ったり悲しんだりして…。
なのに自分のことは、全く無頓着で。
真面目で真っ直ぐで…不器用で。
間宮といると、笑っている自分に気づいた。
間宮といると、穏やかになれる自分に気づいた。
茗子の存在は、俺が幼い頃からの“絶対”で。
茗子を手に入れたいとしか、思ってなかった。
茗子の側に居たいと願った。
結局、いくら頑張っても振り向いて貰えなかった。
“恋”は…“好きな気持ち”は、好きになるほど切ないものだと思っていた。
だから…、
間宮の存在に、正直、最初は戸惑った。
なぜか目で追っていたり、無茶をする度に気になって。
彼女が強がる度に、腹がたって。
自分の中で、彼女の存在がでかくなって。
また、“恋”をするのが怖かった。
あんな切ない想いはもうしたくなくて、逃げていた俺に、
間宮は言った。
『幸せにします』
ーーーー笑うしかないだろ、そんなこと言われたら。
俺は目の前で我に返り、
真っ赤になったままの彼女を見つめた。
「間宮、俺も好きだよ」
俺が言うと、間宮はふらついた。
慌てて抱き止めながら、間宮の顔を覗き込む。
「おい、倒れるなよ」
「すみません…っていうか…咲くん…今の嘘ですよね?」
「嘘だと思うなら、そう思ってれば?」
「え、好きって…え、好きって…私を?なんで?」
今、二回同じこと言ってたけど…。
相変わらず彼女の反応はおかしくて、笑いをこらえながら俺が言った。
「なんでだろうな、俺もわからん」
愛しさを込めて、俺は、彼女にキスをした。
ーーーー俺を見つけてくれて、ありがとう…葵。