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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第二十章 超兵器到着

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第80話 あまりにも特殊な戦機

「大丈夫ですか?アメリアさん」 


 そう言って誠はカウラの『スカイラインGTR』の後部座席に座るアメリアを振り返った。翌日は誠はそれほどでもなかったが、アメリアの二日酔いはかなり深刻だった。嗚咽を繰り返すその顔は真っ青で、明らかに病的な雰囲気を漂わせていた。


「駄目、死ぬ、あーしんど。いつもは誠ちゃんがこうなってると言うのに……私としたことが失敗したわね」 


 そう言って二日酔いのアメリアは寮の食堂から持ってきた濡れタオルを額に乗せて上を向いていた。隣ではその様子を冷ややかに眺めているかなめがいた。


「どうでも良いけど吐くなよ。吐くのは神前の専売特許だ」 


 そんないつもなら誠にかけられる言葉をかなめから受けて、アメリアは熱い視線を助手席の誠に投げた。見つめられた誠は思わず赤くなって前を向いて座り直した。


「自己管理のできない奴が佐官を勤めるとは……どうかと思うぞ。酒は飲んでも飲まれるなと言う言葉を貴様に贈ろう」 


 車を減速させながらカウラがつぶやいた。目の前には司法局実働部隊のゲートが見えた。


 ゲートを守る警備の整備班員達の表情は硬く、誠から見ても明らかに警備体制は厳重になっていた。いつもならマガジンを外した部隊の制式小銃のHK33を下げている歩哨が巡回することになっているが、普段は歩哨など立てずに警備室でカードゲームに夢中になっている技術部員達だった。


 それが重装備の歩哨はもちろん、いつの間にか警備室の前に土嚢を積み上げて軽機関銃陣地までが設営されていた。銃のマガジンは刺したまま。即応体制での警備が行われていた。


 その中には普段は当番の守衛などはパーラが監視しているのだが、その代わりにそこにはサラの姿があった。


「なんだ?その重装備。いくら何でもやりすぎだろ戦争でもはじめるのか?」 


 かなめはあまりの厳重な警戒に冷やかすようにサラに向ってそう言った。


「違うわよ。これからランちゃんを首領にして篭城するのよ。猫耳の世界のために」 


「なんだそれ?」 


 くだらないやり取りをしているかなめとアメリアを無視してカウラはそのまま近寄ってきたヘルメットをかぶっている警備隊員に声をかけた。


「例の件か?あんなブツをこんな片田舎に運ぶからだ。面倒ごとはこれ以上御免だぜ」 


 かなめの何気ない言葉でアメリアの看護に集中していた誠は思い出した。嵯峨の専用機『武悪』。ランの専用機『方天画戟』。この本当の意味でのシュツルム・パンツァーの名前に足る二機の搬入作業が昨晩行われていたことを。


「まあ、そんなところ。それにしても本気で戦争している歩兵の兵隊さん達は大変よね。こんなフル装備での警備なんて。重いし……冬でもこれじゃあ暑くって……」 


 サラはそう言って苦笑いを浮かべた。ゲートが開き部隊の敷地に入るが、明らかにいつもと違う緊張感が隊を覆っているのを感じた。


「カウラよ、お望みの緊張感のある部隊の体制だ。優等生には最高なんじゃないのか?」 


 かなめのあざけるような笑顔を運転するカウラに向けた。アメリアはそれどころではないという表情で濡れタオルを折りたたんでいた。


「神前、早く降りろ。ここは今臨戦態勢なんだ。少しは気合いを入れろ」


 そうかなめに急かされて誠は助手席から降りた。


「どうだ、アメリア!見ていくだけ見ていくか?武悪とか」 


 かなめは先頭に立ってにこやかな表情でハンガーに向かう。明らかに体調の悪そうなアメリアは仕方がないというようにそれに続いた。


 三つのコンテナがハンガー前のグラウンドに並べられていた。ハンガーからは冬の豊川の気温をはるかに下回る冷気が流れ出して白い煙のように見えていた。先に歩いていたかなめはハンガーの中を覗き込んで少しばかり困惑したような表情を浮かべていた。


「おい、カウラ……」 


 同じく立ち止まったアメリアを制止するとかなめはカウラに目をやった。誠とカウラはそのまま二人のところまで歩いていった。



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