始まるわけもなく
「ほら…澤野くん!」
「わぁ…かっこよすぎて、近付けないよね…」
私と仲良くなった、
笹木 由美と角川 真由は、
澤野くんがバスケをしているのをこっそり見ながら言う。
――――私たちのクラスは入学以来、
化粧が派手な女子が一番強い雰囲気で、
クラスを牛耳っていた。
私や由美や真由は、どちらかというと地味でおとなしいタイプ。
入学してから数日が経って、
そんなクラスの“立ち位置”みたいなものが決まりつつあった。
クラスを牛耳っている女子たちは、
毎日澤野くんのいるところに群がり、さらに呼び方も“咲くん”と、かなり馴れ馴れしくなっていた。
私は、いまだに何の接点もなく、話したことすらない。
ただ同じ教室で授業を受けるクラスメイト。
―――澤野くんは、私の存在すら、知らないだろう。
だからこんな風に、自分の部活終わりにこっそり、
バスケ部の練習を覗くのが日課だった。
私は、入学式で…新入生代表の挨拶をする彼を見て…
一目で虜になった。
だって…誰が見ても、かっこいいでしょ―――。
あのルックスで、首席、そしてスポーツ万能…。
あんな完璧すぎる人に、恋しない人がいるのだろうか?
―――――でも、見つめているうちに、気づいてしまった。
澤野くんには、好きな人がいること。
それはきっと、…マネージャーの先輩。
――――すごく女の子らしくて、天使みたいに可愛らしい容姿で、どこか掴めなくて…男を惹き付ける、天然の小悪魔。
私が相田先輩に抱いた、第一印象。
澤野くんは、相田先輩と話すとき、いつもと違う。
キラキラ度が違う。
笑顔が…違う。
――――あんな表情で笑うなんて、私は知らなかった。




