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ベランダにドラゴンがはえて来た。改訂  作者: 松下一成
第1章 会いに来ました
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4.夜空の下で

 日が落ちて、いつの間にか月の輝く夜の空。私はベランダの窓を少しだけ開けて、プランターを眺めていた。当然、目線の先にはアヤカが居るのだけれど、この風景を外から見た時、人はどう思うだろうか。


「あっ、プランターの上にドラゴンが居る!」


 となるのだろうか。当然だけど私の世界にはドラゴンはいない。だからアヤカの写真を撮って、SNSとかに載せれば、凄い話題にはなると思うのだけれど。


 けれど、そんなことをしても「だからどうしたのよ」という感情の方が勝ってしまい、そういう行動には移れなかった。


 それにアヤカ自身が私に会いに来たわけだし、誰でも良かった。という話でもないらしい。彼が選んでこのプランターに舞い降りた。


 で、私に見つかって、今彼を知ろうとしている。


 今夜は夜風の少し冷たい静かな夜。私が住んでいる場所は閑静な住宅街。目の前には畑があったりするようなそんな場所である。…見る人が見れば確かに田舎かもしれないけれど。


 そんな彼、アヤカはと言うと、じっとしたまま動かない。


 それから、しばらくじっと見つめていたのだけれど、なんというか、飽きてきた。何も起きない。そりゃ飽きる。それでも、あくびをしながらアヤカを見ていると、彼は私に話しかけてきた。


「…今、取り込んでるよ」


 私が暇そうにしていて、気が付かないことに気を使ったのか、彼は若干、申し訳なさそうにそう言った。と言うよりも私が思ったのは「気を使うってことが出来たんだ」ということの方が大きかったのだけれど。


「取り込んでるの?…食べているってこと?」


「そうそう、ミカのいう所の食べているってやつ」


 見た目には全然わからない。口も動かしていないし、さっきからじっとしているだけ。それでも何かを食べているってことなのだろうか。


「何を取り込んでるの?それは」


 私は分からなさすぎて、直接彼に聞くことに。


「…と言うよりも、ミカも今ここに居るってことは取り込んでるはずだよ。僕と同じものを」


 はい?同じものを取り込んでる?でも、私もそうだし、彼も食べている感じはしない。何かが満たされていくというのも無い。それでも彼は私に「取り込んでいる」と言うわけで。


 さっきから感じているのは月の光とか、冷たい風とか、静かな夜とか。そういうのだけれど。…もしかして、こういうなんていうか、自然。それを取り込んでいるってことなのか?


「そうだね、そういうのかもしれない。上手く言語化は出来ないんだけど」


「なるほどねぇ」


 彼がそういうのであれば、そうなのだろう。私とは同じ世界に住んでいるけれど、別の世界からやってきたということは、そう言うことなのかもしれない。


 そんなことを考えていると、アヤカが私に語り掛けて来た。


「僕は、ミカの部屋にあった本を読んだ。…物語だった。それを読んだとき、楽しい、とか面白いって感情が生まれた」


「…なるほど?」


「その感情は確かに自分が生み出しているものだと、僕は思うんだけど、その物語をみる直前までは自分の中になかったもの」


 アヤカは私の方を向いた。


「ということは、何かを取り込んだ、受け取った。ってこと」


「まあ、それはそうだけども」


 言語化できない感情ってやつはある。それが何と言うか、自分の中に生まれた時、笑うとか泣くとかそういう別の感情表現が出てくる。


 私も今まで、作品とか絵とか物語とか。そういうのを見て来た。そういう感情がうまれなかったこともあったけど、生まれたこともあった。そりゃそうだ。そういうもんだし。


 …まあアヤカが取り込んでいる物は少し分かった気がした。だから私としてはそれで少し、納得できた。


 すると、私は次に思いつく。


「彼は大きくなるのだろうか」


 何かを取り込むというのは生長?この場合は成長でいいのかな。そうなると体が大きくなるわけで。この場合の栄養素とかそういうのは分からないんだけど、とりあえず、住んでいるアパートよりも大きくなられたら私もどうしようもなくなってしまう。


 けれど、体が大きくなるわけでもない。消費する分だけを取り込んでいるのだろうか。


「僕は、本来ならこの今住んでいるアパートを越えるまで、大きくなるよ」


 私の心の中を読んだのか、アヤカはそう言ってきた。


「そうなの?…そうなると」


 そう言いかけると、アヤカは少し笑って返す。


「でも、そうはならないから」


「どうして?」


「僕が取り込んだモノ。そのほとんどはミカ、君に渡しているから」


 また、冷たい風が吹いて来た。

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