ファーストキス
「気がついたか?」
目を開けると、私は目の前に王子様がいて驚く。
――――え、ここは…?私何してたんだっけ…?
私は一生懸命、記憶を辿る。
ええっと…確か放課後、修羅場になって。
なのに、澤野くんが私に話し掛けてきて私にもとばっちりが来て…。
粟野さんと佐々木さんがヒートアップして…、
佐々木さんが平手打ちされ…
あ、そうだ!私が平手打ちされたんだ…。
頬がヒリヒリしていたのが、それだと気付く。
「大丈夫か?」
王子様が私の顔を覗き込む。
「――――うぇっ!?」
驚きすぎて、変な声が出た。
――――どうしてここに、澤野くんが?
頭がズキズキ痛む。
あ…平手打ちされたあと、倒れたときに頭打ったんだ…こっちのが地味に痛いかも…。
私が頭を押さえながら、平気なふりをする。
「どうしたの、澤野くん。部活始まってるんじゃないの?」
「―――ごめんな…。」
澤野くんが謝る。
「謝るのは粟野さんに、でしょ?」
私が真顔で答える。
「澤野くん、彼女いるのに佐々木さんにも手を出したんでしょう?」
「うん。どうでも良かったから」
「ん?」
―――どういう意味?全く話が噛み合ってない…。
「どうでも良かったって、何が?」
「粟野も、佐々木も…別にどうでも良い。俺は好きだからヤりたいって言われたら誰でもいいし」
――――え…?
何だか、聞いてはいけなかったような…。
というか、聞きたくなかった…。
澤野くんの言葉。
「間宮も、俺とヤりたいなら、いつでもヤるけど?」
その言葉に私は、
カッとなって澤野くんのことを叩こうとした。
でも…寝ていた私の手は澤野くんには届かなくて、未遂だったけど。
「間宮、俺のこと好きだろ?」
「好きじゃないです」
――――好きです。
澤野くんの顔が近付く。
心臓が高鳴る。
でも同時に、悲しくて虚しくなる。
――――本当に…誰でもいいんだね…。こんな私なんかでも…。
目を閉じると、涙が一筋流れた。
そして…澤野くんの唇が、私の唇に触れた…。
それが、私の…ファーストキスでした…。