第2話 花嫁は五つ子の天使様
まぶた越しに外の明かりが目に入り込む。深い眠りから覚めるように、俺はゆっくりと目を開けた。
見慣れない白い天井が視界に入った。どうやら俺はベッドで安眠を貪っていたらしい。普通に布団を掛けてスヤスヤと。
ん? 全て夢だったのか?
寝起きのため脳の回転が遅い。
なんとなく下半身側に目線を向ける。数名の人間が立っている。ベッドを囲むようにして5人の女性がそこにいると認識できるまで、しばらく時間を要した。
「標路 準さん、私たち五つ子を花嫁にしてください」
背中に天使の翼を生やした5人の美少女が、俺を取り囲むように目の前に並んでいる。その真ん中にいるリーダーらしき女性が両手を差し出しながらお淑やかに語り、残りの4人も同じように両手を差し出してきた。
ベッドに仰向けで寝ていた俺は布団を払い除け、上半身を起こした。
「これ、まんまじゃん!」
あのラノベのまんまだ。
「よっしゃー! やったぜ! 俺は、俺は異世界転生したんだぁぁぁぁぁ!」
ベッドの上で跳ね起き、そのまま立ち上がる。両手で拳を握り、ガッツポーズ。
「よっしゃ、よっしゃ、よっしゃぁぁぁぁぁー!」
ベッドの上は狭すぎるのだが、それでも俺は全身で喜びを表現した。
しばらくしてベッドの周りを見渡し、5人の少女たちが両手を差し出した状態で静止していることに気付いた。
「あっ、すんません! も、もちろんオッケーッスよ! って言うか、是非、結婚してください! 5人全員でいいんスよね?」
「はい。その通りですわ」
真ん中の少女が答える。
そして5人が確認し合うようにお互い顔を見合わせると、声を揃えた。
「よろしくお願いします、御主人様!」
「やった、やった、やったぜぇ! ラノベ主人公確定! スーパーハーレム時代突入! てことは、次なる展開は俺つぇーかぁ!?」
「あの、準様、そろそろ自己紹介してもよろしいですか?」
真ん中の少女が俺を窘めるように切り出した。
「あっ、それもそうだね」
興奮冷めやらぬが仕方ない。確かに、彼女たちがどんな娘なのか聞かなくては。俺はベッドの上で正座して話を聞く態勢を整える。みんな俺の嫁だし。
真ん中の少女、リーダー役の彼女が最初に自己紹介を始める。
「私は長女のイチノと申します。よろしくお願いします」
と言って、イチノは頭を下げた。
やっぱり、彼女が長女だ。
オレンジ系金髪ロングカールの美少女。話し方もお淑やかで、気品漂うお嬢様キャラの印象。丈の短いホワイト系ワンピースがチャーミングだ。
「よろしくお願いします」
相手に合わせてこちらもあいさつ。
続けて、イチノの左側に立つ少女を紹介する。
「彼女が次女のニッキィさんですわ」
「ニッキィよ、ヨロシク」
ニッキィが視線を合わせないまま、頭も下げずに挨拶をした。
れれ? 次女のニッキィ、ちょっとぶっきらぼうだぞ。女王様というか、ツンデレ系というか。
ニッキィは金髪ストレートロング。ゴールド系のビキニとミニスカートを着て、全体的にネグリジェのようなセクシーなデザインになっている。
「は、はい。よろしくです」
ちょっと怖いので、こちらは丁寧にあいさつ。
次にイチノが右側の少女、三女を紹介する。
「彼女が三女のミカさん」
すると、ミカの顔が真っ赤になり、両手で紅潮した頬を覆う。モジモジと恥ずかしそうにしながらチョンと頭を下げた。
うぉー、なんじゃこのかわいい生き物は! 天使ってこんなかわいいとですかぁ!?
ミカはシルバー系ショートヘアーで、花の髪飾りを頭に付けている。そして、白ビキニとシースルーのネグリジェを組み合わせたようなセクシーなコスチュームに身を包む。
「よ、よろしくねぇ」
彼女が何も言わないので、こちらから声を掛けた。
次は四女の番。右端の少女を指してイチノが紹介する。
「彼女が四女のシークンさん」
すると、そのシークンが即座に反応した。
「ねェー、ヒドイと思わなァーい? こんなかわいいギャル捕まえてシークンだって! 本名だけど、ヒドイよねェ! シークンじゃなくって、シーちゃんって呼んでねェ~、ヨロォ~」
なんと! ギャル系天使かよ! かわいいから許す!
シーちゃんの髪はピンク系ツインテール。そして、ピンクのレオタードのような衣装を着ている。これまたプリティなデザインだ。よく似合っている。
「ヨロォ~」
俺は右手を高く上げた。すると、シーちゃんも右手を上げて返してくれる。ギャルのノリ、嫌いではない。
最後は末っ子だ。イチノが左端の少女を指した。
「彼女が末っ子のイツハさん」
そのイツハが、ヨッ! っと敬礼気味に右手を振り、軽やかにあいさつしてウインク。
「ボク、イツハだよ。ヨロシクね!」
キ、キタァ~、ボーイッシュボクっ娘天使! まさしく五人五色の五つ子やん!
イツハの髪はブルー系ロングポニー。そして彼女の衣装は丈の短いブルーワンピースと表現したいが、どちらかと言えば、シースルーネグリジェに近いデザインだ。
「うん、ヨロシク頼んます!」
イツハと同じように、ヨッ! と右手を上げる。
末っ子の紹介が終わると、急に彼女たち全員が放つ強烈なセクシーオーラに気付かされた。なんというか、五つ子全員の共通点が凄すぎる。胸元のデザインがあまりにもセクシー過ぎるのだ。
嬉しいけど、目のやり場に困る!