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修学旅行の夜

「ちょっと葵、どこ行ってたの…ってどうした?」

ホテルの部屋が同室の恭子が戻ってきた私に話し掛ける。


「なにがあったの?」

「何も…ないよ…」

私は微笑んで否定する。




同じく同室の愛子ちゃんと志保ちゃんが、

夜になると恋の話題で盛り上がる。


「私も、実は澤野くんが好きなんだよねー」

愛子ちゃんがここぞとばかりに暴露する。


「実はっていうか、もう皆知ってるでしょー?」

志保ちゃんが愛子ちゃんに突っ込む。


ーーーーいや、私は初耳でしたよ…。


「だよね。じゃあ恭子は?」

愛子ちゃんにふられて、恭子が答える。

「私は好きな人とか居ないなー。」


「えー、恋してないのぉ?」

志保ちゃんがあり得ないと叫ぶ。


「まぁ、無理してするもんじゃないしね!じゃあ最後は葵ちゃん!」

愛子ちゃんに言われて、私はドキンとする。


「葵ちゃんも、澤野くんが好きなんだよね?こないだ、皆のいる前で告ってたし!」

志保ちゃんが愉しそうに言う。



「ーーー好き…ですね、確かに。」


ーーーーあんなに何でも完璧な人なのに、

恋愛になると全然ダメで、不器用でなのに真っ直ぐで…。


「好き…です」


「ちょっと…葵?」

口から出た言葉が、私の心を刺激して…涙が止まらなくて…。


恭子が呆れたようにため息をついて、言う。

「ーーー関わらせないようにしてたのに…それが葵のためだと思ってたのに…」


ーーー?どういうこと?


「恭子?」

私が涙を拭いながら、恭子を見ると、恭子が話し出した。


「ーーー熱で倒れた葵に、真っ先に駆け寄って保健室連れてったのは…澤野くんだったの。」


ーーーーえ?


「あぁ、あれはキュン死に出来るよね!お姫様抱っこで保健室!」

「粟野さんと佐々木さんも、開いた口塞がらないって感じが最高だったよね!」


愛子ちゃんと志保ちゃんも思い出したのか、

キャーキャー騒ぐ。



ーーーーあのすごく怒っていたときのこと?


「あの後も…葵のために、休んだ日の分のノート全部コピーして渡して来たのよ…澤野くん。」


ーーーーえ?………え?


「私…何も受け取ってないよ?」

私は混乱しながら、恭子に聞き返す。


そう言えば、

保健室で目が覚めたとき…澤野くんが言ってたかも…。


『授業なんて、後で俺が教えてやるから!寝てろよ!!』

あの時の、澤野くんの言葉が思い出される。


「ごめん、私が突き返したから…」

恭子が言う。

「葵のこと、好きでもないのに優しくするのは止めてって」



ーーーーそんな…。


ショックで何も言えなくなる。


恭子は、私の告白を聞いていたからーーー。

きっと私が後で傷付くと思ったからそういう対処をとったんだと思う…。


でも…恭子、それは私が望んだことではないよ。


ーーーたとえ私のことを好きでもないとしても、

澤野くんが私のために休んだ分のノートを全部コピーして渡そうとしてくれただなんて…。


そんなの、嬉しいに決まってる。幸せに決まってるのに。


それを勝手に排除してたなんてーーー。



「でもさ!なんだかんだ言って、澤野くんも葵ちゃんのこと好きなんじゃない?」


愛子ちゃんが明るく言う。

「いつもは自分から話し掛けたりしないのに、葵ちゃんにはよく話し掛けてるよね?」



「でも…私は女として見られてないですから」

ーーー確かに先程、『嫌いではない』と言われたけど…。



私は、自虐気味に言った。

「佐々木さんも、他の先輩とかも、頼まれたらエッチしてますよね?

私なんて…キスぐらいしかしてもらえなかった…」



「え、嘘!てか葵ちゃんキスしたことあるの?」

「羨ましいー!私も志保もそれすら無いから!」

志保ちゃんと愛子ちゃんが興奮して言う。


「好きだって迫られたら誰でも良いとか言ってたくせに、

私には、ほんのちょっと触れたぐらいのキスですよ?

ーーーそれって…完全にアウトじゃないですか!?」


…言いながら虚しくなってきた。

私は誰のフォローをしているのだろう…。



「え…澤野くんそんなこと言ってたの?」

恭子が軽蔑するように言う。

「本当に女好きのヤリチン野郎だったのね」


「ーーーそんなこと…」

無い…って言い切れる?本当に?


心の中の、もう一人の私が、言葉を奪う。



「でも私、澤野くんとなら、一回だけって割り切ってでもしたいかもー」

「私もー!彼女とかは絶対無理だけど、思い出に…って感じならエッチしてみたい!」


志保ちゃんと愛子ちゃんのテンションと話には全くついていけず、

私も恭子も、自分の布団につくと、眠り始めた。




ーーーー私は…澤野くんにどうしたら“異性”として見てもらえるのでしょう?










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