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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第2章

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第22話 銀鹿亭

 オーレリアたちと黄昏の獅子の面々は、広場から一本入った通りにある建物の前にやってきた。石造りの二階建てで、看板には立派な角の鹿が彫られている。


「ここがあたしたちが世話になっている宿だよ。ここの主人にはオーレリアたちのことを先に伝えてるから、とりあえず中に入ろう」


 ジーナが先頭に立ち、扉をくぐる。


 ここは、黄昏の獅子が常宿にしている銀鹿亭ぎんろくてい。冒険者ギルドからもほど近く、アクセスのいい場所にあった。


 中に入ると、外のざわめきがすっと遠のく。床はよく磨かれた濃い色の板張りで、壁は落ち着いた深緑色。目に優しい色合いだった。

 さすが、Sランク冒険者が常宿にするだけのことはあって、手入れが行き届いているのが一目でわかる。みるからに高級宿というわけではないけれど、落ち着いた、そこそこいい宿という感じで、なんだかほっとする。


「ただいまー!ミレーネさんいるー?」

「ハイハイ、おかえりジーナ!みんなもお疲れ様」

「ミレーネさん!さっき伝言で伝えといた子、連れてきたんだけど大丈夫?」


 奥から出てきたのは、50代くらいの落ち着いた雰囲気の女性だった。


「まぁ!ずいぶん可愛い子だね!それと従魔だね。銀鹿亭のミレーネだよ。よろしくね」

「わたしはオーレリア。この子たちは、ノルとネロとえっちゃ……エルディオール。よろしくお願いします」


 またしても、えっちゃんが至近距離から圧をかけてくる。


「仲良しだねぇ。それじゃあこれに記入してもらえる?あと、食事はどうする?」

「夜ご飯は食べてきたから、明日の朝食だけで大丈夫」

「それじゃあ、従魔三匹、朝食付きで、銀貨9枚と銅貨5枚だね。支払いはどうする?」

「それは、騎士団本部に請求してほしいって副団長さんが言っていたわ」

「了解!これが部屋の鍵ね。部屋は一階の奥だよ。それから、食堂とお風呂も一階にあるからね、案内するよ!」


 そうしてミレーネにより、部屋まで案内してもらうことになった。黄昏の獅子の面々とはいったんここでお別れだ。


「じゃあ、オーレリアちゃんごゆっくり。今日はお疲れ様。また明日ね」

「うん。みんなありがとう!また明日ね」

「ゆっくり休むんだぞ」


 ジーナがガシガシとオーレリアの頭を撫でる。


「また明日な」

「おやすみ」


 デュークとロルフも挨拶してそれぞれの部屋へ帰っていった。一度部屋に戻ってから夕食にするようだ。


「それじゃあ、オーレリアちゃん、こちらへどうぞ」

「うん、よろしく!」

「この階段の奥がお風呂になっているわ。男湯と女湯で分かれているから間違えないようにね。そして、こっちが食堂よ、厨房ではうちの主人が料理を作っているの。なかなか評判なのよ」

「へぇ、朝ごはんが楽しみだね」

「ええ、楽しみにしていて!お部屋はここ。一階は従魔と泊まれるお部屋なんだけど、この部屋が一番広いのよ。ゆっくりできると思うわ」


『わーい!べっどだぁ!』

『まてー!』

『やっほ~い!』


 ミレーネさんがドアを開けると、ネロが真っ先にベッドに向かって走って行った。続いて、ノルとえっちゃんもベッドへ飛び乗る。


「あ!まだクリーン魔法かけてないのに!ダメな子たちだねぇ」

「うふふ、気に入ってもらえたかしら?何か分からないことがあったらいつでも聞きに来てちょうだいね。それじゃあごゆっくり!」

「ありがとう!」


 オーレリアはドアを閉めて部屋をぐるりと見渡した。壁は白漆喰で、窓には深緑色の厚手のカーテン。木枠のがっしりした大き目のベッドが二つ。小さな円卓と椅子が二脚。シンプルだが落ち着いた室内だった。広さもそこそこある。


 さっそく、自分も含め部屋全体にクリーン魔法をかけた。今日もたくさん歩いてきたから、埃っぽいのだ。それと、念のために結界も張っておく。


「ねぇ、お風呂があるんだって!みんなどうする?」

『『『はいらなーい!』』』

「言うと思った。まぁ、みんなは男の子だからね、女湯には入れないよね」

『りあといっしょじゃないなら、ぜったいにはいらないよー!』

『でも、フルーツミルクはのみたいな〜』

『俺も飲みたい!』

「じゃあ、わたしがお風呂から出てくるまで起きてたらあげるね。誰か来ても出なくていいからね」

『『『はやくしてねー!』』』


 ベッドでまったりとくつろぐ三匹を残してオーレリアはお風呂へ向かった。


 お風呂にはジーナとソフィアがいた。夕食前に旅の疲れを洗い流したかったみたいだ。


「おう!オーレリアじゃん!」

「オーレリアちゃん!ここのお風呂、広くて気持ちいいのよ!」


 服を脱いで浴室に入ると、オーレリアの家のお風呂より少し広めの石造りの洗い場と湯殿があった。


 洗い場で体と髪を洗っていると、ソフィアから声をかけられる。


「オーレリアちゃん、それ石鹸?すごく泡立つのね。それにとてもいい香り」

「えへへ、これはねー、髪の毛用の液体石鹸だよ!里にいたとき、薬師をやってる人に調合を教えてもらったんだ!使ってみる?こっちは仕上げにつけるんだよ」

「いいの?ありがとう!」

「オーレリア!あたしも使ってみていい?」

「いいよ!こっちは体用ね」


 二人は大盛り上がりで液体石鹼を試している。ソフィアが使っていた石鹸は、この町でも割といい石鹸らしいのだが、あまり泡立ちがよくないようだ。


 オーレリアの石鹸は、洗いあがりもなめらかで、お肌も髪もツヤツヤに仕上がるように出来ていた。ハイエルフの里の薬師イヴェットに教えてもらったレシピだ。オーレリアはちょこっとだけ調合を変えて、ノルとネロ用の無香料石鹸をつくったりもしていた。


「すごいわ!髪の毛の指通りが全然違う!」

「ほんとだな!お肌もつるっつるだ!」


 気に入ってもらえたようだ。


 湯船につかり、ふーっと息を吐く。やっぱりお風呂はいいなぁ。


「ねぇ、オーレリアちゃん!あの石鹸は売らないの?」

「そうだよ!絶対に売れるって!もちろんあたしたちも買うし!」

「えぇ?でも、お風呂はあまり一般的じゃないって本に書いてあったし……」

「たしかに、一般の家庭にはお風呂があることは少ないけど、でも、貴族の家とか共同浴場とかが大量に買うと思うぞ!」

「あの森に住んでからまだ調合してないから、材料が集まるか分からないよ」


 本当だよ、決して面倒くさがっている訳ではないよ。


「そうなのね。残念だわ。でも、もし出来そうだったらレシピだけでも売ってはどうかしら!欲しがる人は、それこそ世界中にいると思うわよ!」

「そんな、おおげさな」

「大げさなんかじゃないわよ!」

「そうだぞ!あたしのこの髪をみろ!いつもはギシギシして膨らんじゃうのに、こんなにサラサラになったんだぞ!これは、全世界が泣くやつだ!」

「あはは!ジーナって面白いね!」


 お風呂から出て、髪を乾かしている間にも、ジーナとソフィアは髪の毛の仕上がりに感激しっぱなしだった。

 それを見ていたオーレリアは、もしかして本当にレシピを売った方がいいのかな?でもわたしが作ったレシピじゃないしなと、ちょっと考えた。里に帰ったときに相談してみよう。もし覚えていたらだけど……。


「じゃあ、おやすみ。また明日ね」

「おやすみ~!」

「おやすみ」


 挨拶をして部屋に戻る。三匹は一つのベッドで仲良く眠っていた。


 オーレリアはもう一つのベッドに入る。今日はなんだか長い一日だった。初めての町、初めての冒険者ギルド、初めての屋台、初めての宿。

 いろいろな初めてを経験して、楽しかったけど、やっぱり疲れた。もうこのまま寝てしまおうとベッドに横になったとき、


『はっ!りあ!ふるーつみるく!』

『ふわぁぁ。ふるーつみるく!』

『しまった、寝てた!リア、フルーツミルク!』

「えーーー!!!寝てたんじゃないのぉ?今日はもう寝ようよぉ」


『『『ふるーつみるくー!!!』』』


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