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天魔、恋をする。  作者: 天月 佳野
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1. 会うは別れの始め

平凡な女性と悪魔、天使が絡む恋愛ギャグコメディー。



愛のために戦うのか


主のために戦うのか



それは彼らが決めること。

〝まったく、この世も汚れたものだ〟

〝まあ、そう仰らず…さあ参りましょう〟











朝。


私は小鳥の可愛らしい鳴き声で目覚めるはずだった。



「ほれ、起きんかこの附子」

「………ん…~?ぶ、ぶす…?」

「いけませんよ、初見の女子にそんなことを」


なんだ、なんだ…。


朝から私を囲む人影が二つ。

一体、どこからどうやっていつ入って来たんだ。


それに私には男友達なんていない。…あ、…ん?や、アレは違うな。


目を薄っすら開けて人影を目視しようとするが、朝日が直接目に訴えかけてきて瞼が落ちてくる。


今日は休日なんだし、このまま寝てしまうのも良いがこの二人が金品を盗もうとする輩だった場合のことを考えるとそうするわけにもいかない。


面倒だな、と思いつつも瞼を再度上げる。


左側にいるのは、ヤクザ座りをする銀髪で長髪な人。瞳の色は澄んだ青で第一印象はパッと見、狼。


右側にいるのは、何故か恭しげに正座をして私を温かく見守る黒髪で短髪な人。瞳の色は柔らかい緑で第一印象は、優男。


だんだんと覚醒してきた脳みそでよくよく考えて辺りを見回してみると、部屋は無惨なまでに散らかり放題になっていた。


……一体、何が…………。



「やっと起きたか、この鈍間」

「だからなりませぬ、女子に鈍間など…」


ノロマ…って、ヒドイな~この狼。それに優男はやはり優しい。


「………えっ⁉ちょ、アンタ達誰⁉いつ、どこから、どうやって入ってきたの⁉目的は何⁉それと日本語通じますか⁉」

「今頃危機感を感じてどうする、この馬鹿」

「小生らは…そうですね、言うなれば悪魔とでも」

「え、悪魔⁉」


朝から変人に会ってしまった。というか、部屋に侵入されてしまった。


だが、優男は尚も微笑みをやめずに私の質問全てに答えていく。


「はい。ちなみに、この室内に入ったのは今日の夜中2時頃でそちらの窓から鍵を開けて入室させていただきました。目的は貴女様の護衛です。ご覧の通り、日本語も通じますよ」


一気に話されると答える気力がなくなるって、こういうことなんだ。最早、趣旨さえ分からない。


「要は、我らは貴様を悪い輩から護り、尚且つ来るべき日に貴様を魔王の下へ連れて行かなければならない」

「お~なるほど…って、えぇ⁉悪い輩ってなんですか⁉てか、魔王って⁉」


一人驚く私に思いっ切り深いため息を吐く狼。眉間には皺が寄りに寄りまくっている。


「貴様はそんなこと気にせんでも良いわ、この戯け!良いからさっさと、そのふしだらな格好をどうにかせんか!」


見てるこっちが羞恥してしまうわ!などなど…。様々な愚痴を狼から言われてしまい渋々立ち上がる。


でも、着替えたら部屋の片付けしなきゃな~。一体どちら様がこんなことにしたんだろう。


…というか、私は一体いつになったらこの茶番から抜け出せるんだろうか。








「あの~お部屋片付けたいんで、外に出てもらっても良いですか?」

「ああ、すみません。ちなみにこれは小生らがやってしまいましたので、手伝います」

「たちって…我輩も手伝うのか⁉」

「そうですよ?主に貴方がやったことです、イブリース殿」

「いや…まあ、そうだが…」


いぶりーす?


はっ。そういえば、彼らの名前をまだ聞いていなかった。そしたら、素性も分かるかもしれない。


「あの、まだ自己紹介してませんでしたよね。私は」

久城くじょう れい、知っておる。我が名はイブリース。天界では、かの人間嫌いで有名だ」


人間嫌い…なんだ。

じゃあ打ち解けるのに時間かかりそうだな~。てか、…ん?


「小生の名は、ヴァッサーゴ。小国にて王子をさせていただいております」


え、なんか当たり前みたいになってるけど凄い非現実的な話してるよね、今。


やっぱりお家に帰ってもらいたい…。てゆーか、ここに居座るつもりなのかな~?この二人。


「あ、あともう一つ質問良いですか?」

「どうぞ?」


よし、決めた。聞いてみよう。


「さっきの話、本当ですか?」




…。





「………」あれ?








ブチッ




「貴様ァ‼先程から我らを疑っていたな⁉」

「ぇええええええええええ⁉

だ、だだだだだって!こんな世の中じゃ、そんな話誰も信じませんし!」

「これだから、人間は面倒で汚らわしいのだぁあああ‼」


ただでさえ悪いイブリースの眼つきはみるみるうちに怒りと殺意に満ち満ちた恐ろしいものになっていく。


そんな目に震え、玲の得意技『逃げる』が発動しかけた時どこからともなく現れた腕に玲の体は包まれた。


「なりませぬ、イブリース殿。いくら人間嫌いとて女子にそう何度も強く当たるものではありません」


ヴァッサーゴであった。

彼は壊れものを大事に扱うかの如く、玲をその腕に閉じ込める。


「あ、あのぅ…ヴァッサーゴさん…」

「ああ、それと。さきの話は本当です。信じられないのなら、ちょっとここでジッとしていてくださいな」


天使のような(いや、そうらしいけど)微笑みを称えヴァッサーゴは玲を離した。


すると、今までグチグチと玲に怒っていたイブリースもやがて真剣な顔つきになり、携えていた剣の柄を握る。


「…⁉」


ただならぬ空気に気づき、慌ててヴァッサーゴを振り返るが相も変わらず彼は微笑んでいる。


ただ、その手には鞭のようなものが握られている。



すると、いきなり何かヌメッとした触手のような感触のものに背中を下から上へ向けてなぞられ玲は小さく悲鳴をあげた。


「…ひっ!」

「ん?」

「思ったよりも弱そうですね」


体験したことのない恐怖が玲の体を支配し、やがて足が竦み玲はその場にへたれてしまった。



「ッ‼ヴァッサーゴ‼」

「御意」


その瞬間、滑らか且つ素早い動作で剣を引き抜き玲の背後に佇む怪物けものをイブリースは躊躇うことなく真っ二つに裂いた。


その反動で一歩前に踏み出したイブリースは、目の前にいる玲を引き寄せ自らの胸に埋め目を隠す。


「やはり天使のペットは汚らわしいですね。裂かれたのを良いことに逃げるなんて…」


微笑みながら持っていた鞭で怪物の上半身と下半身を縛り上げて積み上げ足蹴にしている。


ヴァッサーゴの背後には黒いオーラが見えたとか見えなかったとか。






怪物に黒い矢を突き刺し、灰と化して消えたのを見届けるとヴァッサーゴはイブリースの腕の中から這い出た玲を振り返った。


「これで信じていただけましたか?」

「信じるしかなかろう、女郎よ」

「……そ、そう…ですね」


すっかり弱ってしまった玲の頭を優しく撫でニッコリと微笑んだヴァッサーゴとイブリースは「ところで…」と態度も改め玲に向かって正座をした。


「ど、どうしたんですか」

「…いや、まあ言い難いんだが」

「…ここに住まわせていただけませんでしょうか?」


先程の怪物に対しての鬼のような力は一体どこへやら。


玲は一瞬、素っ頓狂な顔をすると気が抜けた様に笑いそれを快諾した。





実際の悪魔や天使とは姿形、能力などは異なります。

加えて、歴史なども異なりますので、本作は本作で別物としてお楽しみくださると光栄です。


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