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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第二十二章 誠の実家

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第92話 懐かしきふるさと

「懐かしいだろ、神前!テメエの産まれた街だぞ。それにしてもいい街だ。アタシも気に入った」 


 かなめは嬉しそうにそう言うと助手席の誠の背中を蹴った。


「そんなに懐かしいほど久しぶりじゃないです。先月だって画材取りに戻ったし」 


 高速から降りて下町の風景を見るといつもかなめはハイになった。甲武の大正ロマン風の下町とはまた一味違う二十世紀末の下町が完全再現された東和の下町がそこにあった。あちこち眺めているかなめを面倒くさそうにアメリアが見つめた。


 確かに新興住宅街が多い豊川とはまるで街の様子が違った。車はそれなりに走っているが歩いている人も多く、屋根瓦の二階家や柳の植えられた柳の街路樹など、下町の雰囲気を漂わせる光景がかなめには珍しいのだろうと思っていた。


「でもいいわよね、こういう街。豊川はおんなじ規格の家ばかりで道を覚えるのが面倒で。どこ曲がっても同じ家が建ってるんだもの。道を覚えろって言う方が無理な話なのよ」 


 アメリアはそう言って建売住宅だらけの豊川の街をこき下ろした。


「どうでもいいが覚えてくれ。貴様も自分の車を持っているんだ。たまには自分の車で出勤したらどうだ。この車は元々定員ギリギリで乗るような車じゃ無いんだ。それに神前と貴様の長身二人を乗せているとキャビンが狭くてうっとおしいだけだ」 


 カウラに突っ込まれてアメリアが舌を出した。かなめは完全におのぼりさんのように左右を見回して笑顔を振りまいていた。


「西園寺。いくら『大正ロマン香る国』とはいえ、甲武の鏡都の下町も似たようなものじゃないのか?」 


 大理石の正門が光る工業高校の前の信号を左折させながらカウラが話題を振った。


「あそこはどちらかというと東都の湾岸地区みたいなところだったぜ。街を行く平民は誰も彼も痩せこけていて半飢餓状態でもっとぎすぎすしてて餓鬼のころは近づくと怒られたもんだ。それになんと言うか……アタシ等貴族を歓迎していない雰囲気がありありと見て取れるんだ。こんなフレンドリーでなじめるような街じゃねえ」 


 かなめの言葉に誠は納得した。彼女は一応は甲武一の名家のお姫様である。何度かテレビでも見た彼女が育った屋敷町は誠にも威圧感を感じるような凄味があった。


 湾岸地区や東都租界のような無法地帯はかなめが潜入工作隊員としてもぐりこんだ場所だった。こういう下町の雰囲気は体験する機会はかなめには無かったのだろう。


「おい!駄菓子屋があるぞ。寄って行くか?」 


 かなめの言葉に誠は見慣れた古い店構えを見ていた。昔の懐かしい記憶が再生された。小学生時代から良く通っていた駄菓子屋だった。子供相手ということで今ぐらいの時間に登校する子供達を目当てに店を開け、彼等がいなくなると店を閉めるという変わったおばあさんがやっている店だった。


「駄菓子屋なんて。もう子供じゃないんだから……それにもうすぐ着くんでしょ?」 


 アメリアの言葉に頬を膨らましてかなめはアメリアをにらみつけた。車はそのまま駄菓子屋を通り過ぎると狭い路地に向かって走っていった。


「でも……ここの一方通行はややこしいな。狭い土地に建物が集中しているから仕方ないと言えばそれまでだが、都市計画を一からやり直した方が良いんじゃないか?」 


 何事にも合理的に取り組むカウラはそういいながら今度は車を左折させた。歩けば二三分の距離だが、路地は狭く車がすれ違えないので一方通行になっていた。


 まだ店を開けていない八百屋の角を曲がり、金型工場の横を入ってようやく誠の実家の道場の門が目に入ってきた。



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