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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第二十二章 誠の実家

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第90話 下町への出発

 突然の衝撃に誠は目を覚ました。揺れる視界、そしてすぐ罵声が聞こえた。


「おい!起きろって!オメエは本当に一度寝ると中々起きねえんだな!血圧低いのか?」 


 怒鳴りつけてくるのはかなめだった。毎日アメリアかかなめが誠を頼んでもいないのに起こしにくることがカウラの気に障って、先週鍵を取り替えさせられたというのに、もうかなめは合鍵を作って誠の部屋に侵入していた。


「あの……こんな時間に起きるんですか?」


 誠は眠気に耐えかねてそうつぶやいていた。 


「なんだよ。朝だって言ってるだろ?日付が変われば立派な朝だ。暗かろうが明るかろうが関係ねえ」 


 誠は魔法少女の描かれた抱き枕を手にしているかなめからその枕を取り返そうと手を伸ばした。だが、かなめはそれをまじまじと見つめた後、誠にそれを投げつけた。


「これからお前の実家行くから。準備しておけ」 


 そう突然言われて誠はあたりがまだ薄暗いことに気づいた。


「え?今から準備するんですか?まだ日も登って無いじゃ無いですか!」 


 鈍くしか回転しない頭。時計を見てみれば四時過ぎである。鳥のさえずりもまだわずかにしか聞こえない。どこの高血圧人間かと恨めしそうに誠はかなめを見上げた。


「今日は世の人々は平日なんだ。長距離トラックの運転手なんかもうこの時間から仕事してんぞ。早く行かねえと渋滞につかまるだろ?」 


「でも……もう少しくらい寝かせてくれたっていいじゃないですか。昨日も深夜アニメを見たいんで眠り足りないんで」 


 とりあえず寝たいという一心が誠に言い訳をさせた。


「実家の家業も忘れたのか?今頃は朝稽古の最中じゃねえか。オメエの母ちゃんも今頃は素振りの最中だ。それを忘れたのか?」 


 かなめに言われてようやく誠は気がついた。実家を出て二年弱。それまでは今の時間帯は朝稽古も始まっている時間である。アメリアの『演芸会』が参加する夏の都内での素人お笑いフェスで道場に泊まった時に、母が健康のためとかなめ達も一緒に稽古につき合わせたのを思い出し納得した。


「じゃあ、着替えますから出て行ってください」 


「わかったよ……って……」 


 かなめが後ろに気配を感じて振り向いた。そこにはすでに大きな旅行かばんまで持っているアメリアの姿があった。


「アメリア!テメエは馬鹿か?そんなに荷物持ってどうする気だ!カウラの車だぞ。あの車の狭いトランクに乗らねえよ、そんなもの」


 かなめは大荷物を引っ提げているアメリアに向って見下すようにそう言った。 


「大丈夫よ。どうせ誠ちゃんは身一つでしょ?それにかなめちゃんはあまり荷物は持たないじゃないの。これくらい私が持って行ったって……」 


 そこまでアメリアが言った時にずるずると旅行かばんが部屋の外に向かって動き出す。突然荷物が動き出して驚いたようにアメリアが振り返った。


「これは後でサラにでも送ってもらえ。長期休暇になるんだ。特に貴様の場合はその性格はよく理解しているつもりだから多少荷物が多くなるのは大目に見てやる。しかし、私の車にはそんなに荷物は乗り切らない。諦めろ」 


 ダウンジャケットを着込んだカウラがアメリアのかばんを取り上げたところだった。アメリアはものすごくがっかりした表情を浮かべた。


「着替えるんだろ?こいつ等は私に任せろ」 


 そう言ってカウラはそのままアメリアの首根っこをつかんで立たせた。かなめは仕方がないというような笑みを浮かべた後、カウラに引かれるようにして部屋の外へと出て行った。


 大きなため息をついてそのまま着替えを済ませてドアを開けるとそこに仁王立ちしているかなめがいた。


「あのー、西園寺さん?」 


「じゃあ行くぞ」 


 淡々とそう言って歩き出す。誠はずっと待っていたのかと呆れながらかなめにつれられて階段を下りていった。



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