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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス  作者: 橋本 直
第十八章 久しぶりの語らい

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第70話 こういう席でも絡む女

「それにしても本当に綺麗な髪よね。カウラちゃんもそうだけど……」 


 そう言ってアメリアがエルマに近づいていった。だが、危険を察知したカウラが彼女の這って来た道をふさいでしまった。


「ええ、本来は毛髪は不要として設計されていますから。起動前の培養成長期末期に毛髪の育成工程の関係で髪質が向上しているらしいんです」 


 エルマの説明を聞きながらさすがに彼女の髪をいじるわけにも行かず、アメリアは手前のカウラの髪を撫で始めた。


「便利よね。私の頃にはそんな配慮なんて無いもの。ああ、そう言えばサラも起動調整のときに髪の毛がどうとか言ってなかった?」 


 アメリアににらまれて階段の手前でサラは苦笑いを浮かべた。


「たぶん気のせいよ。私も製造準備はゲルパルト降伏直後だもの。アメリアとは大差ないわよ」 


 パーラの言葉にアメリアは納得したように頷いた。そしてアメリアはそのままエルマの後ろに座った。


「そう言えば紹介まだよね。私は……」 


 自己紹介に割り込もうとする自己顕示欲の塊のアメリアをカウラが右手で制した。


「自己紹介はちゃんと順番にしろ。今回はエルマは私の部下に会いに来たんだ。それにこの席は私のおごりの会だ。次は……神前。貴様だ」 


 カウラがアメリアをさえぎって誠をにらんできた。仕方なく誠は頭を掻きながら立ち上がった。彼を見るとエルマはうれしそうな表情で緊張している誠に目を向けてきた。


「おい、アタシはどうするんだ?」 


 頭を掻きながらかなめがカウラを見つめた。


「貴様の自己紹介はさっき済んだろ?あれで十分貴様の人となりは分かったはずだ」 


 カウラの言葉にかなめは拳を握り締めた。誠はカウラに見つめられるままに立ち上がった。


「ああ、済みません」 


「謝る必要は無いんだがな。そこの小さいのは別にして」 


 思わず発した言葉にかなめは切り替えしてみせる。さすがの誠も少しむっとしながら彼女を見つめた。


「神前誠曹長です。一応カウラさんの小隊の三番機を担当しています」 


「ああ知っている。君の『光の(つるぎ)』の話は東都警察でも語り草だ。立派に成長してくれ」


「ありがとうございます!」 


 誠は自分を初対面で認めてくれた珍しい存在であるエルマに敬意を払いながら座った。仇を討つというように彼に親指を立てて見せながら立ち上がったのはアメリアだった。


「私はアメリア・クラウゼ。一応、運用艦『ふさ』の副長をやっているわ、それで趣味は……」 


 延々と趣味の話を始めようとしているアメリアを見て、その性格を察しているのかエルマは笑顔で割り込むようにして口をはさんだ。


「ええ、存じております。なんでも『特殊な部隊』で一番特殊な『艦長』なんだとか……いえいえ、これはカウラの言っていたことでして……」 


 アメリアは自分が落ちに利用されて前のめりになるのを見てサラとパーラが彼女の前に立ちはだかってその場を押さえた。


「じゃあアタシが……」 


「お待たせしました!」 


 ランが立ち上がろうとしたタイミングで小夏が焼鳥盛り合わせを運んできた。


「本当にいつも有難うね。すっかりごひいきにしていただいちゃって。しかも、新しいお客さんを紹介していただくなんて嬉しいわね。東都の機動隊は(なり)(はた)の空港に要人が着く時に警備に近くに寄るはずだから良い常連さんになるんじゃないかって新さんが言ってたわよ。その節はよろしくね」 


 それに続いてきたのは紺色の留袖姿の小夏の母春子だった。手際よく小夏を補佐して料理を並べていった。


「へえ、焼き鳥ですか」 


「エルマさんでしたよね。東都ではこんな店いくらでもあるでしょ」 


 春子はそう言いながらエルマの前に焼鳥盛り合わせを置いた。エルマは首を左右に振って焼鳥盛り合わせをいとおしそうに眺めた。


「そんなこと無いですよ。都内はチェーン店ばかりで……そうでないところは混んでいていつ行っても行列ですから。それか一見さんお断りの名店とかしかないですね……こういう気の置けない店はなかなか無いですよ」 


 そう言うとエルマは春子が差し出す皿を受取った。その表情が和らぐのが誠には安堵できるひと時だった。



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