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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第十九章 漏洩していた秘密と世間話

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第75話 仕組まれた少年

「おい、あたしにも送れ!」 


 上座で一人仲間はずれにされていたランが叫んだ。かなめはしばらく呆れたように頭を掻くと自分の端末を起動させて、すぐに画像データを検索しその画像を三人の腕の端末に転送した。


 そこには車いすの少年が映っていた。明らかに先ほどの少年と比べるとひ弱でか細い印象があるが、同一人物と思いたくなるぐらいに似通っていた。


「これは?誰だ?さっきの少年は自分の足で歩いていたぞ。この少年は……かなり衰弱しているな。別人にしては似すぎているし……」 


 カウラの一言にかなめは呆れたようにため息をついた。そして彼女はそのまま自分の座っていた席の前に置かれていたグラスを手にとって口に酒を含んだ。


「叔父貴がうちに来た時の写真だ……なんでも以前いた家ではほとんど運動もさせてもらえない状況で相当弱っていて足腰立たない有様だったそうだ……遼南南北朝動乱の時の話でもう三十年も前でアタシが生まれる前だから詳しくは知らねえけど」 


 かなめの言葉にカウラと誠はしばらく思考が停止した状態になっていた。


 写真にひきつけられる誠達。ようやくカウラが口を開いた。


「エルマ。これは……」 


 カウラも意味がわかってまじめな顔でエルマに向かった。


「部下が撮影したものだ。私もこの少年と嵯峨特務大佐とのつながりを見つけたのは偶然でな。たまたまテレビでやっていたこの前の大戦の映像を見てピンと来ただけだったが……」 


 そんなエルマがかなめを見つめた。


「あれ?ジョージ君がどうして車いすに乗ってるの?」 


 パーラをいじるのに飽きたアメリアがサラを引きずって誠の端末まで来るとそう叫んだ。その言葉で誠もこの少年のことを思い出した。寮の近くで何度か見かけた少年がジョージだった。その口の減らない憎たらしい態度に頭にきたことは誠も何度か有った。


「ジョージ君?知り合いか何かなのか?」 


 ランの言葉にアメリアはにんまりと笑って頷いた。


「ええ、うちの寮の近くの子らしくて時々遊びに来るわよ」 


 そこまでアメリアが言ったところでかなめが飛び起きてアメリアの襟首を掴み上げた。そのままぎりぎりとアメリアの首をかなめは締め上げていった。アメリアはさすがに突然の攻撃に正気を取り戻してかなめの腕を掴んで暴れた。


「おい!なんでアタシを呼ばなかった!こいつは!」 


「苦しい!助けて!でもカウラちゃんも誠ちゃんも知ってるわよねえ。時々遊びに来る……って苦しい!」 


 アメリアがもがくのを見てかなめは手を放す。そして彼女の視線は自然と誠の方を向いてきた。


「え?確かに見たことがありますけど……でも……」 


「でもじゃねえんだよ!アメちゃんの外ナンバーの車に乗ってる叔父貴と同じ顔をした餓鬼。これだけで十分しょっ引いたっていい話になるんだぞ。コイツは間違いなく米帝が作った叔父貴のクローンだ。しかも法術師としての能力は折り紙付き。こんなのが『武悪』の周りをウロチョロしてたってことはそれだけ米帝が今回の件に一枚噛みたがっていると言う証じゃねえか」 


 誠を怒鳴りつけるかなめの肩をランが軽く叩いた。


「なんだ!姐御も怒れよ。こいつ等……」 


 ランは冷静な表情焼き鳥の肉を噛みちぎった。 


「でも実際近くの子供だと思ってたから……ねえ」 


 アメリアはそう言うと後ろで彼女を盾にしてランから隠れていたサラとパーラに目を向けた。


「あの……」 


「わかった。つまりオメー等は何も知らないと」 


 そう言って端末の甲武に来たばかりの嵯峨をランはまじまじと見つめた。明らかにその異常な食いつきに気付いたのはかなめだった。


「なんだ?中佐殿は枯れ専だと思っていたのですが叔父貴が好きだとか?あれが小さかったらとか考えている……とか?」 


「何が言いてえんだ?あ?」 


 ランに凄まれてかなめはすぐに引っ込めた。隊の笑い話にランが隊長の嵯峨に気があると言う冗談が囁かれているが、それが事実だったのかと思うと誠は少し引いた。


「地球圏の外交事務所の車で動いているってことは……アタシ等は監視されていたってことか。目的はこいつだろうがな」 


 ランは視線を誠に向けた。誠はランの刺すような視線に向けてただ愛想笑いを浮かべた。


「確かに君に関するデータはどの国も欲しがっているのは事実だ。『近藤事件』での衆人環視下での法術展開。あれに食いつかない軍や警察関係者はいなかっただろう……そしてとどめがこの前の厚生局前での法術暴走事件だ」 


 そう言いながらエルマは感心するように誠を見つめてきた。それが気に入らないアメリアが誠の腹にボディーブローを決めた。


「隊長のクローンの製造が行われたということだとすると……アメリカ陸軍の関係者と言うことか。また厄介な連中が顔を突っ込んできたがっているみたいだな」 


 カウラの言葉にエルマも頷いた。嵯峨は先の大戦でアメリカ軍の戦争犯罪者としてネバダ州の実験施設に送られていたことは部隊の外では口外できない秘密の一つだった。



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