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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第二十三章 プレゼントを買いに

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第99話 映画製作について

「一人?出てくる前に荷物が届いたんだが。あの荷物はどう見てもコスプレ衣装にしか見えなかったぞ」 


 カウラの言葉にアメリアは驚いたように視線を上げた。


「誰から?もしかして島田君?」 


 アメリアの言葉にカウラと薫が大きく頷いた。力なくアメリアは椅子にへたり込んだ。


「他人事を気取ってるからそう言う目にあうんだよ。カウラはその荷物を開けたのか?」 


 痛快そうにかなめが笑った。カウラは首を横に振った。


「そうか、あれじゃないか?この前作った自主映画の怪人の衣装」


 かなめはそう言って、節分に部隊で作る自主映画の魔法少女映画の衣装の事を話題に出した。 


「それなら当然あんたのも来てるわよね。女機械魔女さん」 


 アメリアの言葉にかなめはびくりと体を震わせた。


「そうよねえ、あのお話ではかなめちゃんが裏切りの機械帝国の女指揮官の役だったもの。私はただの端役のメガネ教師。やっぱり女公爵ともあろうお方には華のある役をやっていただかないと」 


 アメリアは自分で台本とキャストを決めておいてまるで他人事の様にそう言って見せた。


「うるせえ!その配役はテメエと誠で決めたんじゃねえか!それになんでカウラだけ一般人で神前の彼女って設定なんだ?贔屓もあそこまで行くとやりすぎだろうが!」 


 つばを飛ばしかねない勢いでかなめはアメリアに食って掛かった。その様子を黙ってみていた薫だが事情が飲み込めたようで声をかけた。


「それって皆さんで映画を作られたって話は……」 


「そうなんです、来年の節分に豊川八幡のお祭りのときに上映するんで是非……」 


「見せるな!神前!見せるんじゃねえぞ!あんな恥ずかしい格好は豊川のちびっ子以外に見せたくねえ!」 


 かなめは必死に叫んだ。二人の大声に他の客も視線を誠達に向けてきていた。


「二人とも静かに。ここは『特殊な部隊』の隊内じゃないんですから」 


「恥を掻くのは私達も一緒なんだ。少しは気を使ってくれ」 


 誠とカウラがなだめることでかなめはようやく落ち着いた。アメリアは十分かなめをいじり倒して満足したと言う表情を浮かべていた。


「ああ、そうだ。神前の持っているその荷物はなんだ?」 


 そんな気を利かせたつもりのカウラの言葉にアメリアの表情が緩んだ。


「カウラちゃん。何だと思う?」 


 アメリアの言葉の調子に意地悪の色が混じっていた。しばらくその言葉の裏の意味を考えようと言うようにアメリアをにらみつけていたカウラだが明らかにアメリアの影響を受けているだろうというように不愉快そうな視線を誠に向けた。一方アメリアは特に裏も無いというように首を横に振る。それを見てしゃれた格子模様の袋の中身をカウラは考え始めた。


「何かの材料と言った感じだな。神前は意外と器用だからな。何かを作ってくれるんじゃないのかな?楽しみにしているぞ」 


 カウラの言葉にアメリアは激しく頷いて見せた。カウラの隣に座っている薫は母親だけに息子のその買い物の中身がわかったとでも言うような満足そうな笑みを浮かべていた。


「誠にしてはいい買い物ね」 


 満足げな薫の笑顔。さらにそれがカウラの推察を鈍いものとしていった。


「そんな神前のことでいい考え?神前の好きな物と言うとプラモデルだが、私は戦車には興味は無いぞ。でもそれはプラモ屋の包装紙では無いな……何を買ったんだ?」 


「僕はカウラさんの中ではどこまで戦車のプラモ好きということになっているんですか!」 


 カウラのつぶやきに思わず誠は我慢できずに突っ込みを入れていた。


「あのなあ、アメリア。クイズ大会に来たわけじゃないんだ」 


 それまで様子を見守っていたかなめがつぶやいた。誠はようやく救われた気持ちになった。


「やっぱり西園寺は何も無しか。まあその方が気楽だがな。貴様には金銭感覚と言うものがことごとく欠如しているからどんな馬鹿なものを買って来るかと想像するとこちらの心臓が悪くなる」 


 カウラはそう言うと淡々とメロンソーダをすすった。


「おい、アメリア。やっぱこいつに物やってもしょうがねえよ。せっかく人が気を使ってやってるのに感謝の気持ちと言うものがまるで見えてこねえ」 


「まあ落ち着いて」 


 アメリアがなだめてかなめが収まった。いつもの光景だが、かなめが買おうとしているものがものだけに誠も仕方ないというように愛想笑いを浮かべた。


「でも誠は本当に迷惑かけていないんですか?どうも心配で……」 


 そう薫がつぶやいたとき、アメリアの右手に巻かれた携帯端末が着信音を響かせた。


「それは逆にうちの方が心配なくらいで……かなめちゃんが迷惑ばっかりかけるから……ちょっとごめんなさいね」 


 アメリアはそのまま端末を起動させた。まさにうれしそうと言う言葉を体現するために存在するような笑顔のパーラがその画面を占拠した。


『まあ、食事中なのね?』 


 パーラは少し遠慮がちにコーヒーをすするアメリアに声をかけた。


「いえいえ、もう終わった」 


 かなめの言葉にパーラは納得するように頷いた。そして彼女は画面の下にロードされているデータを指差した。


『ごめんね、お休みなんだけど。遼州同盟軍事機構でちょっとトラブルがあって。今送ったデータの提出が同盟会議で問題になっているのよ。それをわざわざ東和海軍から資料の提出を求められちゃって……アメリア。お願いだから手伝ってくれる?』 


 今にも泣きそうなパーラの一言にアメリアには残された選択肢は無かった。


「それって提出期限はいつなの?」 


『えーと明後日……明後日で良いみたいよ』 


 振り返ってパーラが確認した時点でアメリアは何かを悟ったようにかなめを見つめた。


「お疲れさーん」 


 かなめの一言。アメリアはそれで立ち上がった。


「すいませんね、ちょっと近くのネットカフェで仕事してきます」 


「良いのか?セキュリティーは?」 


 囃すかなめをアメリアは渾身の笑みで迎えて見せた。


「私は一応佐官なの。それなりのセキュリティーのある店に行くわよ」 


 そう言うとそのままアメリアは伝票を持ってレジへと向かった。


「珍しくおごりか?」 


「まあね」 


 かなめの突っ込みに背中で答えながらアメリアは視界から消えた。


「この荷物……」 


 かなめは隣の席にいたアメリアが残していった袋二つを見て頭を掻いた。


「まあ、私へのプレゼントなんだろ?西園寺か神前が持つのが普通だな」 


「よし、神前持て」 


 嫌も応も無いかなめの一言が発せられて、苦笑いで誠は頷いた。



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