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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第十九章 漏洩していた秘密と世間話

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第73話 壊れていくアメリア

 酒が回っていくにつれて次第に雰囲気は打ち解けた雰囲気になりいつもののそれになりつつあった。


「早く!誠ちゃんも元気そうね。今日は飲み過ぎちゃだめよ。大事なお客さんが来てる日なんだから」 


「え?元気ですよ。それに飲み過ぎると言うか、西園寺さんが僕の酒に変な細工しなければいつだって平気ですよ」 


 誠は驚いて自分の空になった材料の入った自分の皿にレバーの串を置くアメリアがいた。


「もしかして迷惑だった?誠ちゃんレバー好きじゃないの」 


 アメリアは落ち込んだように見上げてきた。それがいつもの罠だとわかっていても誠はただ愛想笑いを浮かべるしかない。


「別にそう言うわけでは……確かにレバーは好きですけど。いつも西園寺さんがくれるの食べてますから。でもアメリアさんもレバー好きじゃないですか?ああ、サービスですね。ありがとうございます」 


 誠はそう答えるしかなかった。それを聞くとアメリアの表情はすぐに緩んだ。そしてそのまま余った串で誠の鶏モモ串の肉を串から外し始めた。


「そう言えばクリスマスの話はどうしたんだ?」 


 誠に媚を売るアメリアの姿に、苛立ちながらかなめは吐き捨てるように口を開いた。彼女の方を向いたアメリアは満面の笑みで笑いかけた。その笑いでアメリアの酒がかなり回ってきているのだとこの場に居る全員が分かっていた。


「なんだよ気持ちわりいなあ。オメエはいつも飲みすぎなんだよ」 


 そう言って引き気味にかなめはジンの入ったグラスを口にした。そんなかなめが面白くてたまらないというようにアメリアは指差して誠に笑いかけた。


「あの、クラウゼさん。人を指差すのは良くないですよ。縁起が悪いって昔から言います」 


 誠はさすがに悪乗りしてきたアメリアに向けて窘めるようにそう言った。


「誠ちゃんまでかなめちゃんの味方?所詮……私の味方は誰もいないのね!みんな私の事をオタクだのデカ女だの糸目だの言って馬鹿にして……グレてやるんだから」 


 アメリアは大げさに肩を落としうつむいた。いつものアメリアのやり方を知っているサラとパーラが複雑な表情で彼女を見つめていた。


「クリスマスねえ。クラウゼも少しは素直にパーティーがしたいって言えばいいのによー」 


 ランは一人、エイヒレをあぶりながら日本酒を飲んでいた。


「だって普通じゃつまらないじゃないですか!」 


 そう言ってアメリアは立ち上がりランの前に立った。ここで場にいる人々はアメリアがすでに出来上がっていることに気づいていた。


「つ……つまらないかなあ」 


 さすがに目の据わったアメリアをどうこうできるわけも無くランは口ごもった。誠が周りを見ると、かなめは無視を決め込み、カウラはエルマとの話を切り出そうとタイミングを計りつつ烏賊ゲソをくわえていた。


 パーラとサラ。本来なら酒の席で暴走することが多いアメリアの保護者のような役割の二人だが、完全に彼女達の目を盗んで飲み続けて出来上がったアメリアにただじっと見守る以外のことは出来ないようだった。


「やっぱりクリスマスと言うと!」 


 そう言うとアメリアはランの前にマイクを気取って割り箸を突き出す。


「そうだなー、クリスマスツリーだな」 


「ハイ!失格。今回はカウラちゃんのお誕生日会なのでツリーはありません!」 


 アメリアはハイテンションでまくし立てた。その姿をちらりと見た後、ランは腹を決めたように視線を落とした。


「じゃあ次は……」 


 獲物を探してアメリアは部屋を見渡した。偶然にも豚串に手を伸ばそうとしていたパーラの視線がアメリアとぶつかってしまった。顔全体で絶望してみせるパーラに向かってアメリアは満面の笑みでインタビューに向かった。


「何よ!この酔っ払いが!」 


 パーラの叫びが響いた。そんなパーラの反応を見るとアメリアは割り箸でその頭をむやみに突きまわす。それを苦笑いを浮かべながらエルマは眺めていた。


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