【第7話】仮設戦闘班《E13》の記録
地下の記録保管所。
ブローカーから受け取ったIDコードを入力し、ロックされたファイルが開かれる。
タイトルは《E13:記憶干渉型兵器運用実験報告》。
リタが“兵器”として扱われた記録が、そこにあった。
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■E13ユニット概要
•正式名称:仮設戦闘班《E13》
•目的:記憶干渉能力を実戦下で運用し、制御性・応用性を評価すること
•構成人数:3名(記憶干渉兵・戦術支援員・護衛兵)
•運用期間:約3ヶ月
•指揮責任者:Dr. アイン・ユーヴェル
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■メンバー構成
•Mn-13(後のリタ):記憶干渉兵。あらゆる人物の記憶を銃を通じて改変・消去可能。
•クロエ・ナガセ:研究開発者兼フィールド支援。リタの記憶反応・感情値のリアルタイム監視を担当。
•レオ・ヴァレンタイン:元軍人の護衛兼火力支援。E13の安全確保を任された唯一の武装兵。
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■記録より抜粋:
「記憶干渉能力の安定稼働を確認。標的の人格崩壊に伴う精神暴走は予測通り。」
「ただし、リタ個体に感情的負荷の兆候。特にクロエとの接触後、応答内容に変化あり。」
「クロエ・ナガセの報告によれば、個体は“自我”を形成しつつある可能性あり」
「当該職員に対し、記録の精査と継続監視を命令」
「護衛兵・レオより内部通報。リタへの“兵器化処置”に異議ありとの発言記録」
「当該発言者に対する処分は保留中」
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ファイルを見終え、リタは言葉を失っていた。
「これが……私の、過去……?」
レオはそっと立ち上がり、リタの肩に手を置いた。
「お前は“成功例”だった。国家が望んだ通りの能力を持ち、制御可能だった。
でもクロエは、そんなお前を“ただの武器”にはしたくなかった」
「……それで、逃げ出そうとした」
「ああ。あの時点でクロエはマークされていた。E13ユニット自体が、彼女を試す“装置”でもあったんだ。
お前を兵器として見ない者がどんな行動をとるのか──アインは、それを見ていた」
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リタはそっとユリシーズを見つめる。
この銃が奪ってきた記憶。
この銃で守ってきたもの。
その全ての起点が、ここにある。
「アイン……彼が、私を“道具”として作った人間……?」
「最高責任者だ。あいつに会えば、すべてがわかるはずだ」
リタはうなずく。
「なら、私は彼に会いに行く。
“自分が何者なのか”を、知るために」